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「1分で話せ 実践講座」
伝える極意とは何でしょうか?要点を簡潔に伝える話し方のことでしょうか。あるいは興味を抱かせる、エンタメ性の高い話し方のことでしょうか。
ビジネスにおいて、人に何かを伝える機会は頻繁に起こります。しかし、ビジネス上のコミュニケーションを体系的に学んだことがある人は、そう多くはありません。そのため、前もって資料を準備していても、伝えたいことがうまく伝わらず、商談やプレゼンで成果が挙げられなかったという経験がある人も少なくないのではないでしょうか。今回は、プレゼンテーションなどの相手に何かを伝える場で役に立つ「伝える極意」についてご紹介します。
話のポイントを伝えるための土台をつくる
61万部を超えるベストセラー書籍「1分で話せ」(SBクリエイティブ)の著者である伊藤羊一氏に、「伝える極意」について話を伺いました。伊藤氏は「人がお互いを理解しあうために長く話すことは重要」と話す一方で「話が長いと、何について話しているのかわからなくなる」と指摘します。相手に話のポイントの部分を伝わりやすくするためには、長く話さずに1分程度で簡潔にまとめることが重要である、簡潔にまとめるには、まず考えることが必要というのが、伊藤氏の考え方です。
また、伊藤氏は「仕事の専門知識」「顧客の知識」「一般常識」といった、働く上で必要な知識に加え、「聞く」「考える」「伝える」といった土台となる部分を意識的に鍛えることが大切であると主張しています。なんとなくやっている人は多く、意識的に鍛えることをしている人はあまりいないのではないでしょうか。
こうした土台をまずつくることで、習得した技術や知識がより生きてくるのです。話をコンパクトに要約し、効果的なプレゼンテーションを行うための「考える」「伝える」能力を鍛えるために意識すべきことは何なのでしょうか。
そもそも何のために「伝える」のか
打ち合わせやチーム内会議、会議での発言など、ビジネスシーンにおける「伝える」というコミュニケーションの最終的な目的は、情報を伝達したうえで、聞き手に行動を促すことです。ところが、多くの人はその目的を意識しないで何となく話しています。しかし、伝えることがゴールではありません。
例えば、プレゼンテーションを行う際には、聞き手が情報を理解し、それに基づいて何らかの具体的なアクションを取ることをめざします。そして、聞き手をゴールに誘導するためには、「上手に話す」ことよりも、「聞き手を動かす」という目的意識を持つことが肝要です。では、聞き手を動かすためにはどんなことを考えて話すべきなのでしょうか。
聞いてもらった=理解してもらったではない
コミュニケーションの成果は、話し手ではなく聞き手が決めるため「言った=聞き手に行動してもらえる」ではありません。最終的には「腑に落ちて行動しようと思ってもらえた」ことを目指して伝える必要があります。そのゴールまでには、「聞いてもらえた」「聴いてもらえた」「理解してもらえた」「賛成してもらえた」という4つのプロセスが必要となります。
聴衆を動かし、アクションを起こさせることに対するハードルは高く、「難しそうだ」という印象を抱きがちです。実際に伊藤氏は「耳を傾けて聞いてもらったとしても、理解してもらえたとは限らない」と話します。では、理解してもらったうえで行動につなげるためにはどうしたらよいのでしょうか。
まず重要なのは「聞き手のことを考える」ことです。同じプレゼンテーションの内容でも、聴衆の属性によって表現を変えたり、聞き手が抱いているであろう課題を事前に分析して寄り添ったりと、相手の状況を慮ることが大切です。また、相手をどう動かすのかというゴールの設定をコミュニケーションごとに考えることです。例えば最初の商談でクロージングまで持っていくのか、今回は自分のことを印象づけと次回のアポ取りができればいいのか。話が白熱して、ゴールが頭から抜けてしまうことも多々あるため、ゴールを常に意識して話すことも必要となります。
AIDMAを意識した伝え方
伊藤氏は、消費者がモノを見てから実際に購入・体験するまでの5つの行動プロセスを表すマーケティング用語「AIDMA」を意識した伝え方が、聞き手を動かすために効果的であると話します。Attention(注目)、Interest(興味)、Desire(欲望)、Memory(記憶)、Action(行動)の頭文字からなるAIDMAは、広告やマーケティングでは以前から多用されているフレームワークですが、これをコミュニケーションにも転用できるといいます。
「聞き手を迷子にさせない」工夫
ここで重要なのは「聞き手を迷子にさせないこと」。AIDMAの導入であるA=Attention(注目)では、ただ単純に注目を集めるのではなく、注目し続けてもらうことが大切です。伊藤氏は「スッキリ、カンタンに」を伝える極意の一つに挙げました。「スッキリ」とは字数を少なくしたり、文章を短くしたりと、スライドの内容などを目で見てすぐに頭で理解できるように整えることを指します。また、「カンタン」は「中学生でもわかるようなカンタンさ」が鉄則だと言います。馴染みのない単語が続くと、大人であっても話についていけずに話を聞いている途中で“迷子”になってしまう人が多いことが理由です。
聞き手を迷子にせず、注目し続けてもらうことが、その後のステップである興味・欲望・記憶につながる大事なベースとなり、最終目標である“行動”に向けて聞き手を動かすのです。このAIDMAの考え方をプレゼンテーションなどのビジネスコミュニケーションにも応用することで、より伝わりやすくなります。
伝えたいことに情熱を持っているか?
コミュニケーションのゴールであるAction(行動)につなげるためには、聞き手に情報を伝え、関心を持ってもらい、「いいね」と思ってもらい、覚えてもらわなくてはいけません。そのプロセスは、AIDMAのフレームワークと一致します。
一方で、伊藤氏は「『思いを持って伝える』ことを意識しないと、人は動かない」と断言します。聞き手の心を動かし、行動を促すために徹底すべき要素は「情熱と自信」です。情熱とは、ただ単純に熱く語ることではなく、心からの思いを伝えることを指します。伊藤氏は「人は本当に好きなことについて話すときに情熱的になる」とし、プレゼンテーションを通じて伝えようとしている内容について、話し手側が「一番好きかどうか」という、心からの愛情を持っているかどうかが重要だと話しました。情熱がなければどれだけ正しい内容でも相手を行動させるに至らないと伊藤氏は強調します。
また、プレゼンテーション前に徹底的に準備や練習を重ねることで得られる自信は、本番でのパフォーマンスを向上させてくれます。経験値がない場合は事前の準備が必要で、プレゼンでどう話すかなど、事前に練習をしなければ自信を持つことはできません。「孫正義氏へのプレゼン前に300回練習した」という伊藤氏のリアルなエピソードからも、反復練習やそれによって培われた自信の大切さを痛感させられます。
「考えて」「伝える」ことが人を動かす極意
プレゼンテーションなどで成果を出すために必要な「伝える極意」。相手を動かすという目的を達成するためにも、日ごろのコミュニケーションから目的意識を持つことが大切です。上司や取引先との些細なやりとりでも「予算を獲得するためにはどう伝えたらいいのか」「受注につなげるためにはどう話すべきか」と考えるクセをつけることで、プレゼンテーションやビジネスシーンでより効果的に“伝える力”を発揮することができるようになるでしょう。AIDMA各項目の詳しい解説や活用法、実例などは、下記の講座で詳しく説明されています。プレゼン前で不安を抱えている人や、人前で話すことに苦手意識を抱いている方は、ぜひ参考にしてみてください。