学力向上を目指し、教育現場の改革に尽力—西村和雄氏(「私の広告観」出張所)

月刊『宣伝会議』では、社会に大きな影響を与える有識者が、いまの広告やメディア、コミュニケーションについて、どのように捉えているのかをインタビューする企画「私の広告観」を連載中。ここでは「私の広告観 出張所」として、インタビューの一部や誌面では掲載しきれなかった話をお届けします。今回登場するのは、「複雑系理論」を基にした経済理論の研究で大きな功績をあげた西村和雄氏です。

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西村和雄氏

1946年札幌生まれ。1970年東京大学卒業。1976年米国ロチェスター大学Ph.D.。カナダ、アメリカの大学で教鞭をとった後、京都大学教授を経て、現在、神戸大学計算社会科学研究センター特命教授、神戸大学高等学術研究院特別栄誉教授。2012年紫綬褒章、2019年瑞宝重光章、学士院会員。教育問題についても多数の論文を発表。著書に『マクロ経済動学(岩波書店)』『学力と幸福の経済学(日本経済新聞出版)』。

Q.教育の中で大切な要素は何だとお考えですか。

教育の中で大切な要素は「規範意識」です。「安全(規範)と学力」こそ、保護者が学校に望むことだからです。人に親切にしたり、嘘をつかないなど規範的な行動を取る人は成功者が多い傾向にあります。

2014年当時に全国平均をはるかに上回っていた大阪市の児童生徒の1000人当たりの暴力数も、「してはいけないこと」を明示することによって、2017年には激減し、それ以来、全国平均を下回るレベルで推移しています。

規範意識について調査して感じたのは、“教える”よりも“育んでいく”ことが大切なのではないかということです。いわば子どものしつけとして、日常生活のシーンで、親が子どもに伝える。特に小学校低学年までが重要です。子育てで悩む親御さんも多いと思いますが、関心をもって見守ることで子どもをサポートするのが成功する子育ての秘訣だと思います。

写真 人物西村和雄氏

アメリカの大学で教鞭をとり帰国した西村氏は、ゆとり教育の導入ですっかり変わってしまった日本の学校教育に危機感を抱いた。それが教育改革の最前線に立つ西村氏のモチベーションとなっている。

Q.広告に対する印象を教えてください。

広告とは、企業やその商品・サービスを知ってもらうだけでなく、見ている人に、日本の将来をも変える大きなインパクトを与えるものだと思います。

私の記憶に残っているのは、東日本大震災の直後に放映されたACジャパンの広告です。いくつかある中で、詩人の金子みすゞさんの詩を朗読するCMが今も忘れられません。「こだまでしょうか」という初めて聞いたその詩に、とても心を打たれました。

企業が広告を使うのは、販売を強化したい商品があるからだが、それでもプロモーショナルな姿勢に傾きすぎず、拡散性の高い媒体だからこそ、誰もが共感できるメッセージを込めることで、日常生活に忙殺される人々に気付きを与えてくれるような役割も期待したいです。

…西村氏のインタビュー記事全文は、月刊『宣伝会議』2024年9月号に掲載。

月刊『宣伝会議』デジタルマガジン では、2013年から本連載の過去10年分のバックナンバー記事を閲覧可能です。

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