Q3:転職や社内異動などに際して、強く意識したこととは?
これまで何度か経験した転職や社内異動に際して、「自身の広報経験が企業にとって役に立てるか」と「自分にとってプラスの経験が積めるか」という点を常に意識してきました。
マネジメント経験を積むことや、新たな業界での挑戦を通じて広報スキルをさらに磨くことで自身のキャリア形成をより充実させました。
BtoCからBtoBへの転職では、異業種での広報経験を積むことで、広報としてのキャリアの幅を広げることができました。事業会社の広報では、企業のパーパスやミッション・ビジョン・バリューに共感し、そのカルチャーに自分がフィットするかどうかも重要な要素だと思います。
Q4:国内において広報としてのキャリア形成で悩みとなることは何?
悩みのひとつは、広報として専門職とマネージャー職のどちらを目指すか という点です。
役員以上のキャリアパスを目指すには、広報だとCCO(Chief Communications Officer)やCBO(Chief Branding Officer)などのポジションを視野に入れる必要があります。スタートアップと大手企業の両方で広報を経験することによりキャリアの幅が広がり、様々な視点から広報活動を展開する能力が身につきます。
日本ではスタートアップ企業数が増える中で、事業会社の広報はもちろん、フリーランスのPRパーソンも多くなり、広報職の転職活動は以前よりも競争が激化しています。数字に強い広報や特定の分野に精通した広報として他者との差別化が求められます。1社に長く勤める場合でも、転職によりキャリアアップを図る場合でも、一貫性のあるキャリアのストーリーを話せることが重要です。
自分の経験から言うと、大手企業もしくはスタートアップのいずれで広報経験を積むかによって得られる経験が変わります。
大手の場合、ひとり広報ではなく広報部門の人員が比較的多く分業制になっています。メディアリレーションで言うと、インバウンドで入ってくる取材対応がほとんどで、ステークホルダーに与える影響などを考え取材を断るケースも出てきます。メディアとは関係構築がすでに出来ており、企業ごとに担当記者がいるためスムーズにリレーションを構築できます。社内でも関係者が多いため、社内調整などで大きく時間が取られる場合はあります。自身の経験だと、プレスリリースを配信するために事前申請書を提出し、上層部の承認を得るまでに時間がかかったり、某大手企業と協業した際は協業先の広報部確認に半年かかったこともありました。
一方、スタートアップではスピード重視のため、関連部門との調整および交渉を繰り返しながら情報を迅速に発信する責任がありますが、広報チームの裁量で進められる業務範囲は多くなります。社内確認が比較的迅速に進むため、経営層の近くでマルチタスクをスピード感を持って進めることができます。ただし、企業として認知が取れていない場合、大手と違い担当記者もついておらず、メディアとのリレーション構築に苦労することも多いです。
どの規模の企業でどういう広報経験を積みたいかを考え、広報として自身のキャリアを形成していくと良いと思います。
Q5:広報職の経験を活かして、今後チャレンジしたいことは?
日本経済の発展に寄与できるような事業における広報活動です。米国と同じくらい、日本での広報職の地位向上を目指しています。
ここ数年の気付きだと、あるイベントに個人情報を登録する際、職種選択欄を見ると「広報」という選択肢が増えてきたように感じます。営業や人事、経営企画などの職種はあっても、広報という職種は以前は選択肢にすらありませんでした。このような小さな変化から、広報の重要度が高まっていることがうかがえます。
企業にとって広報の役割が重要であると考える経営者が増え、その重要性が当たり前の世の中になることを願っています。また、CSR(企業の社会的責任)活動の推進にも注力し、企業として持続可能な社会の実現に貢献する取り組みを広く発信していきたいと考えています。
さらに、若手広報担当者の育成にも力を入れ、自身の知見を共有して次世代の広報プロフェッショナルが成長できる環境を整え、広報PRパーソンの社会的地位向上に貢献できればと思います。
【次回のコラムの担当は?】
クックビズ社長室マネージャーで広報チームを率いる中西由美子さんです。彼女は関西を拠点に広報経験を積み、IPO経験も持ち合わせ、現在ではグループ会社の取締役も務めています。広報コミュニティの中では珍しいキャリアの持ち主です。