「コロナ禍は外出を控えることが増え、生活者が自ずとオンライン上に留まった期間だったと言えます。それによって、これまでよりもネット上のトラフィック量が増えましたよね。つまりデジタル広告に関してはインプレッションが増えるので、それに比例する形でデジタル広告の顧客獲得単価(CPA)がかなり安くなっていたんです。デジタル広告はECサイトへの誘導もスムーズに行うことができますし、オンラインチャネルで顧客と直接的に接点をもって展開するD2Cブランドは相性がよかった。デジタル広告を打てば打つほど顧客を獲得できていた時代だったと言えます。
図1 D2Cブランドを待ち受けた「デジタル広告 CPAの限界」
しかし現在は外出需要が復活。オンライン上に留まる生活者は減少しました。そこで直面する課題が、コロナ禍ではアドバンテージとなっていた『デジタル広告のCPA』。オンラインに広告を打っても、あの頃のように上手く顧客を取り込めなくなったのが、D2Cブランドの“今”なのではないでしょうか」(武田氏)。
さらに、D2Cブランドの現状を考えるにあたって武田氏が注目したのが「自社ECの市場規模」だ。
「自社ECを運営するのは、BtoBtoCのビジネスモデルで小売店を介して商品を販売することが主流のメーカー企業がほとんどだと言えます。一方、直接顧客に商品を届けるD2Cブランドは、小売店での商品流通ではなく、自社ECでの出品するほうが優先順位は高いはずですよね。この仮説を念頭に置いたうえで自社ECの市場規模に注目すると、D2Cブランドの勢いを読み取ることができると考えられます。