「会社に戻りたい」と思えるかかわり方とは 「アルムナイ」へのコミュニケーション施策

人的資本経営の一環として、注目される「アルムナイ採用」。退職した従業員を再雇用する手法だが、そのためには退職者との継続的な接点創出が欠かせません。日揮ホールディングス(JGC)に、退職者との関係構築のあり方を聞きました。
 
※本記事は、広報会議2024年10月号 特集「採用広報の最前線」(2024年9月1日発売予定)の転載記事です。

DATA

創立年:1928年(昭和3年)10月25日
従業員数:8865名(2024年3月31日現在)
アルムナイネットワークの社内運用部門:人財部

 

施策のポイント

アルムナイネットワークは「あくまで場づくり」。復職を強要するような言動は一切行わず、“日揮を母校に” をテーマに「退職者に内発的に戻りたいと思ってもらえるような場をつくる」ことを目指す。

日揮ホールディングスは、離職・退職した人材(アルムナイ)の採用に注力している。2019年にアルムナイのネットワーク・コミュニティ「JGC-Connected」をつくり、2022年度に8名、2023年度には7名、2024年度にも足元で数名のアルムナイの採用につなげている。

写真 年に1度設立記念日に開催している、退職者(アルムナイ)が集うイベント「JGC Echo-Day交流会」

年に1度設立記念日に開催している、退職者(アルムナイ)が集うイベント「JGC Echo-Day交流会」。「日揮を母校に」をテーマに、アルムナイ同士のつながりづくりや“JGCの今”の周知を目的に実施。2023年度の実施後に2名の「アルムナイ採用」につながった。

ネットワーク設立のきっかけについて「『離職者とつながりたい』という声が多かった」ためだと語るのは、同社人財部の池内達宣氏。「社内変革を掲げた有志のコミュニティで、そうした声が以前から出ていました。設立の決め手となったのは、有志だけでなく社内から複数の声が上がったことですね」と明かす。

「成果が出るまで3年」と明言

ネットワークの運営方針は「あくまで場づくりに徹する」こと。 “日揮を母校に” をテーマに「離職者を強引に戻そうとするのではなく、あくまでも内発的に戻りたいと思ってもらえる場をつくる」という思いで実践している。

そもそも同社は人事戦略として「人財グランドデザイン2030」を掲げて人的資本経営を推進。従業員の能力を最大限に発揮させるための多様な取り組みを図っている。「アルムナイネットワーク設立」もその一環だが、こうした人的資本経営には時間がかかるのが常だとし、「ゆるく長く続けるのが大事」との考えがある。

ネットワーク設立の際にも池内氏は経営陣に「成果を出すまでに3年かかります」と説明するとともに、短期的な成果を求めないことを伝えた。

「人は簡単に変わらないため、アムナイの施策でも『すぐに再入社してほしい』と理想を押し付けるのは逆効果だと感じます。とはいえ、ゆるく長くやるには役員の協力が必要不可欠ですね」と振り返った。

写真 人物 個人 池内達宣氏

「JGC Echo-Day交流会」で挨拶をする、専務執行役員CHROの花田琢也氏。経営層も巻き込みつつ、「ゆるく長く続ける」のがアルムナイ採用の成果を高める秘訣だという。

イベントの実施で参加動機を

ネットワーク設立後の最初の活動として2019年、同社の創立記念日にあたる10月25日に「JGC Echo-Day(エコーデー)交流会」を実施。退職者同士が交流できる場を創出した。

ネーミングは、離職者が復職し人財が循環するというエコシステムに由来。また「やまびこ(Echo)の反響が遅れて返ってくるように、離職者もいつか戻ってくるのではないかという願いを込めている」(池内氏)というダブルミーニングでもある。

活動の最初に、大掛かりな準備が必要なイベント開催に踏み切った理由は「ネットワークへの参加動機を高めるため」だという。「イベントの開催がアルムナイ間で噂になったり、協力者が出てきたりすることを期待していました。また創立記念日に開催を決めたのも、参加の動機につながりやすいから。『ネットワークをつくったから入って』と呼びかけるよりも、『イベントがあるから参加して』と言う方が人が集まりやすいのです」。

交流会で使うのを控えている「禁句ワード」

「JGC Echo-Day交流会」は、コロナ禍でオンライン開催だった2021年と2022年を除いて、毎年リアルで実施。退職者と一部有志、人事が継続的に運営している。運営側には、イベント当日の禁句ワードがあるという…
 
 
続きは広報会議2024年10月号 特集「採用広報の最前線」からご確認いただけます。

『広報会議』10月号(9月1日発売予定)

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