※本記事は、月刊『広報会議』10月号の連載「オフィスに見るコミュニケーション戦略」を転載した内容です。
企業の業務効率化に向けた“クラウド営業支援ツール” を提供するIT企業マツリカは、2024年4月に占有オフィスを東日本橋に新設した。
企業のビジョンとバリューの発信地として設置された“コミュニケーションスペース” の中心にはコーポレートカラーを用いた“ひな壇” を設置。壁画は公園をメインに描き、“出合いの場所” となるよう思いを込めた。ランチなどの普段使いはもちろん、従業員主催の社内外のイベントでの活用も進んでいる。
創業時より、ハイブリッド出勤体制を推進してきた同社だが、コロナ禍においては完全リモート体制を強いられた。その間も業務が滞ることはなかったが、部署間のコミュニケーション量が減ったり、新しいスタッフとのチーム業務の際、顔と名前が一致しなかったりと、今後の業務運営に不安を感じさせる要因が浮上していた。
そこでビジョンに掲げる“創造性高く遊ぶように働ける環境を創る” ことを目指した。移転前はシェアオフィスを借りていたが、自社を“創造性を育む場所” にするため、占有オフィス開設のプロジェクトが始まった。
プロジェクトを担当したのは、コミュニケーション増進部の黒木香織氏。新オフィスのコンセプトを「つい行きたくなるオフィス」と定め、プロジェクトを進めた。「とにかく従業員が『出社してよかった!』と思えるオフィスを実現したかった」同氏は語る。
新オフィスでは、従業員の動線を限定することで偶発的なコミュニケーションを促したほか、入口付近には従業員が自由にくつろげるバーカウンターを設置した。オフィスに入ると目の前に広がる“コミュニケーションスペース” は、企業のビジョン発信拠点と位置づけている。
オフィスの出入口は2つあるが一方を完全閉鎖。入口からの動線を絞ることで従業員同士の接触を増やし、偶発的なコミュニケーション増加を促す。
入口横のバーカウンターは常時、フリードリンク・フリーフード制。ここでも従業員のコミュニケーションが創出されているという。
また移転時には、従業員を集め「オフィスに出社する意義」を伝える機会を設けた。出社による業務効率化や、長期的な提供価値の向上について「モデルケース」を活用して伝え、個々が実感できる形に。強制力を働かせることなく、出社率の増加を図っている。
移転2カ月後の「社内アンケート」では社内のコミュニケーション満足度が移転前の22.4%から56.4%に上昇“自由に使える場所が増え、日常会話が増加した”、“ちょっとした相談もしやすくなった” という回答も見られた。
業務内容に応じて自由に場所を変えられる執務エリア。ウェブ会議・商談に利用できるフォンブースも揃い、チームで言葉を交わしながら業務を行えるスペースもある。個々の従業員を尊重する社風が反映されたスペースだ。
取締役の飯作供史氏は「占有オフィスになり、提供サービスの質とスピードは上がっています。オフィスはあくまでツールなので、“業務の最適化”に加え、従業員が“自分のスキルアップ”のために積極的に利用し成功体験を重ねることを期待しています。オフィスを通して従業員が一丸となって、業務に取り組める体制にしていきたいです」と語った。