マーケターへの扉が開いた学生時代の3つの転機
それでは、学生時代までさかのぼって、私のキャリアの軌跡を紹介していきたいと思います。
振り返ってみると、学生時代の3つの出来事が私のキャリアに影響を与えているからです。
1.浪人中のカナダ横断旅行で海外に憧れ
私は名古屋にある浄土宗の男子校に6年間在籍し、東京で一人暮らしをしたいという理由だけで都心に近い大学を目指しました。高校では受験科目が少ない私立文系を目指すクラスに在籍し、大した勉強もしていないのに、なぜか受験が成功する前提でいました。入試が終わるとすぐにスキー場で住み込みのアルバイトを始め、受験結果を待っていましたが、人生そううまくはいきません。すべての大学の試験に“滑った”ことがわかり、浪人生活がスタートしました。
それでも受験勉強にのめり込むことができず、夏休みに英語の勉強と称して、カナダを横断する2週間ほどのツアーに参加しました。英語習得の成果はありませんでしたが、初めての海外旅行で雄大な自然を前に、漠然と海外生活への憧れを抱きました。その後の受験の結果は想像どおりですが、愛知から上京し下北沢での生活を始めることができたことだけは成功でした。
2.空港で出会ったMBAの書籍
次の転機は大学1年のときに数週間、米サンフランシスコ郊外にある州立大学の語学研修プログラムに参加したときに訪れます。出発時に成田空港の書店で偶然MBAに関する書籍に出会ったのです。アメリカに向かう飛行機の中でその書籍を読んでみると、MBAを学ぶことで「世界基準のビジネスパーソンになるために必要な知識とスキルが得られる」こと、さらには「『将来のリーダーたち』とのネットワーキングができる」と書かれており、「おー、これが自分の目指すキャリアの方向だ!」と確信しました。
その6年後に再びアメリカに飛びました。MBAを学ぶためです。そして、この時の学びが、卒業して25年経った今でも、自分の仕事に大きな影響を与えています。プログラム期間中は英会話のスキルを向上させることができただけでなく、英語圏外からの多くの留学生と共同生活をしたことは、私にとって非常に意味のある経験でした。
3.飛び込みで広告代理店の選考に
大学ではゴルフ部に所属していたほか、土曜日はゴルフ場でキャディ、日曜日はたまに小さなゴルフショップの店員としてアルバイトし、ゴルフ代の足しにしていました。その中で自分が、顧客との会話を通じて、相手に合ったゴルフクラブを選び販売することに長けていることがわかりました。顧客が欲しいものを売るのではなく、顧客が必要としているものを売ることが満足度につながり、後日他の商品を買ってくれたりクラブのシャフト交換の相談に来てくれたりしました。
当時の私は、1対1のセールスに自信はありつつも、売上は他のスタッフの3倍程度が限界だと思っていました。そこで、私のセールスの強みを仕事にし、より大きな領域に活かしたいと考えていたところ、マスマーケティングであれば商品の企画段階から携わり、数万、数百万の人に販売できると考えました。就職活動中、あるメーカーがマーケティング部での採用募集をしていたので応募し、幸いにもオファーをいただくことができました(面接は1対1に近いので得意でした)。
マーケティングの職に就けるのは良いことであり、このメーカーは好きだったものの、一生の仕事にするほどではないのでは、とも漠然と思っていました。そのため、内定をいただいた後も、一緒にゴルフの練習をしていた友人から翌日面接を受ける会社の話を聞き、面白そうだと思って会場に付いていき、その場で自分も一次面接をしてもらうようなこともありました。