CO2排出量の「見える化」が購買行動に影響 ルミネなど5社が実証実験

8割以上がCO2排出量の可視化に好印象

ルミネは、商品や決済におけるCO2排出量を可視化することで、消費者の行動変容を検証する実証実験を行った。「JCB」、「JR東日本」、「マッシュスタイルラボ」、「Your Arbor Inc . 」と共同で実施。マッシュスタイルラボの店頭商品にCO2排出量の情報を確認できる二次元コードタグを設置し、その情報を閲覧した消費者にアンケートに答えてもらうことで、CO2排出量情報が購買行動にどのような影響をもたらすのか検証した。

写真 マッシュスタイルラボのブランド店舗で実施した実証実験

マッシュスタイルラボのブランド店舗で実施した実証実験

実証期間は4月26日から5月31日。場所は「ルミネ新宿」館内のマッシュスタイルラボのブランド店舗で「SNIDEL(スナイデル)」「gelato pique(ジェラートピケ)」「FRAY I.D(フレイ アイディー)」「Mila Owen(ミラ オーウェン)」が選ばれた。

JCBとJR東日本はスタートアップ支援の一環で、CO2排出量の算出システムを提供しているカナダ企業「Arbor」を支援。同社のシステムを使って日本国内のアパレル業種でCO2排出量情報を算出する取り組みを実施することになった。国内ではCO2排出量情報の可視化は馴染みが薄く、顧客のCO2排出量に関する認識について意識調査を行い、今後のサービス展開に生かす狙いだ。

JCBとJR東日本からルミネに企画を持ちかけたところ、サステナビリティに対する取り組みを推進するマッシュスタイルラボが協力することとなった。

実験の前段階では「Arbor」が、対象商品の生産過程で発生したCO2排出量を算出し、閲覧用の二次元コードタグを作成。実験期間中は、顧客が二次元コードをスマートフォンでスキャンし、商品や決済手段(現金・キャッシュレス)のCO2排出量情報を確認し、任意でアンケートに回答する。

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写真 CO2排出量を確認できる二次元コード

CO2排出量を確認できる二次元コード

アンケートでは「商品のCO2排出量を「見える化」しているブランドに対し、「好意的な印象を持つか」「CO2排出量の『見える化』は、今後広がっていくべきだと思うか」などのブランド認識に関する設問のほか、「商品のCO2排出量がわかることが、商品購入の意思決定にどれくらい影響を受けたか」といった行動変容に関する設問を用意した。

実証期間中のスキャン件数は841件。うちアンケートは440人が回答した。女性人気が高いブランド店での実験だったため、アンケートの回答者は9割が女性。年齢は20~30代が8割を占めた。

行動変容については、購入時に普段は意識していない環境問題を考えるきっかけになり、ブランドの好感度向上につながることが判明した。CO2排出量の「見える化」を行っているブランドに対して、「好意的な印象を持つ」と回答した顧客は、世代を問わず8割以上。「同様の取り組みは今後広がっていくべき」と回答した人も9割以上だった。この結果から、CO2排出量の可視化がブランドの「ファン化」を支援する手段の一つになりうると見ている。

CO2排出量の「見える化」が与える、商品購入の意思決定への影響に関しては、20~30代の6割以上が「影響を受けた」と回答。一方、店舗スタッフのフィードバックでは「デザインを優先する傾向が強い」という指摘もあり、CO2排出量の「見える化」は、商品購入の要因として最優先になるとまでは言えないと考えられる。

「店頭で商品のCO2排出量がわかることが、商品購入の意思決定にどれくらい影響を受けたか」という設問では、「サステナブルを意識している企業の洋服を購入したい」「環境にも良いならなおさら買おうという気持ちになった」という声もあるなど、CO2排出量の「見える化」が購買意思決定に少なからず影響したと見られる。結論として、「見える化」による定量的効果は限定的ではあったが、顧客の認知度向上など一定の効果はあったとしている。

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決済手段においては、現金の方がキャッシュレス決済よりもCO2排出量が多い。紙幣や貨幣の製造・流通に必要なエネルギーのほか、24時間稼働しているATMも要因だという。その情報が支払い手段の選択に与える影響についても検証したが、排出量の「見える化」によってキャッシュレス決済の誘導に繋がったケースは少ないという。マッシュスタイルラボでは元々キャッシュレスの利用比率が高かったことも要因だという。一方、「これまで意識したことがなかった」「初めて知った」という声もあり、一定の効果はあったと見られる。

この結果を通して、JCB米国法人シニアバイスプレジデントの堀口智也氏は「サステナビリティ活動を積極的に推進している企業は多いが、消費者においては、普段から意識して考えている人は限られている。実験では思った以上に好意的なフィードバックを得られた」と振り返った。また、CO2排出量の「見える化」のシステムは、小売事業者と顧客のコミュニケーションツールとしても利用できると期待を込めた。

マッシュスタイルラボ執行役員で生産管理本部の岩木久剛本部長は「実証結果を販売増加につなげることは考えていないが、『アパレル業が、未来の地球を守ることに向き合っている』ということをお客さまに伝えていきたい」と意気込みを語った。今回の実証実験では数値によるエビデンスを提示したが、CO2を減らす必要性が直感的に伝わるような訴求が足りなかったとし、CO2削減の意義や各社の理念に対する理解をもっと深めたいと話した。

ルミネ取締役で総合企画本部副本部長の栗原良彰氏も「業界の先頭を切って、CO2排出量の『見える化』を推進したい」とし、マッシュスタイルラボのように趣旨に賛同する企業と一緒に進めていきたい考えを示した。

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