「ゆえん」ではコンサルタントを“ファシリテーター”と呼び、ファシ リテーターを中心にプロジェクトに応じて外部パートナー・アドバイ ザーでメンバーを構成する。写真左から、デザインマネージャー橘 内和則氏(ella inc.)、アートシンキングアドバイザー尾和恵美加氏 (株式会社Bulldozer)、ファシリテーター御園生浩司氏、ファウン ダー/ファシリテーター佐々木留美氏、アドミニストレーター雑賀 恵理氏、ビジネスデザイナー玉村嘉崇氏(Traverse Asia LLC)。
変化が加速したコロナ禍で根付いた「ブランド」の重要性
―なぜ、東急エージェンシーは「ゆえん」を立ち上げたのですか。
2023年に「新規事業提案制度」の社内募集を行った際、第1号案件として採択され、誕生したのが「ゆえん」です。ただ、このユニットには前身があり、それが2006年から開始した、共創型ブランディング支援サービスの「V-WAYS®」です。近年、「V-WAYS®」に、パーパスやミッション・ビジョン・バリューの策定からその浸透、活動といった、当社の主事業である「広告」とは異なるコーポレートブランド構築支援のご相談が多く寄せられるようになりました。
相談が増えた理由としては、時代や環境の変化と共に、事業変革や事業統合を行う企業が増えてブランディングが企業の課題として顕在化したことがあげられます。もはや日本企業において、アウターだけでなく、インナーも含めたブランドやコミュニケーションに関する問題が経営課題といえる今、経営に近い領域でコミュニケーション、クリエイティブのノウハウを生かせる機会が広がっている。お客さまの課題が広告からマーケティング、さらに経営へと幅広く、複雑になっている現在、広告会社を出自とする私たちも、アウトプットの形を限定すべきではないとも考えています。
―「ゆえん」が提供するブランディングサポートにおいて重視していることは何ですか。
ブランディングのプロセスを円滑に進めるための視点は、当たり前ですがブランドに関わるのは、“人”であるということ。そこで私たちはいわゆるコンサルタントを「ファシリテーター」と呼び、顧客企業の中にある答えを引き出すことに重きを置いています【図】。
図「ゆえん」のブランディングメソッド
外から見た企業の見た目を装うだけでは健全なブランディングは成立せず、ブランドの矛盾のない姿勢が、顧客との信頼関係を生みだす。「うち」と「そと」がひとつづきとなる、ブランドの基盤構築と活動を設計する。プロジェクトは、課題に合わせたアプローチ選定やワークショップ活用など、柔軟に進めていくという。
―「ゆえん」がファシリテーションを重視するブランディングに舵を切った理由は何ですか。
ブランディングの支援とはゼロから何かをつくり出すのではなく、すでに存在している価値あるものを発見し、それを形にして表に出していくことだと考えているからです。
ブランドをつくっている人の想いを引き出して、それを発信していくことが、プロダクトひいてはコーポレートのブランディングに通じるはず。そう考え、「ファシリテート」という方法を重視しているのです。
―「ゆえん」というネーミングに込められた想いをお聞かせください。
私たちがブランディングに着目した理由のひとつとして、「とにかく売らなければ」と数字に追われているマーケティング部門の方たちに、もっと未来に向けた意思を醸成するために時間を費やしていただきたいと思ったことがあります。
コーポレートブランドが社内に浸透すれば、マーケターの方たちも、それを軸とした行動に落とし込むことができるはず。その企業の独自性をもとに、“らしさ”を深めていくのがブランディングだとするならば、ある意味でその行為は「やらなくていいこと」を明確にしていくプロセスと言えるかもしれません。
しかし、市場調査や競合研究の末に導き出されるコンセプトというのは、ややもすると競合他社と似たものになりがちです。これがユニット名の由来につながるのですが、そのブランドの起源や由来である「由縁」、やるべき理由である「所以」を紐解くことで、唯一無二の“コア”を言語化することが何より大切。ブランドは人と同じで、育ってきた環境が違えば全く違うものになります。他社と比べるのではなく、すでに自社で有するものが、模倣できない「ブランド」の価値になります。
―コーポレートブランドと、プロダクトブランドはどのように相乗効果を生み出すべきと考えますか。
私自身、以前はストラテジックプランナーとしてブランドマネージャーに並走する役割を担っていました。その頃に重要と感じたのは、ブランドマネージャー自身が「このブランドの存在意義とは、〇〇である」と確固たる軸を持っているかどうかということ。
加えて、優秀なブランドマネージャーは、コーポレートブランドを理解し、プロダクトのマーケティング・コミュニケーション施策に活かしていました。 その“企業らしさ”やDNAが意識に根付いているからなのでしょう。コーポレートブランドの土台があって、個々のプロダクトの魅力もさらに高まる。結果的に、相乗効果が発揮され、「あの会社の商品だから」とか「共感できる」という評価がついてくるのだと思います。
そう考えると、コーポレートブランドの構築支援はプロダクトのマーケティングにつながっていくといえるでしょう。
―今後の展望をお聞かせください。
社内からの相談を受けて、既存のお客さまをサポートするプロジェクトが多いですが、直接お客さまとやり取りする機会も増やしています。なにか漠然と悩んでいることがあればお声がけいただいて、一緒に最適解を見つけていけたらと考えています。
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株式会社東急エージェンシー ブランドコンサルティングユニット「ゆえん」
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