今回は、HENNGEのデザインマネジメントセクションのマネージャーであり、インハウスクリエイターの先輩でもある鏡雅好さんとの対談です。
鏡さんはHENNGEに25年以上在籍しているベテランクリエイターで、現在はデザインマネジメントセクションのマネージャーとして活躍されています。
今回の対談では、マネージャーとしてインハウスクリエイティブをどう見ているのかを全2回にわたり語っていただきます。
(左から)HENNGE デザインマネジメントセクションのマネージャー 鏡雅好さん、筆者。
「デザイナーを探しているから手伝ってくれないか」
古野:はじめに、インハウスのクリエイターとしてのキャリアのスタートについてお聞かせください。どのような経緯で入社されたのか、お話しいただければと思います。
鏡:友人がもともとHENNGE(当時の社名はHDE)の社員として入社していたんです。彼はプロジェクトマネージャーとして働いており、その友人から「今、デザイナーを探しているから手伝ってくれないか」というオファーがあったんです。それがきっかけで、私も2000年にHENNGEにジョインすることになりました。
古野:そうなんですね。デザイナーとしてジョインしたということは、それ以前にデザインを学ばれたりしてたんですか?
鏡:高校生の時に、学校のICTルーム、いわゆるパソコン室でCADや職員室にあったMac、そしてPhotoshopに触れる機会がありました。授業外でも先生に頼んで使わせてもらい、すぐにPhotoshopの面白さに気づきました。その経験からデザインの可能性を感じ、高校生のときに親にPower Macintosh 7600を買ってもらい、3DCGやPhotoshopを本格的に触り始めたことが、デザインを志すきっかけとなりました。
古野:へー、その時からPhotoshop使ってたんですか。周りにデザインを志す人とかいたんですか?
鏡:そういう人は、周りには誰もいなかったですね。逆に、周りの友だちはファッションに興味を持っている人が多く、自分だけがパソコンに向かっている「ただのオタク」という感じでした(笑)。だから、誰にも言えず、こっそり続けていました。イケてるなんて全然思っていなくて、こっそりとパソコンでPhotoshopや3DCGをつくっている感じでしたね。
古野:そうなんですね。デザインはどうやって勉強されたんですか?
鏡:完全に独学で、自分で試行錯誤しながら続けていました。高校生の頃には、本を読みながらひたすら3DCGやPhotoshop、Illustratorを勉強していました。その後、CG系の専門学校に進学しつつ、デザイン事務所でアルバイトをしたり、フリーで仕事を受けたりしていました。作品をネットで発表したり、知り合いに見てもらったりしながら、少しずつ経験を積んでいきました。
古野:まだネットが流行ってない時から、作品をネットで発表していたと。Web系のクリエイティブにも興味があったんですね。
鏡:元々はグラフィックデザインに興味があったのですが、Webが新しい表現方法として登場してきた時代でした。紙や物を作る以外に、Webも一つの表現方法として非常に魅力的に感じました。そのため、グラフィックデザインの興味を持ちながらも、Webデザインにも関心を持つようになりました。WebとかUI/UXがやりたいっていうよりは、表現できるメディアの一つとしてWebは、当時は捉えていましたね。
古野:なるほど。
はじまりは、ソフトウェアのUI設計とパッケージデザイン
鏡:当時、HDE(後のHENNGE)はSaaSではなく、パッケージソフトウェアを作っていました。現在のようにクラウド上で提供されるSaaS とは異なり、ソフトウェアをCD-ROMなどでパソコンにインストールして使用していました。
例えば、Adobeのソフトウェアもそうでした。SaaSが登場する前は、ほとんどのソフトウェアがこのように提供されていました。
また、Linuxという安定性に優れた、サーバーでよく使用されるOSがあり、その当時はGUI (グラフィカルユーザーインターフェース)ではなく、CUI (キャラクターユーザーインターフェース)で操作するのが主流でした。GUIではマウスでフォルダを開いたりするのに対し、Linuxではコマンドを打つことで操作を行っていました。例えば、ディレクトリを移動するには「cd」というコマンドを使い、テキストファイルを編集するには「vi」コマンドを使っていました。
古野:今みたいにマウスで直感的に操作ができる感じではなく、ある種のプログラミングに近い操作が必要ということですかね。
鏡:ですね。その頃、私たちはLinuxのCUI操作を直感的にGUIでできるようにするソフトウェアを作っていて、私はデザイナーとして、UIの設計やデザインを担当していました。
例えば、クリックすると設定が有効になるような画面を作成するなど。また、パッケージソフトウェアとして販売するために、箱やCDのデザイン、広告やパンフレットの制作も行っていました。製品のUI 設計からVIまで、幅広く手がけていました。