皆さんこんにちは。博報堂キースリーの重松俊範です。
前回と前々回では、ブロックチェーンとweb3の基礎について説明してみました。
今回はそれをふまえ、「企業がマーケティングにweb3を導入するメリット」を具体的に考えてみたいと思います。
企業を横断したデータ連携が簡単に?
改めておさらいすると、web3の世界ではデータは企業のサーバ内ではなく、みんなが分散して確認している型の台帳(=ブロックチェーン)の上にあります(詳細は第4回「とにかくわかりやすく『ブロックチェーン』の仕組みを説明します。」をぜひご覧ください)。そしてその台帳は誰でも自由に参照することができます。
これを企業の立場から見た場合、どのようなメリットがあるのか。web3が浸透した場合、本来自社で有していないデータにも企業の垣根を越えてアクセスができるようになる可能性があります。
たとえば、「安全運転を証明するNFTを持っている生活者に、自動車保険の会社が特別オファーを送る」「たくさん旅行をして素敵な写真を撮っている人に対して、カメラメーカーの新商品発表会のシークレット招待状を送る」「甘いものを沢山食べている人に、歯磨き粉のクーポンを送る」なんてことも考えられるわけです。
筆者作成
web2がメインの現在では、生活者のデータは基本的に各企業や組織が有しているので、企業やサービスを横断して生活者に便益を与えるのは、すごく大変。お金と時間をかけてシステムを改修・連携させる必要がありますし、企業間は個人情報を連携させることを、きちんと契約書を結んでプレスリリースで発信して、やっと実現できるという感じですよね。
しかしweb3を使えば、企業を横断してのデータ連携がこれまでより簡単に実行できるようになるかもしれないのです。
なぜ広告会社がweb3に取り組むのか
そして私たちがなぜ、そんなweb3に取り組むのか。
当社・博報堂キースリーの親会社である博報堂は、言わずもがな、広告会社です。事業のコアは、クライアントの商品やサービスを、クライアントの直面する課題と生活者に寄り添い、解決すること。デジタルマーケティングが成熟してCPAが高騰したり、個人情報の規制が世界中で厳しくなったりしてきている昨今、web3に挑戦することは将来的にクライアントとともにこれからのマーケティングを考えていく上で一助になるかもしれない、と考えています。
また、人口減少、高齢化、近隣大国の成長、円安などの苦境が続く中、重要なのは各社で競争を続けることではなく、“共創”していくことだと考えています。多様な企業と繋がりのある広告会社という存在は、そのハブとなりうる存在なのではないかとも思うわけです。
ブロックチェーンは「ジャイアントCRM」?
もちろん、今後も企業は引き続き独自に生活者のメールアドレスを収集したり、SNSで公式アカウントを開設したりして、自社の顧客情報を取得し続けるでしょう。その営みが終わるとは全く思いませんが、それらに加え、ブロックチェーンを「企業横断型のジャイアントCRM」と捉えて活用できるとしたら。マーケティングの手段が豊富になるような気がしますよね。
筆者作成
そうした取り組みを、実は最近、NTT Digitalと博報堂でスタートしました。「web3 Jam」と題して、これまで実現が大変だった企業同士のコラボレーションを、ブロックチェーンを活用して実験してみよう!という試みです。
企業同士で少しずつ相互送客をすることで、お互いに新規ファンを獲得するチャンスにもなり、さらに既存ファンにも喜んでもらう。みんなが少しずつ協力することでそんなことが実現できないか、ということを目論んでいます。
プロジェクトのコンセプトは「まとまって、広がる」。チームのコピーライターが考えたもので、私も気に入っています。ロゴデザインにもしっかり反映されていると思います。このようにスッと分かりやすいクリエイティブをつくることができる広告会社が、まだ生活者に分かりづらい新しい取り組みを真ん中で実行するメリットは、やはり大きいと感じています。
いま日本や地球全体が抱えるさまざまな問題も、ひとりや1社の努力だけでは解決不可能です。“共創”という言葉をただのブームで終わらせること無く、みんなで少しずつ改善していく方向に舵が切れれば、新しい未来が見えるかもしれません。
そんな大きな希望も持っている「web3 Jam」は、24年5月にスタートし、当時から14社に賛同していただきました。現在も続々と賛同企業が増えており、2025年初旬には、具体的にキャンペーンの形で何かを実施できるように各社と話し合いを続けています(ご興味のある方がいたら、ぜひ当社までご連絡ください!)。
ほかにも博報堂キースリーでは、テレビドラマとコラボしたNFT配布や、航空会社、自動車会社、食品会社などとコラボしたNFT販売など数多くのweb3案件を実施したり、ワークショップを提供したりしています。企業アセットとブロックチェーンをどう組み合わせると良さそうか? を一緒に考えていくweb3ワークショッププログラムも、クライアントの広告部や宣伝部だけでなく、新規事業開発の部署などから引き合いもあります。
現在全ての企業がインターネットを使っているように、将来的には全ての企業がブロックチェーンを使っているはず。その未来を一緒に広げていけたらと考えています。
さて、光陰矢の如し、Time Flies、光阴似箭。次回いよいよ最終回です!せっかくなので大きく出てみようかと思いますので、よろしくお願いします。