※本記事は、月刊『宣伝会議』10月号に掲載されています。
大切なのは最初の5秒で“異常値”を生み出すこと
僕の場合、新卒で広告会社に入って初めて「自分でつくった」と手ごたえを感じられた媒体がラジオCMでした。
テレビCMの場合は自分で考えたプランを元に監督や演出家と一緒になって制作していくパターンが多いのですが、ラジオCMの場合は、自分が書いた原稿がそのまま形になることがほとんど。あるいは収録現場で監督としてディレクションをしていく中で、効果音を入れる場所や間合い、セリフの取捨選択をしていきます。
逆に完成したものが面白くなければ、全部自分のせいというのも怖いところ。原稿を書いた段階では面白かったのに実際、形にしてみたらそうでもなかった…ということに気付けるのも大事でしたね。
ラジオCMをつくることで、演出方法や秒数の感覚も身に付いていきます。これはテレビCMの企画をつくるときにも、間違いなく役立ちました。
ラジオCMは、最初から真剣に聴こうとしている人はほとんどいません。「宣伝会議賞」の場合は、キャッチフレーズから派生してシナリオをつくることもあるかと思いますが、その一番伝えたい「ひとこと」を聴いてもらうために作戦を練ります。
大切なのは最初の5秒で“異常値”を生み出すこと。「何かおかしなことが起きたぞ」と耳を振りむかせることに全力を注いでください。
ラジオCMの魅力は、冒頭でも述べましたが、誰でも形にできること。映像の場合は実現に予算がかかったり、やってみないと分からないことも多いのですが、ラジオなら「ほな、録ってみよ」ができますからね。公募の場合も実際にスマートフォンなどで録音してみて、ブラッシュアップしていきます。音声だけなので、時間や場所も自由自在に飛び越えられる。「伝えたいこと」が最も伝わるシチュエーションや演出を工夫していきます。
なぜ「面白い」と思ったか その理由を分析してみる
ラジオCMに限らず、面白いクリエイティブを生み出すために必要なのは、普段の暮らしの中で「面白い」と感じた物事を分析することだと思います。「おかしなことを真顔で言ってるから面白かったんやな」とか、「偏見がすぎることを堂々と言っているから笑ってしまうんやな」とか。自分の感情を、ぜひ一度振り返ってみてください。
「宣伝会議賞」は「一行で100万円」ともうたっていて圧倒的にキャッチフレーズ部門の応募が多い賞です。それにもかかわらずあえてラジオCMに挑戦するというその姿勢は、5年後、10年後に間違いなく力になると思います。