たとえば、あるチョコレートブランドが、義理チョコをテーマに、そこへ反対するスタンスを言葉にして届けました。この広告は、義理チョコという文化風習にモヤモヤしていた女性たちや、そう思わずに今まで義理チョコをもらっていた人々に大いに話題になりました。
また、とある大人用の紙パンツブランドが、自身の商品に関して悩みを持つ人々がいることを社会的なテーマとして捉え、その常識を変え、その人たちを応援していくスタンスを発信し話題になりました。そして、とある飲食企業は、自分たちの商品を楽しんでもらう飲食店という場の存在を改めて社会的なテーマとして捉え、人と人のつながりを育む場所なのだという価値を再認識させました。
これからの例からもわかる通り、前回のコラムでお伝えした「価値の発見」「感情の設計」というポイントが、この構図にもやはり重要な要素として機能しているように思えます。つまり、特定の社会テーマに対して、その商品やブランドが、新しい価値を発見させるような関わり方をしているか、人としての感情を動かされるような関わり方をしているか。
そもそも、PRとはPublic Relationsの略です。商品の世の中の「関わり方」について、その認識や行動を変えていくという、PRの本質を素直に言葉で実行するということだと思います。
「社会的テーマ」をどう選ぶか。そして、解決するか。
ポイントはやはり、これだと思います。商品やブランドや企業が、社会に対して、どんな社会テーマとの結びつきを表明していくか。その選択肢は無限です。社会や時代をどう見立て、その商品の歴史や、その時点での文脈として、結びつきを表現していくか。ここにセンスや時代を読む力が問われます。
そして、テーマを選ぶだけでは足りません。テーマと商品を結ぶ「関わり方」の見え方まで変えなければいけません。その社会テーマに対する意見やスタンスがあること、そしてそこに新しい価値を発見させたり、感情を抱いてもらうことを意識したメッセージになっていることが必要です。
義理チョコという文化がある、ということだけを知らせる広告では、話題化しませんよね。大人の紙パンツというものに対して、また飲食店というものの存在に対して、新しい認識(パーセプション)を生んだり、新しい行動(ビヘイビア)を生んだりしなければ、PRとして話題になりません。近年の潮流でいえば、PRとしては、社会的な課題を解決する企業アクションまで求められることが多いように思います。PRとして効果があるコピーとは、もしかしたら、企業やブランドが社会課題を解決する行動を先に起こしたうえで、それを告知する言葉、という順序になることもあるかもしれません。
あるいは、コピーだけにできることでいえば、最近、こんなことで困っている人が増えています、と世間に知らしめることもPRコピーの役割だといえると思います。つまり「世の中にある社会課題を印象的な形で世の中に発見させること」(=広告出稿という解決行動)。こういったケースで話題になることも最近は多いと感じます。