PR効果の高いコピーと、広告コピーの書き方の違い

そこに人がいること。「関心」というエネルギーがあること。

社会テーマを選ぶときに、「そこに人がいることが見えるコピー」を意識すると良いと思いました。義理チョコや大人の紙パンツに、モヤモヤしている人がいる。飲食店という場所があるおかげで救われている人がいる。すべての商品やブランドには、必ず世の中の人とのつながりがあります。顧客を想う。生産者を想う。働く人やその家族を想う。途中で荷物を運んでくれる流通の人を想う。社会テーマを選び、そのテーマとの関係性を表現するとき、そのコピーの奥に人の存在を感じるようにする。それが大事だと思います。

そして、そんな人たちが持っている「関心」というエネルギーを感じることも重要です。彼らが、好きなもの、毎日身近にあるもの、こうだったらいいのにと思う課題感や、なくなってほしいと思うペイン、ときには、彼らも気づいていない、潜在的に抱いている気持ちも。人がいて、関心がある。よくよく考えればあたりまえの話ですが、それが、短い言葉で的確に表現されていることがPRコピーとしては大事なことなのです。逆に言えば、社会的なテーマを選んだつもりでも、それが実は企業の独りよがりな事業目標の話だったり、ブランドとしての個人的な未来の話だったりすると、空振りに終わる可能性があるという話です。

PRを狙うときは商品力から離れる勇気も必要

広告コピーを考えるときは、その商品の機能やスペックというのは無視できない要素です。そのファクトが、その商品の見せ方の根拠になるからです。しかし、PRのときは、表現の根拠になるものが、商品と社会をむすぶ「関わり方」になります。機能やスペックが関係している場合もあると思いますが、そっちに寄せようと欲をかくと、そもそも世の中の関心は社会テーマのほうに向けられているので、PRの効果としては弱くなっていくでしょう。

上記のケースで、たとえば、という例をいえば、義理チョコに反対するスタンスを表明する表現の中心に、自分たちのチョコが義理チョコにいかに遠いかを力説してしまうような表現でしょうか。話題になって興味をもってくれた人に最終的にそのファクトに触れてもらうのは良いですが、出会いとなる表現の中心にはしてはいけないと思います。

商品の機能やスペックを中心に広告施策を組み立てるのは、PRではなくプロモーションの領域です。世の中の社会テーマを起点にその関わり方を考えるPRと、商品のもつ力を起点に考えるプロモーションは、似ているようで、発想が真逆です。

コンテンツやタレントはそれ自身が社会的テーマ

漫画やアニメ、ゲームなどのコンテンツをテーマにした広告/コピーや、特定のタレントを起用して話題になる広告/コピーがありますよね。あれはつまり、コンテンツやタレントという存在そのものが、ファンという人たちが関心のエネルギーを生み出している、という解釈で考えれば、上述した理論と祖語のない形で理解できると思います。

ただし、やはり、そのコンテンツとコラボしただけでなく、そのタレントを起用しただけでなく、商品やブランドが彼らとどんな「関わり方」をしているか、そこに新しい価値の発見や感情の設計がないと、話題にはならないと思います。コラボが話題にはなったけど、なんの広告だっけ?という印象にならないように、そのブランドの意見や姿勢を通すことが重要です。

というわけで、今回のコラムでは、PRの効果を生むコピーをどのように考え、生み出していくかについて考えました。冒頭にもお話したとおり、PRに関しては様々な方の方法論があります。今回の話は、世の中との合意形成の話、パーセプションチェンジ/ビヘイビアチェンジ、社会記号など、基本的な話は前提知識として押さえながら、それをコピーでどのように実現していくか、という応用編になると思います。

これから始まる、私のコピーライター養成講座では、もっと詳しく、時間をかけて、課題など交えながら、具体的にお伝えしていきます。また、PRだけでなく、それがパーパスや事業のコピーワークにどうつながっていくか、というお話もあります。ご興味ある方はぜひ受講をご検討いただければと思います。よろしくお願いします。

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井手康喬 氏

博報堂ケトル
クリエイティブディレクタ・コピーライター

2004年博報堂入社、2020年から博報堂ケトル所属。主な仕事に、ヤフー「ちょうどこの高さ。」キリンレモン「透明なままでゆけ。」DUNLOP「想像を、追い抜け。」MAZDA「心よ走れ。」など。 TCC新人賞/ファイナリスト、ACC賞シルバー、Cannes Lionsシルバー、AdFest グランプリ、PRアワードグランプリ最高賞、日本ネーミング大賞2021グランプリ、日経広告賞大賞、グッドデザイン賞ベスト100、ユーキャン新語・流行語大賞トップ10入賞、など。

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