ヤッホー×カンロ 顧客との「直接接点」を生かしたロイヤルティマーケティング

内山:カンロでも、ファンへのアンケートを基に「未ファン・ライトファン・ファン・コアファン」の4つの層に分け、層ごとにデジタルツールを活用してタッチポイントを作っています。立ち上げ予定のコミュニティーサイトでも、ファンの段階ごとにアンケートの出し分けを行い、アンケートデータを商品の開発に活用しようとしています。

直営店での対面販売が難しくなったコロナ禍に立ち上げたECサイトをきっかけに、お客さまとデジタルでじかにつながれると分かりました。今後は、ECサイトのお客さまIDをコミュニティーサイトのIDとひも着けて、一元管理しながらの接客も考えています。

SNSはファンになる入り口として重要なツールです。アカウントの方向性として、Xはユーザーとのコミュニケーションメイン、Instagramはコンテンツの世界観発信メインに投稿内容を定義し運用しています。

写真 人物 カンロ 常務執行役員 マーケティング本部長 内山妙子 氏

コントロール不可! SNSの口コミに企業はどう向き合うべき?

――実際にSNSを基点に口コミが広がって商品が売れた事例を教えてください。

内山:まず、口コミのコントロール成功例にピュレグミの「おまもり梅」があります。受験生を明るい未来へいざなう受験アイテムとして価値訴求し、SNSを中心にコミュニケーションしたところ、ユーザー数が伸長し、売上も前年に比べて160%拡大しました。もともと、ピュレグミを食べるとちょっと前向きになるとか、甘ずっぱくて元気が出るとして、受験生に食べられていることがSNS上で散見されていました。そこで受験生の特殊な市場をSNSでブリッジし、応援歌をつくるプロモーションを行いました。応援歌を自分のためだけに作るだけでなく、他の人にプレゼントして応援してあげるところまで動線を引いたことが成功要因だったと考えています。

次に、口コミへの便乗例として「グミッツェル」があります。2011年販売の商品ですが、大ヒットしたのは10年後。YouTubeやTikTokでこれをかじる音を楽しむASMRがバズったことを受け、公式のASMR作製やプロモーションでブームを後押ししました。

制御不可能な口コミもあります。例えば「じゅるる シャインマスカット」という新商品。他社の類似商品が人気ですぐ品切れになったタイミングで本商品が発売されたため、発売前に拡散が進み、初日に売れすぎて2日で緊急終売しました。

――SNS活用の実行意思決定はどう行っていますか。

内山:SNSなどの施策実行指標として、各ブランドの間口と奥行きの両方でデータを取っています。ブランド的に間口を重視したほうが良ければSNS施策をしたり、奥行きのLTV(Life Time Value・顧客生涯価値)を重視して1人にたくさん買ってもらうほうが良ければコミュニティー施策をしたり。指標を基に説得を行なって、施策を実行しています。

SNS活用のリスクに関連して言うと、カンロには多様な商品があり、ブランド人格が1つでない課題があります。そこでブランド人格をコーポレート人格に昇華させるために、各ブランド担当者とコーポレートの人格をどう作るか話し合う、目線合わせのワークショップを行なっています。コーポレートブランドとしてのカンロが絶対言わないことは何かなどを共有したうえで、日々の意思決定を各自に任せています。

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