Q3:転職や社内異動などに際して、強く意識したこととは?
社外広報でも社内広報でも、広報担当者は社長の言葉を代弁して社内外に発信する存在だと考えており、ビジョンや価値観を理解することが1番大切だと思っています。ですので業務委託で携わる会社も「社長の話を聞いてワクワクできるか」、「社長の描くビジョンに共感できるか」を意識していました。
また現職で広報をスタートした時は上場に向けた成長期段階だったこともあり、人事、総務、マーケティング、営業事務など広報を兼任しながら社内の部署を渡り歩いてきました。その中で強く感じていたことは、広報職に対してあまり理解が進んでいないということ。なんとなくイメージはできるが、具体的に毎日何をしているのか、が見えないのが広報だと思います。
ですので、コミュニケーションを取ることを常に心がけ、広報が何をしているのか、どんな情報が欲しいのか、その情報を得られた時にどんな効果が得られるのか、を常にアウトプットし、取材の際はメンバーを前に出す、など周りを巻き込むようなアクションに変えていました。
ありがたいことに今は社内の広報理解も深まり、「ひとまず広報に相談してみよう」という空気感を醸成することができたと思っています。
Q4:国内において広報としてのキャリア形成で悩みとなることは何?
他社の経営者さんや広報経験の浅い方などから広報について相談を受けた時、よく感じるのは「広報の仕事=メディアに掲載してもらうこと」に限定されがちであり、「広報担当を置いたら、メディアに掲載してもらえる」と誤解されていることだと思います。
もちろん掲載を獲得するためのメディアとの関係性構築や、社内外との日々のリレーションは広報担当者にとって重要な仕事の一つです。しかしメディア掲載だけが目的になり結果を急ぎ、なかなか成果につなげることができず、焦ってしまう広報担当者が多いように思います。
メディア掲載を獲得するためにはたくさんのプロセスを踏む必要があります。日々社内で情報をキャッチアップしたり、社外に出てコミュニティに参加したり、メディアに対して企画を持っていったり…と掲載に至るまでに時間がかかることをまずは理解することが大切だと考えています。
また広報=メディア掲載ではなく、ソーシャルメディアの運用、業界や競合他社の動向リサーチや分析、社内広報、クライシスコミュニケーションなど業務範囲は多岐にわたります。その他にも企業のブランドイメージを形成し、ステークホルダーとの信頼関係を築くために重要な役割も果たします。
それらを複合的にとらえ、戦略的なコミュニケーションを通じ組織の目標達成に貢献することで、広報としてのキャリアは確実に積み上がっていくと考えています。
Q5:広報職の経験を活かして、今後チャレンジしたいことは?
昨年から子会社「きゅういち」に役員として携わるようになりました。「きゅういち」は北海道にある水産加工会社で、これまで関わったことがない水産業界でビジネスを展開しており、ホタテなどの商品をECサイトで販売しています。
広報歴としては to B・無形の会社でずっと携わってきたので、経験が活きるのか少し不安な部分もありましたが、うまく社会課題とサービスをリンクさせることができつつあり、これまでの経験を活かしながら毎日新しい発見を感じています。
またこの経験をもっと他の一次産業にも活かしたい・貢献したい、と感じる機会も出てきたので、ぜひチャレンジしたいと思っています。
また役員として会社に関わる機会も増えたことで、これまで培ってきた広報視点だけでなく、経営視点で、会社で起こっている事象をとらえる必要が出てきました。まだまだ学ぶことも多く、今後は広報の経験を活かしつつ、経営目線も養っていきたいと考えています。
【次回のコラムの担当は?】
プレシャスパートナーズで執行役員 CMO 兼 経営戦略室 室長を務める、北野由佳理さんです。広報歴も長く、広報に携わる方なら手を取ったことがある書籍「ひとり広報」の執筆者でもあります。社内外問わず精力的に活動を続けていて、尊敬する広報パーソンの1人です。