シビックプライドを醸成し「暮らす市民が褒めるまち」を目指す、古河市のシティブランディング活動(古河市・藤井恵さん)

広報、マーケティングなどコミュニケーションビジネスの世界には多様な「専門の仕事」があります。専門職としてのキャリアを積もうとした場合、自分なりのキャリアプランも必要とされます。現在、地方自治体のなかで広報職として活躍する人たちは、どのように自分の仕事とキャリア」をテーマにバトンをつないでいただきます。
茨城県ひたちなか市の米川裕太郎さんからバトンを受け取り、登場いただくのは茨城県古河市役所の藤井恵さんです。

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藤井 恵氏

茨城県古河市役所
企画政策部 シティプロモーション課
ブランド戦略室 主幹

民間企業を経て、2017年に茨城県古河市役所に入庁。2023年4月より現職。シティブランディング推進業務およびふるさと納税業務を担当。担当として携わったブランド戦略「こがくらす」の企画全体が令和6年全国広報コンクール広報企画部門にて入選。また、戦略推進ツールとして作成したブランドムービー「こがくらす」が、地域プロモーションアワード 2023 ふるさと動画大賞において大賞・令和6年全国広報コンクールにて総務大臣賞を受賞。

Q1:現在の仕事内容について教えてください。

こんにちは!茨城県古河市役所の藤井と申します。

はじめに、古河市の紹介をさせてください!

古河市(こがし)は、茨城県の最西端に位置し、約14万人が暮らすまちです。ちょうど関東平野の真ん中あたりにあり、栃木県・埼玉県との県境に接しているため、県外とのつながりが強い地域でもあります。加えて、東京までのアクセスは電車で1時間程度であり、都心のベッドタウンとしての役割も担っています。

古河の歴史は古く、日本最古の歌集「万葉集」にも「許我(こが)」の地名が詠われています。室町時代には関東公方の足利成氏が「古河公方」として本拠地を古河に置き、その後約130年の間、古河は関東一円の政治の中心となりました。江戸時代には古河城を中心とした日光街道の宿場町として栄え、現在も当時の面影を残す街並みや史跡・歴史的文化施設などが点在しており、茨城県では唯一全国小京都会議に加盟しており、関東の小京都とも称されています。

自然も豊かであり、渡良瀬川の治水・利水のため整備された渡良瀬遊水地は、ラムサール条約湿地に登録された貴重な湿地環境が保たれており、さまざまな生き物たちの宝庫になっています。また、桃の花などが咲き誇る古河公方公園は、自然景観を生かした公園として日本で初めてユネスコの「メリナ・メルクーリ国際賞」を受賞し、市民の憩いの場となっています。

イメージ 古河市の地図

さらに、お祭りも大変盛んです。春には桃まつり、夏には花火大会…といった季節ごとにさまざまな祭りが催されています。珍しい祭りとしては、例年12月に開催される「古河提灯竿もみまつり」があります。市内各団体が、20メートル近い竹竿の先につけた提灯を激しく揉み合いながら、相手の提灯の火を消し合う祭りで「関東の奇祭」と言われており、大変熱く見ごたえのあるイベントです。水と緑の豊かな自然と、歴史と伝統のまち。古河市には多彩な魅力が溢れています。

イメージ 古河提灯竿もみまつりの様子

私は、シティプロモーション課の課内室であるブランド戦略室に所属し、シティブランディング推進業務とふるさと納税業務を担当しています。

シティブランディング推進業務では、古河市のブランド戦略である「こがくらす」の推進施策を検討・実施し、また、市民への浸透を深めるために推進ツール等を活用して周知を行っています。

ふるさと納税業務においては、事業者訪問に力を入れています。事業者の皆さんと数多く打ち合わせを行い、どうしたら返礼品の魅力を届けることができるか、そのためにはどんな工夫が必要なのか等を一緒に検討し、既存返礼品のブラッシュアップや新規返礼品の提案をするなどサポートを行っています。

Q2:貴組織における広報部門が管轄する仕事の領域について教えてください。

当市のシティプロモーション課は、本課と室の2班構成となります。

本課のシティプロモーション課では、広報紙・定住促進・HPやSNSの配信管理・フィルムコミッションといった業務を担っています。

広報紙では、市民の皆さんに古河への愛着と誇りを持ってもらえるよう、古河で頑張っている人や新しく生まれた物や場所、新しい事業などさまざまな内容を掲載することで、古河の魅力が伝わる紙面づくりを目指しています。また、心掛けているのは、読者が知りたいことを分かりやすく伝えるため、見やすいデザインを意識して作成している点です。

イメージ こがくらす

ホームページでは、利用者の要求に素早く応えるため、Googleアナリティクスなどを用いて小まめにメンテナンスを行っており、また、LINE公式アカウントでは、利用者に飽きられないよう、「FlexMessage」を利用して視認性に配慮した情報発信を行うなど、各メディアの特色を生かした情報発信を心掛けています。

そのほか、市民一人ひとりに「古河市を知り、感じ、共有し、愛着を持ってもらう」ため、市民自らが古河市の魅力を発信する「こがキラphotoクラブ」やウェブマガジン「koga note.」を運営するなど、SNS等で市民目線の情報発信を行っています。

イメージ 古河市マスコットキャラクターこくり

イメージ バナー koga note.

そして、私が所属するブランド戦略室では、シティブランディング推進業務とふるさと納税業務を担っています。

シティブランディング推進業務では、古河市のブランド戦略である「こがくらす」の推進施策を検討・実施しています。

ブランド戦略「こがくらす」は、移住・定住促進を目的とし、市民が潜在的に感じている日常の中にある古河の魅力を発見・再認し、それを共有・発信することで、市民のシビックプライドを醸成していき、「暮らす市民が褒めるまち」を目指すシティブランディング活動です。

古河市は、交通の便が良いため定住意向や愛着度が高い一方、さまざまな魅力があるものの他自治体に比べて突出した特徴がないため、市民が市の魅力に関しての発言を躊躇してしまうという問題を抱えていました。これを解決することが地域活性化につながると考え、令和4年度から本戦略をスタートさせました。

古河市の良いところは暮らしのクオリティの高さにあるという市民の意見から「こがでくらすと」に続く言葉(古河の良いところ)をおのおので考えてもらい、魅力を共有・発信しています。

イメージ 広告 こがでくらすと

現在は、ロゴマークやポスター、ブランドムービーといった推進のために作成した各種ツールの活用や、本戦略の情報を集約した特設サイトに加えて広報紙および市公式HP・SNS等の既存ツールと相関した情報配信を行っています。さらに、市民ワークショップを実施し、市民の皆さんに古河の魅力を考えてもらう機会や発信する手法について学ぶ機会を設けることで、「こがくらす」の周知と定着を図っています。

イメージ ブランドムービー「こがくらす」

前述したブランドムービー「こがくらす」は、市民一人ひとりが自分事として「こがでくらすと」に続く言葉について考えてもらうためのトリガーコンテンツとして作成しました。

イメージ ブランドムービー「こがくらす」

本動画では、コミュニケーションメッセージとして「こがでくらすと」を設定し、出演者の発言だけでなく、歌やロゴマークを含めて印象的に繰り返し問いかけています。出演してくださった市民の方がそれぞれの「こがでくらすと」に続く言葉について考え、自然に出た言葉をありのまま採用し、実際に古河で暮らす中で感じている良い面も不便な面も、等身大の言葉で伝えています。

その結果、地域プロモーションアワード2023ふるさと動画大賞での大賞、令和6年全国広報コンクールにおいて総務大臣賞を受賞するなど、とても高い評価をいただきました。

これを受け、市民の皆さんがまちの良いところをYouTubeやSNS上で上手に発信できるよう、各種動画コンテンツについて詳しく学ぶための動画スクールを令和6年度より始めています。

イメージ ブランドムービー「こがくらす」

ふるさと納税業務では、市内にある地場産品の発掘や、既存返礼品のブラッシュアップを行い、魅力的な返礼品のPRを行っています。

寄附額向上により地域経済の活性化を促すふるさと納税ですが、古河市ではシティプロモーションツールのひとつであると捉えています。市の地場産品の魅力を発信することは、市のファン獲得、地場産業の振興、ひいては地域経済における好循環の創出につながっていくからです。そのため、寄附先として市が選ばれるためのプロモーション施策だけでなく、市の交流人口・関係人口の創出に寄与することを目指した情報発信を実施することを心掛けています。

イメージ 市の地場産品の魅力を発信する

Q3:ご自身が大事にしている「自治体広報における実践の哲学」をお聞かせください。

シティプロモーション業務に携わる上で私が大切にしていることは、伝わる情報づくりを意識すること、そして「みんな」視点で発信することです。

シティプロモーションを行う一担当として、市に対して、担当業務に対して、理解者でありファンとなることはとても大切です。自信を持って人に勧めるに当たり、自分自身がそれを詳しく知り、好きでいないと、伝える際に説得力に欠けて相手に響かないと思うからです。しかし、そこに気持ちを置き過ぎてしまうと、”伝えたい”に重きが置かれてしまい、本当に伝わる内容なのか精査する視野が欠けてしまう恐れがあります。そのため、当たり前のことではありますが、伝える相手の視点に立った伝わる情報づくりを改めて心掛けています。

併せて大切にしているのは、伝える相手を巻き込めるよう「みんな」視点で取り組むことです。担当しているブランド戦略は、市民の皆さんが声を上げることで成熟するものです。そのため、当事者意識を持ってもらうことがなによりも大切です。そこで、市が一方的に取り組んでいるものではなく「届いた先のあなたもこの対象なんだよ」ということが伝わるような発信を、個人としても市としても心掛けています。実際に、ブランドムービーが総務大臣賞を受賞した際、古河大使の皆さんからお祝いメッセージを動画でいただいたのですが、そちらも「古河市の皆さん、おめでとうございます」と市民の皆さんへ向けて発信しました。

イメージ 古河市の皆さん、おめでとうございますと市民の皆さんへ向けて発信

Q4:自治体ならではの広報の苦労する点、逆に自治体広報ならではのやりがいや可能性についてお聞かせください。

市民の皆さんから、生の声をうかがう機会をいただき、その熱量を直に感じられることは、大変貴重であり、やりがいを感じています。

同時に、受け取ったその声や熱を市民全体に伝え浸透させていくことは容易ではないことも痛感しています。

それでも、私たちの取り組みによって、誰かと何かがつながって、まちが盛り上がったり、魅力などのいいフレーズが聞こえてきたりするようになれば、大変嬉しいことです。

シティプロモーション業務は、まちの活性化の一助となれる可能性を持った業務だと認識しています。古河市の発展のために、私自身は勿論、課員一丸となり、「みんな」に伝わる情報づくり・発信ができるよう、これからも邁進していきます。

【次回のコラムの担当は?】

埼玉県熊谷市市長公室広報広聴課の富田卓弥さんです。

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イメージ バナー 宣伝会議 アドタイデイズ2024(秋)東京

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