今回は、前回に続き、HENNGEのデザインマネジメントセクションのマネージャーであり、インハウスクリエイターの先輩でもある鏡さんとの対談です。
鏡さんはHENNGEに25年以上在籍しているベテランクリエイターで、現在はデザインマネジメントセクションのマネージャーとして活躍されています。
前回は鏡さんがインハウスクリエイターになったきっかけ、クリエイターの評価などについて語っていただきました。今回も、AIとデザインの話、またHENNGEの経営においてインハウスのデザイナーがどんな役割を果たしてきたかなど、ベテランの視点から聞かせていただきました。
(左から)HENNGE デザインマネジメントセクションのマネージャー 鏡雅好さん、筆者。
デザイン組織にAIをどう組み込むか
古野:クリエイターの評価基準の話でいうと、AIをどう使いこなしていくかのスキルも必要になってくると思うんですが、AIの活用についてはどう考えていますか?
鏡:AIやテクノロジーの活用について、現時点ではAIをクリエイティブな作業にすぐ取り入れる予定はありませんが、今後の進化に注目し、適切なタイミングでの活用を検討しています。
現在のAIはまだ発展途上で、特化型AIがさまざまな分野で急速に進化しているものの、業務に取り入れるには割り切りが必要だと考えています。AIはブランディングやデザインの領域ではまだ実験的な側面が強く、現状ではHENNGE のクリエイティブ・ワークフローに完全に適合する段階には至っていないと感じています。
デザインに関しては、チーム全体で明確なイメージを持って進めており、現状ではAIよりも人との共同作業や手作業でのデザインの方が効率的であると感じています。
古野:そうですね。 AIをどう組織に組み込んでいくかは、部署に関係なく大きなテーマだと思います。
「常にアイドリングがかかった状態」がインハウスの強み
古野:ちなみに、インハウスクリエイターのいる組織だからこその強みとか、企業への貢献度みたいなことってどういうふうに考えてますか。
鏡:デザインにおいて、スピードは非常に重要です。内部のデザイナーがいることで、アウトプットの速さが圧倒的に向上します。
例えば、午前中に依頼したものが、午後には複数のデザイン案として出てくることもあり、これはお互いの理解度が高いからこそ実現できることです。
デザイナーは会社の事業内容や理念を深く理解しており、依頼者側もデザイナーの強みや弱みを把握しているため、コミュニケーションがスムーズに進みます。この相互理解が、迅速な作業進行と成果物の質の向上につながっていると感じています。
インハウスクリエイターは、いわば常にアイドリングがかかった状態なので、スピーディにスタートできることが利点だと思います。企業文化や製品の理解が既に深まっているため、プロジェクトの準備や進行がスムーズで、計画の共有がされていることから、何が来るか、どのタイミングで来るかを把握しやすい点も大きな強みです。
古野:おっしゃる通り、外部でデザイン発注を受ける場合、はじめに企業の文化や製品を理解するまでに多くの時間と労力が必要です。
一方で、内部のデザイナーは既にその企業の文化や製品について深く理解しているため、余計なステップを省き、迅速に本題に取り組むことができるのが大きな強みです。依頼者とデザイナーが共通の理解を持っていることで、プロジェクトをより迅速かつ効果的に進められるという点は、確かに大きな利点ですね。
鏡:はい。また経営陣が社員とのコミュニケーションに非常に力を入れている点も大きいと感じます。彼らは、社員との対話が重要であると強く意識しており、この姿勢が会社全体の一体感を高めていると思います。
特に、クリエイターとしてのストレスが少なく感じられるのは、経営陣がデザインやクリエイティビティに対して強い関心を持ち、直接コミュニケーションを取ってくれるからだと思います。経営陣からの直接的なフィードバックは、納得感が得られますし。