社会課題へのソリューションを提示する空港
私がポートランドへの移住を決めたひとつの理由は、リモートで日本と仕事を継続するということを決めていたこともあり、住まいから空港へのアクセスの良さでした。
ポートランド唯一の国際空港「ポートランド・インターナショナル・エアポート」へは、ダウンタウン、そして私が住む住宅街のどちらからも、車で20分ほどの距離にあります。空港からも住宅街からも30分前後の距離に、たくさんの泳げる川や湖、ハイキングトレイル、ファームがあるのもポートランドの魅力です。
そんなポートランドの玄関口、ポートランド・インターナショナル・エアポート(以下、ポートランド国際空港)が今年の8月14日に、大規模リニューアルをしました!
社会課題と企業の関係がテーマのコラムなのに、「なぜ、空港のリニューアルレポート?」と思われそうですが、このエアポートは社会課題へのさまざまなソリューションを提示していてユニークなので、紹介することにしました。
空港の様子をご案内しつつ、その背景となる物語や、社会課題に触れていきたいと思います。
オレゴンの象徴は、豊かな森林。木々に囲まれる体験からオレゴンの歴史を辿る。
ポートランドが位置するオレゴン州の特徴のひとつは面積の半分以上を占める森。森林は松などの針葉樹が中心です。オレゴンにはポートランドを見下ろすマウントフッドをはじめ、3000メートルに近い標高の山がたくさんあります。
このリノベーションのいちばんの特徴は、オレゴン近隣の山々の木だけでつくられていることでしょう。とりわけ天井は個性的なデザインとなっています。トップライトに自然光を取り入れられるよう、モジュールを組み合わせ、天窓の木々の合間からは、オレゴンの空を見上げ、光を浴びることができます。
使われたすべての木は、オレゴン近隣と書きましたが、正確には半径300マイル(482キロメートル)以内で調達しているとのこと。
日本で言うなら、東京から大阪、そんなものでしょうか。さらにその75%は持続可能な森林資源を使っています。使用木材の30%はどこの森から来たか、誰の所有物であるかをトレーサビリティできるものを使用しているそうです。
出典:https://pdxnext.com/
この中には、ネイティブアメリカン、つまりヨーロッパの人々がアメリカ大陸にやってくる前に、この地域に住んでいたみなさんが管理し、そして今も住んでいる森も含まれています。
たとえば、ワシントン州のYakamaという部族、Skokomish Indian部族、そしてオレゴン州のCoquille Indian 部族。過去に土地を強制剥奪され、近年になり、法律が施行されたことで、部族に返還された土地も多くあります。また気候変動による山火事の被害に遭いながらも植林、再建を試みている地域もあります(すべてサイトで詳しく公開されています)。
彼らが森を守っていた歴史があり、今のオレゴンがあるということを、この空港を利用し、木々を見上げるたびに思い出してほしい、というつくった人たちの想いを感じます。
これらの調達ポリシーを実現するために6年にわたる、森林保有地域との交渉が続けられたといいます。
それでは空港の中をざっと紹介します。