動きのない欧州のマーケット
──児島さんがフランスに行くことになったのは、どんな背景があったからですか。
日本のコンビニやスーパーは棚がきれいに清掃されて、ちゃんと照明が当たっているのが当たり前ですよね。いわば、ベストなステージに商品が置かれています。それに、新商品が出るサイクルがとても早い。コンビニに行けば、毎週新しい食品や飲料が出ています。すごく楽しいエンターテインメントになっているんです。日本にいるとなかなか気づけないんですけどね。
一方、私がいるフランスのスーパーは、多少陳列が乱れていても、誰も気にしません。生活のなかで、食品や日用品が主役にならないんです。暮らしになじんだ昔ながらのものが売られ、買われていく。フランスらしい尊い文化なのですが、日本人の感覚からすると、「マーケットが動きづらい」とも言えます。
サントリーは今、このマーケットを動かすことにチャレンジしています。フランス、イギリス、スペインをはじめ、欧州各国ですでに販売している商品を磨き、同時に、新たな商品を生み出すことに挑戦して、サントリーのグローバルでの存在感を高めたいと考えているんです。
Suntory Beverage and Food Europe Design Head 児島薫さん
──そこに、児島さんの役割があるのですね。
はい。日本のサントリーの商品企画・開発のノウハウを伝えることが、私の最初の役割です。数年前から、本社からマーケターやデザイナーが出向し、商品開発のプロセスを共有してきました。今は、ヨーロッパにおけるデザインの役割の最適解を模索しているところです。
出向する社員に私が選ばれたのは、英語が話せるから、という理由もあったと思います。アメリカの大学を出ていて、ニューヨークのクリエイティブブティックで働いた経験も買われたのかもしれません。
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