※本稿は『広報会議』2024年10月号の内容をダイジェストでお届けします。
「男性従業員の育休取得率」「男女の賃金格差」など、人的資本経営に関連したトピックは社会的に関心が高く、求職者が企業を選ぶ上でも目が行くポイントです。2023年、有価証券報告書での人的資本の情報開示が義務化されたことを受け、例えば「男性育休取得率がどれだけ変化したのか」「どのような取り組みが取得率向上に寄与したのか」といった内容は、一般メディアも取り上げやすい話題です。
人事制度に企業らしさを
従業員の状況、働き方に関しては、社内の制度を上手にアピールしている企業があります。例えば、2025年から段階的に施行される育児・介護休業法の改正に対応した制度として、子どもの学校行事への参加や家族の受診時の付き添いに休暇を利用できたりする制度を発表した企業もありました。
法改正のタイミングと合わせて発信すれば、社内の制度であってもメディアが取り上げやすくなります。また制度名に工夫があり企業らしさが表れていると、情報の受け手の記憶に残りやすくなります。
これまで働く人を支援する制度というと、「働くお母さんをサポート」という文脈のものが多くありました。ところが最近は「家族のためのサポート」という表現を意識的に使っている企業が出てきています。子育て中の働くお父さんや、家族を介護している人など、多様な立場にいる人たちをサポートするようになっているということです。
例えば「学童問題」や「小1の壁」など、共働き家庭が直面する課題に寄り添った制度を整えることで、従業員が安心して働けるようにする。介護休暇など家族に対するケアがあることで、従業員が長く働けるイメージを持ちやすくする。こうした時代に合った制度を、企業らしさが感じられるネーミングでメディアや求職者にアピールできれば、人材の安定的な確保と企業成長が見込めるのではないでしょうか。
新たな人事制度というのは、見方を変えれば、これまでの働き方に課題があったから導入した制度、ともいえます。
求職者はさまざまな経路で企業の情報を入手しており、どの企業も、きらびやかな部分だけではなく、取り組むべき課題があることを理解しています。それゆえに、少しでも従業員に寄り添った取り組みを考案し、法改正に紐づいた労働環境を整備する姿勢は、企業への信頼感につながります。
ネガからポジヘ意識変化
少子高齢化による人材不足が社会問題になっている中、企業側の動きとして元従業員を積極的に採用する「アルムナイ採用」が広まっています。
かつては元従業員が同じ企業に再び雇用される「出戻り」には、ネガティブなイメージがあったように思います。しかし今は、人材の流動性が高まり他社で経験を積んだ元従業員の採用は、新しい視点やスキルを取り入れる機会と捉えられるようになっています。再雇用される元従業員も既知の職場環境には適応しやすいため、即戦力として力を発揮しやすいメリットもあります。
企業と従業員どちらにもメリットを見出したアルムナイ採用に関して、メディアでの露出も多く見られています。
テレワークからオフィスへの出社に切り替える「オフィス回帰」も、時代の変化が浮き彫りになりやすい切り口。
従業員は柔軟な働き方を求めて「ハイブリッドワーク」を好むケースが多くあります。対して企業側は、企業文化の維持や対面コミュニケーションの重要性の観点から、出社のメリットを打ち出してきています。仕事に集中できる個人ブースを設置したり、従業員同士の交流を深めるイベントや、気軽に参加できるスキルアップのための勉強会を開催したりと、リアルなオフィスで働くことの体験価値を打ち出し、ポジティブに捉えられるような試みがなされています。
働きやすいオフィスに改装し、内覧会にメディアを誘致している企業もあります。社内の出来事を、社会的な関心事項へと変換できる点を見つけていくと、拡散力のある情報になります。
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