8月14日にリニューアルした、オレゴン州のポートランド国際空港。オープンしてすぐ、フライトをするわけでもないのに子どもたちと空港まで見学に行ってきました。前回に続き、現地の様子をレポートしていきたいと思います。
前回のコラムではオレゴン近隣の山々の木だけで構築された空間、そのための調達ポリシーなどが明らかにされていること、ポートランドの街中のような居心地の良さなどを綴りました。
後半ではさらに空港がどんなふうに社会課題を考慮しながらリノベーションされたのか、随所にみられるPR戦略のこだわりも交えて考えてみたいと思います。
ローカルと多様性への尊重をパートナー選びで示す
この空港の設計を担当したのは、ポートランドの ZGF Architectsという建築事務所です。それ以外にも、参加した事業者リストが公開されていますが、できる限り、ローカルの事業者が採用されています。
またこの空港だけで、ポートランドやオレゴンのブランドにたくさん出会うことができます。ペンデルトンやブルースタードーナツ、パウエルブックスなど、有名店はもちろんですが、新しいブランドもたくさん!
このショップの運営委託の選定にあたっては、50%以上は女性や人種的マイノリティのオーナーの店を選んだとのこと。
木材をネイティブアメリカンの森から調達したことも、その地域の経済的利益につながるわけですが、この運営を委託しているショップのセレクトも、マイノリティのみなさんにお金を稼いでもらおう!という意思を強く示しています。
数字で見るリノベーション
このリノベーションが、さまざまな社会課題へのソリューションを提示しているように思うと、前回書きましたが、社会課題に対して、この空港がリノベーションで実現したことを数字とともに紹介したいと思います。
まずとてもわかりやすいところでカーボンフットプリントの70%削減に成功したと計算されているそうです。前回に紹介した近隣から木材を活用する取り組みだけではなく、それ以外の素材もできるだけローカルから調達し、輸送時のカーボン発生を抑えることで実現しています。
また、リノベーションの前と比べて、1平方あたりのエネルギー使用量を半分に削減。さらに、冷暖房においては地熱発電を利用することで、化石燃料の使用を95%削減という数字が公開されています。
さらにオレゴンを含む西海岸も大きな地震の可能性があると言われており、マグニチュード9の地震への耐久性がある設計になっているそうです。
空港内の60%のエリアで自然光を浴びることができるという数字も公開されています。
ざっと見ても、二酸化炭素の排出などの温暖化の課題、マイノリティなどの多様性の課題、災害対策の課題など、さまざまな問題をよく考えててつくられたエアポートであるなぁと、一市民が偉そうではありますが、感心しつつ、このまちに住んでいてよかったなと思う公共工事ではありました。