ある真夜中、元ジブリの映画プロデューサー・石井朋彦さんから、こんなLINEを頂いた。
「この本のテーマであるステートメントは、映画の企画書そのもの。高畑(勲)さんも宮﨑(駿)さんも、映画を作る前に演出覚書という名のステートメントを書いていた。この本がその内容にリンクしていてビックリしました」
唐突につぶやいた、僕の読書感想文をきっかけに、手に取ってくださったらしい。
広告な本の中で、ベストオブベストやった。
コピーライターに限らず、言葉を使って何かを生み出す人(つまり、ありとあらゆる企画職)必読の一冊。… pic.twitter.com/VGjJLoL8pA— 工藤拓真|BrandingDirector (@TakumaKudo) 2024年8月5日
嬉しかったとともに、確信した。この本の射程範囲は、広告業界にとどまらない。どんな企画も、どんな仕事も、僕らは、話し言葉や書き言葉を駆使して、練り上げざるを得ない。であるならば、何かを考えて、何かをつくるすべての人に、この本は読まれるべきなんだ。
先のツイートに、他にも幾ばくかご反応いただいたようで、宣伝会議さんに突如ご連絡いただき、いま僕はここにいる(コピーライターでもない人間が、大先輩のコピーライターのつむいだ文章を公開書評するなど、拷問でしかない。胃が痛い。いっそのこと、〆切、早く来い)。
オカキンさんこと岡本欣也さんとは、長い付き合いではない。1年どころか、半年に満たない。お会いして、2回目のミーティングだった。繰り出される言葉、とくにボディコピーに惹かれた。言葉そのものはもちろん、なぜそんな文章になったのか?についての対話に、強く惹かれた。「この人からは、ごっそり何かを盗まないといけない」という、勝手な使命感?焦燥感?に駆られた。
調べてみると、ご著書に『ステートメント宣言。』というタイトルが。
やっぱり!そうよ!あなたのソコが知りたかったのよ!もちろん即ポチリした。「さあ、テクニックの数々、盗ませていただきますぞ!」ニタニタと到着を待った。
翌日。届くやいなや、アッという間に、読み干した。直後、はからずも、放心してしまった…なぜか?
読後感が、ビジネス書のソレ、ハウツー本のソレとは、まったく違ったからだ。かと言って、単なる雑談エッセイ集では、もちろんない。確実に身になるソレは、多数ある。「ステートメントは手紙である」「ひらがなには、力がある」「正直は、美しい」「つくるな。見つけろ」「震えながら、胸を張れ」「言葉を送ることは、自分を送ること」などなど。挙げるとキリが無い。
でも、ソレらを超える何かが大きすぎて、読み終えた僕らは、気持ちよく、清々しく、裏切られる。この本は、ステートメントという題材を解説するフリをして(いや確かに語ってはいるんですけどね)、もっともっと、人間として、仕事として、大事な真実をえぐり取る物語を、超絶圧縮濃度で封じこめた、文学作品だった。
もっといい仕事がしたいと願う、あらゆる職種の方々の手に届きますように。どんな物語だったのかは、ぜひ、ご自身の目と心で、確かめていただきたい。
(ヒントは、もはや広告業界でも絶滅危惧種の「師弟関係」という4文字です)
※工藤拓真さんがパーソナリティを務めるVoicyの「【本音茶会】じっくりブランディング学」に、9月9日から岡本欣也さんがゲストとして3回出演、本書にまつわるコピーやステートメントの話をしています。こちらの記事と併せて、ぜひ聴いてみてください。
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