充実した人的サポートと行動履歴データ活用で競合との差別化図る
リード(見込み客)の獲得から成約まで、BtoB企業が抱える課題を解決するため、イノベーター・ジャパン(東京・港)は9月、BtoB向けオウンドメディアプラットフォーム「BizArena(ビザリナ)」を正式リリースした。商用メディアで実績のある自社開発のCMSを基盤としており、リード獲得機能を備えたオウンドメディアを最短1週間で構築できる。読者の行動履歴をAIで解析することで成約率を高めるための具体的なリストを提供でき、営業活動の効率化につながる。
BtoB向けオウンドメディアプラットフォーム「BizArena(ビザリナ)」
新規リードの獲得に苦戦しているBtoB企業は多い。従来は業界ごとの展示会が多数開催され、対面での名刺交換が主要なリード獲得手段として機能していたが、コロナ禍を機に展示会が減少。コロナ収束後もコスト面から出展を控える企業が増えている。ウェビナーにおいても継続的なコミュニケーションにつながらず、新規リードの安定的な獲得に至っていないケースが多い。
米国の調査会社「Corporate Executive Board Company(CEB社)」が2012年に行った調査によると、営業と初めて接触する時点で、購買プロセスの57%が完了しているとのデータもある 。インターネットで事前に情報収集することが当たり前になり、その時点で質の高いコンテンツを提供できなければ、商談にたどり着くことも難しい状況だ。そこで、リード獲得手段として注目されているのがオウンドメディアだ。
オウンドメディアにはコンテンツにアクセス制限を設ける「ペイウォール」機能によって会員登録を促し、顧客との継続的な接点を作るために利用される。読者の行動履歴を分析し、顧客の興味関心がテーマを把握することで、リード獲得と育成を効率化することも可能。従来は他社のサードパーティーデータを活用するケースが多かったが、昨今の規制強化の情勢もあり、自社のファーストパーティーデータを活用するための基盤が求められている。
オウンドメディア開設の課題を解決する「ビザリナ」
高単価で成約までの検討期間が長い商品を扱うメーカーやITソリューションのほか、顧客への啓発が必要な専門性の高い分野など、オウンドメディアを生かしやすい業種は多い。一方、オウンドメディアの構築や運用にかかるコストが課題となっており、同社は「全ての企業が手軽にオウンドメディアを開設できるようにする『SaaS』を提供したい」という発想から、「ビザリナ」の開発に着手した。
イノベーター・ジャパンの渡辺順也社長
ビザリナの企画が始動したのは昨年の始めごろ。同社の出版事業者向けのデジタルメディアソリューション「MediaDX」の仕組みをBtoB企業向けのプラットフォームに転用する構想が以前からあったため、ビザリナの基本的な開発は昨年度末には完了していたという。読者が横断的に様々なメディアを閲覧することができるメリットを重視し、プラットフォーム上で運用する手法を採用した。
オウンドメディアを自前で開設する企業は増えている一方、「読まれるコンテンツを作れない」「集客方法が分からない」といった悩みを抱えている場合も多い。そこで、同社の編集チームがコンテンツ制作を担う受託サービスも実施。これにより、社内リソースに依存することなく、継続的なコンテンツ発信が可能になる。編集チームは「MediaDX」で培ったノウハウを生かし、企業が扱う分野や読者層に適したコンテンツ作りを行う。
ビザリナを可能な限りシンプルな価格体系にしたいという考えから、一定のコンテンツ制作は基本料金に含まれている。一定以上の記事制作を委託可能になる追加オプションも検討中。料金はコンテンツの内容や業界ごとに異なるとのことだ。
オウンドメディアへの集客や獲得したリードへの継続的なコミュニケーションも支援し、メルマガの作り方やSNS戦略なども同社が受託するという。SNS連携においては、有力なインフルエンサーに発信してもらうなど、社外リソースの活用も検討している。
大切なのはリードの「ナーチャリング」
これらの充実した人的サポートは、競合のプラットフォームとの差別化も意識している。「MediaDX」など既存サービスで蓄積してきたノウハウを、独自の強みとして生かしたい考えだ。デジタルマーケティング人材の不足を業務委託で支援するサービス「デジマDELI」など、同社のほかのサービスとの組み合わせも必要に応じて行うとしている。
情報を提示するダッシュボードのイメージ
リード獲得につながるオウンドメディアの特長について、渡辺順也社長は「顧客が求めているコンテンツをどれだけ作れるかが重要」と話す。一方、「ビザリナ」が重要視しているのは、リードの「ナーチャリング」(購買意欲の向上)だという。オウンドメディアが蓄積した顧客データを基に、成約につながる情報をリスト化し、効果的なマーケティングを実現したい考え。今後、リスト化した情報を提示するダッシュボードの利便性向上に努めるとしている。
従来のリアル会場での展示会と比較し、渡辺社長はオウンドメディアを「24時間365日開催できる展示ブース」と例えた。多くの顧客が「ビザリナ」でオウンドメディアを展開することで「日本最大のビジネス展示会を24時間365日、オンライン上で開催したい」と意気込みを語った。
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