パブリックセーフティにCSV、フェーズフリーに共通すること
NECでTOKYO2020オリンピック・パラリンピックを担当していた際、IOCから“パブリックセーフティ(PublicSafety)”というカテゴリーを顔認証と共に獲得しました。これは安全安心なまちづくりを推進、普及することを目指したマーケティングコミュニエーションの一例であり、結果としてパブリックセーフティという言葉はグローバルなITベンダーや同業他社も活用し、日本でも多くの方がスマホを通じて顔認証が日常化された現在を鑑みると少しは寄与したのかな、と思います。
本コラムで取り上げている“フェーズフリー(PhaseFree)”は新しい概念・造語ですが、CSVと似た特徴があります。「CSV」とは、Creating Shared Valueの略語で、「共通価値の創造」などと訳されます。2011年にハーバードビジネススクールの教授であるマイケル・E・ポーター氏が発表した論文で提唱されました。
社会課題をイノベーションによって解決することで競争力を高め、企業価値の向上を実現する。この好循環を作ることで、持続的な社会と経済の成長を両立して追求できると説いており、2012年に復興庁で立ち上げた地域復興マッチング事業「結の場」の企業向け口説き文句としてCSVを採用させて頂きました。その結果、1年強で160社に参画いただきました。
ただし、CSVという概念が一般に浸透・普及しているかというとそうではありません。
いろいろな企業経営に視点として取り入れられていますが、市場性や企業ブランド価値などのマーケティング要素がまだ足りない(見いだせていない企業が多い)ためコミュニケーションとして積極的に活用されていないことが要因だと考えます。
フェーズフリーも状況は似ています。
一部の企業や自治体での取組みは始まっており、フェーズフリー協会には日々多くの問い合わせがあり関心の高まりや認知向上を実感しているのですが、一方で日々の生活において「フェーズフリーという言葉を始めて聴いた」という反応も多くあります。
実際にフェーズフリーに関する取組みを行っている大企業や自治体の中の人が知らなかった…という事例も1つや2つではなく、普及・浸透の難しさを痛感しています。
どうすれば、どんなときでも安心して暮らせる社会づくりに向けて、フェーズフリーな取り組みを拡げていくことができるのか。次回は、改めていま出来ることを考えてみたいと思います。