マイナースポーツの生き残り戦略―160もの「社会課題」を解決する!

写真 湘南ベルマーレフットサルクラブ

提供:湘南ベルマーレフットサルクラブ

「支援を受けるだけでなく、支援する立場でもありたい」――これは私が常々抱いている思いです。

湘南ベルマーレフットサルクラブは、これまで多くの地域の皆様や企業の支援に支えられてきました。しかし、ただ支援を受けるだけの存在であって良いのだろうかという疑問が、常に心にありました。地域社会に根付くためには、私たち自身が地域に対して具体的な貢献を果たすべきだと感じたのです。

そこで、私は「社会課題解決プロジェクトを5年かけて160立ち上げる」という目標を掲げました。

写真 2022年5月に発表した事業戦略の様子
グラフ スポーツを通じて、機会をつくりチカラを引き出す

2022年5月に発表した事業戦略では、5年かけて160の社会課題解決プロジェクトの実行を掲げている(提供:湘南ベルマーレフットサルクラブ)。

この目標には、地域社会に対して真に役立つ存在でありたいという強い思いが込められています。地域の課題を見つけ出し、それを解決するためのプロジェクトを次々と立ち上げることで、クラブが地域に欠かせない存在として機能することを目指しています。

メジャースポーツの縮小版ではいけない

湘南ベルマーレフットサルクラブは、フットサルというマイナースポーツを扱う団体です。

メジャースポーツと比べ、競技の注目度やファンの数では劣りますが、それをそのまま受け入れてしまっては、私たちの存在意義が薄れてしまいます。そこで、私は「メジャースポーツの縮小版ではなく、もっとエッジを立たせた存在」でなければならないと考えました。

表 中長期プレビジョン(各KPI目標)

事業戦略では競技における結果や事業規模の目標だけでなく、「社会性」を表す指標を設けている(提供:湘南ベルマーレフットサルクラブ)。

競技成績の追求と同じ優先度、リソースの掛け方で社会課題に取り組むことを公言し約束しました。エッジを立たせ、他のスポーツ団体とは違う独自の取り組みを行うことで、地域にとって不可欠な存在だと思われる理由を明確にしていきました。

農業と福祉、スポーツを融合「ベルファーム」事業

グラフィック ベルファーム

私たちが立ち上げたプロジェクトの中でも、特に新たな気づきを与えてくれたのが「ベルファーム」という事業です。

クラブパートナーである社会福祉法人一燈会は、農業の担い手不足と障がい者の雇用機会創出を目的とし、障がい者の就労支援事業として農業に取り組んでいました。

ある時、一燈会の理事長にこの事業の最終目標をお聞きしたところ、「障がいを持つ方が納税すること」だと教えていただきました。

写真 人物 集合

福祉というと、救済や施しのイメージを持っていた私にとって、自立し、社会で活躍する目標を持つこのプロジェクトに大きな衝撃を受けました。そして、クラブとして何か関与できる方法を探りたいと思うようになったのです。

給与水準を上げ納税を実現させるためには商品やサービスをしっかりと経済に乗せることが必須だと思い、まず私たちは、採れた野菜を選手たちがラッピングし、ブロマイド写真を添えて試合会場で販売する取り組みを始めました。少し割高な価格でも、ファンやサポーターが進んで購入してくださり、農業の経済的な流通に少しでも貢献できました。

写真 選手と障がいのある方が一体となって行う農作業や、選手のブロマイド写真を添えて試合会場で販売

左上:選手と障がいのある方が一体となって行う農作業。左下:選手のブロマイド写真を添えて試合会場で販売。提供:湘南ベルマーレフットサルクラブ

そしてこの取り組みから、思いがけないシナジーが生まれました。ファンやサポーターが、購入した野菜で作った料理のレシピをSNSに投稿し、それを見た障がいを持つ方やそのご家族が、とても喜んでくれたのです。

自分たちが取り組んだ仕事が、人々を喜ばせ、その結果として労働意欲を高めるというのは、誰しもが持つ感情ではないでしょうか。さらに、この農業と福祉、スポーツの融合プロジェクトは広がりを見せ、飲食系パートナー企業が食材として仕入れるようになり、行政の推薦で道の駅での販路拡大にもつながりました。

加えて、クラブの育成カテゴリーでフットサルを練習している子どもたちも、食育の一環として耕作放棄地を耕し、野菜の収穫量を増やす取り組みに参加するようになりました。

こうして、スポーツが持つ「巻き込む力」、そして「明るいイメージで発信する力」を改めて実感することになったのです。

現在、この「ベルファーム」をモデルにした農業×福祉×スポーツのビジネスフレームを「神奈川モデル」として推進しており、一燈会や県との包括連携を締結し、さらに拡大を図っています。

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佐藤伸也(湘南ベルマーレフットサルクラブ 代表取締役社長)
佐藤伸也(湘南ベルマーレフットサルクラブ 代表取締役社長)

1977年神奈川県藤沢市生まれ。2007年フットサル施設の運営会社起業と同時に、湘南ベルマーレフットサルクラブのGMに就任し、Fリーグ開幕初年度を迎える。2022年4月より同社代表取締役社長。スポーツ庁主催イノベーションリーグ大賞受賞。小田原市など8自治体との包括連携協定を締結しゼブラ事業を推進する。

佐藤伸也(湘南ベルマーレフットサルクラブ 代表取締役社長)

1977年神奈川県藤沢市生まれ。2007年フットサル施設の運営会社起業と同時に、湘南ベルマーレフットサルクラブのGMに就任し、Fリーグ開幕初年度を迎える。2022年4月より同社代表取締役社長。スポーツ庁主催イノベーションリーグ大賞受賞。小田原市など8自治体との包括連携協定を締結しゼブラ事業を推進する。

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