プロジェクト事例:児童養護施設との地域連携
二つ目の事例は、児童養護施設との地域連携です。このプロジェクトのきっかけは、クラブ活動に参加していたインターン生が、活動エリア内にある児童養護施設でアルバイトをしていたことを知ったことでした。私はその施設に何かお困りごとはないかと尋ねたところ、“洋服が足りない”という声をもらいました。
施設では限られた予算内で衣服代を賄わなければならず、古着の寄付を受ける文化がありました。しかし、当時はコロナ禍で寄付された洋服の使い回しが感染リスクを伴うため、ストップせざるを得なかったとのこと。
そしてもうひとつのリクエストは、古着ではなく新品の洋服が欲しいというものでした。
私はフットサルなどのアパレルブランド「goleador(ゴレアドール)」を扱うアルフィー社に相談し、廃棄予定だった新品のウェアを提供してもらうことに繋がりました。
施設の子どもたちへ、新品の衣類を進呈。提供:湘南ベルマーレフットサルクラブ
廃棄予定だというところにも着目し、ただの寄付にとどまらず、児童養護施設がメーカーにとって環境配慮のきっかけとなるように仕組みを整えました。こうして、新品の洋服が子どもたちに届き、子どもたちは大変喜んでくれました。
しかし、ここで施設長から別の課題を教えていただきました。それは「地域との分断」という問題でした。「物資をもらうことも嬉しいが、それ以上に、地域とのつながりを持つことが大切だ。特別扱いされるのではなく、地域に溶け込みたい」という希望を持っていたのです。
そこで、私たちは様々な業種のパートナーと共に、継続的な関わりを大切にする訪問活動を開始しました。お菓子を持参したり、子どもたちとお絵描きをし、オリジナルのペットボトルを作ったり、試合観戦の機会を提供したりと、地域とのつながりを深める活動を続けています。
選手から子どもたちへプレゼント。
提供:湘南ベルマーレフットサルクラブ
そこには入れ代わり立ち代わり、私たちのパートナー企業が個性を活かし関係の輪に入ってきています。この取り組みが、地域全体の関係性を強化し、真の絆を生み出すきっかけとなっていると思います。
スポンサー、サプライヤーの協力を得て実現した。
提供:湘南ベルマーレフットサルクラブ
経済成長と共創の可能性
パートナーとの連携スキーム。
提供:湘南ベルマーレフットサルクラブ
一つ目の例(ベルファーム事業)として、私たちがパートナーの既存事業に加わることで生まれたシナジーがあります。
スポーツチームとしての「巻き込む力」を最大限に活用し、他の業界や事業に新たな視点や価値を提供できることを実感しました。これにより、私たちの活動は単なるスポーツの枠を超え、他分野との相乗効果を生み出す力を持つことが明らかにできました。
二つ目の例(児童養護施設との地域連携)で私たちが構築したのは、ひとつのフレームに対して複数のパートナーが次々と関与し、関係性を深化させていくスキームです。
この仕組みは、単発的な協力関係に留まらず、継続的に支え合いながら、多くの企業や組織が地域課題解決に取り組む機会を得るプラットフォームとなっています。
西湘地域の8つの自治体、神奈川県と包括連携協定を締結。
提供:湘南ベルマーレフットサルクラブ
こうした取り組みを重ねる中で、私たちの姿勢に共感してくれた8つの自治体(小田原市・南足柄市・秦野市・中井町・大井町・松田町・山北町・開成町)と神奈川県が、包括連携協定を締結してくれるようになりました。これにより、地域全体での新たな課題解決の可能性が広がっています。
160の課題解決事業を実現するためには、領域を飛び越え、共創を意識することが重要であると学びました。この視点がこの先、CSRや奉仕活動とは一線を画し、経済成長の可能性を秘めたビジネスモデルの発見へとつながっていったのです。