思いがけない「人事」への異動が自分の市場価値を高めてくれた

人生で初めて無職を経験

――それで、念願の商品企画に異動したわけですね。

でも、パンへの思いが強すぎたのか、アイデアはなかなか採用されませんでした。理想とかけ離れた現実に苦しむなかで、夢にまで見た商品企画という仕事への情熱が段々としぼんでいくのがわかりました。

同時に、人事のときのやりがいを思い出すようになりました。採用活動で関わった学生に「深尾さんと出会って自分のキャリアを描けるようになった」と言われるほど、誰かの人生に影響を与えられる仕事だったなと。ただ、いまさら人事に戻りたいなんて、あまりに都合の良すぎる話で、言い出せるはずもありません。それで、自分なりの筋を通す意味でも、食品メーカーを退職し、改めて人事の世界で生きる決意をしました。

2007年に機器メーカーに入社し、採用や教育を担当しました。エンゲージメントの低い事業部での組織活性化を命ぜられ、当時まだ珍しかった事業部人事として組織の立て直しに取り掛かりました。

最初は「本社のスパイだ!」と、現場からすごい反発に遭いました(笑)。そこで、積極的なコミュニケーションで仲間を増やすことを最優先。徐々に自分を理解してくれる仲間も増え、事業部のビジョンやミッションをみんなでつくり上げるほど、一体感が醸成され活気のある組織に変わっていきました。

ところがある時、会社全体が統廃合されることになり、私自身もリストラ対象になりました。転職活動を始めましたが、当時は雇用環境も良くなかったこともあり、なかなか再就職先も見つからず、ついに人生で初めて無職になりました。

40歳を過ぎて、広報で新たな挑戦

――予期せぬリストラ、それでも再び人事の世界へ?

あるIT企業が、そんな私を受け入れてくれたんです。社長直轄で、当時300人だった会社を1000人規模にするのが私のミッションでもありました。人事だけでなく経営の視点を身に付けたくて、MBAを取得したのもこの時期です。

大学院で学ぶうち、日本の産業の停滞に危機感を持つように。中でも自動車産業は、EV化の中で100年に一度の変革期を迎えています。そこで私もチャレンジしたいと思い、2019年に日本特殊陶業へ転職しました。

採用責任者として入社し、まずは、学生向けの発信を強化しました。2年ほど取り組むうち、地元の東海圏以外での認知度の低さという課題に直面しました。採用広報だけでは認知度向上には限界がある、広報部門の強化が必要だと会社に伝えたところ、その1カ月後、広報部門への異動の辞令が出て、人生初の広報部門に異動しました。

異動後に着手したのは、学生層や若手社会人層向けのプロモーションです。デジタル広報の強化、サッカーワールドカップに合わせたテレビCMの出稿、NewsPicksの番組制作などを行いました。1年後には、企業認知度が35%から47%に伸長。その後、グローバル広報の強化にも取り組んでいます。

写真 人物 荒川直哉氏

正直、40歳を過ぎて新しい職種に就くことには、不安や迷いがありました。そんな自分の背中を押したのは、無職になった経験です。市場価値がなければ必要とされないのは、自分も企業も同じ。世の中から求められて初めて存続できる。自分自身も企業も組織もその価値を磨いて発信し、皆さんに知ってもらえる努力を続けていきたいです。

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荒川 直哉(マスメディアン 取締役 国家資格キャリアコンサルタント)
荒川 直哉(マスメディアン 取締役 国家資格キャリアコンサルタント)

マーケティング・クリエイティブ職専門のキャリアコンサルタント。累計4000名を超える方の転職を支援する一方で、大手事業会社や広告会社、広告制作会社、IT企業、コンサル企業への採用コンサルティングを行う。転職希望者と採用企業の両方の動向を把握しているエキスパートとして、キャリアコンサルティング部門の責任者を務める。「転職者の親身になる」がモットー。

荒川 直哉(マスメディアン 取締役 国家資格キャリアコンサルタント)

マーケティング・クリエイティブ職専門のキャリアコンサルタント。累計4000名を超える方の転職を支援する一方で、大手事業会社や広告会社、広告制作会社、IT企業、コンサル企業への採用コンサルティングを行う。転職希望者と採用企業の両方の動向を把握しているエキスパートとして、キャリアコンサルティング部門の責任者を務める。「転職者の親身になる」がモットー。

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