成長拡大を目指すBtoB企業にオウンドメディアが必要な理由

BtoBにおけるオウンドメディアの戦略的活用

マーケティングファネルにおけるオウンドメディアの位置づけは以下のようになります。

※顧客が商品やサービスを購入するまでの行動をフェーズ分けし図式化したもの(ここではカスタマーサクセスまでを表現)

ファネルの最上位(入口)に位置し、言わばユーザーからみた「顔」になります。
ですが中身はBtoCとBtoBで大きく異なります。
比較してみましょう。

重要ポイント BtoC BtoB
1 重要事項 消費(満足/欲求) 課題解決
2 ビジネス 少額短期 高額長期
3 ターゲッティング 大量集客→絞り込み 狙った業種/業態→取りに行く
4 コンテンツ志向 感情にも訴える 合理性を重視
(安さ、見た目、評判) (専門性、実績、技術力)
5 購買チャネル ECサイト、実店舗(販売員) 法人営業(インサイド営業含む)

一般的にBtoBオウンドメディアを立ち上げている業種を見てみるとコンサルティングファームや、不動産、IT関連、製造業(大手機械)、人材といったところが多いです。
これらの業種はいずれも高単価で長期、個別、複合といったビジネス特性があり、時間を使って丁寧にさまざまな要素を共感できる相手に訴求することが求められますのでオウンドメディアを立ちあげているのは当然かもしれません。
このようにみていくとBtoBオウンドメディアは…
「戦略的な狙いを中長期的に達成していくための装置」ということになります。

BtoBで立ち上げている企業の個別目的を見てみても、以下に集約されています。

  • 企業認知度の向上
  • 新ブランド立上/ブランドシフト(旧ブランドの払拭)
  • 共感できる顧客やビジネスパートナーの探客
  • 重要顧客とのエンゲージメント構築

それでは国内のBtoBオウンドメディア事例をみてみましょう。

国内におけるBtoBオウンドメディアの事例紹介

取り上げるのは目的が異なり、それに従って仕組みも異なる国内IT企業2社をご紹介します。

1.サイボウズ

オフィス業務支援プラットフォーム「Kintone」、「サイボウズOffice」などを提供しています。
「チームワークあふれる社会の創造」を理念とし、働き方・生き方・会社・組織・家庭など現役世代を取り巻くテーマ設定をした「サイボウズ式」というメッセージでオウンドメディアを立ち上げています。
コンセプトは「新しい価値を生み出すチームのメディア」で会社の認知度向上と企業ブランディングが主な目的です。

<特徴>

  • 自社PRはほとんど行わない
  • PVなどのKPIは設定せず有益なコンテンツの提供にこだわっている
  • レスポンシヴでスマホにも対応
  • 問い合わせフォームや他リンクへなどの導線は作らずサイト完結型(自己完結型)

ビジネス色を出さずにユーザーへの寄り添い重視で企業価値を高めています。
10年以上前に立ち上げ、今では月間20万PVを超えるものとなっています。

サイボウズ式

2.リコージャパン

複写機販売からデジタルサービスプロバイダーへの脱却を目指しブランドシフトを急いでいます。
現在の主要オウンドメディアとしては「働き方改革ラボ」(現在は公式HPに吸収)、「中小企業応援サイト」です。
働く現場に密着した情報発信を行っており、特に問い合わせをスムーズにするためチャットボットやメール、公式HPやセミナーへのリンクなどすぐに顧客の困りごとや悩みをエスカレーションできるようになっています。

<特徴>

  • 業種別や困りごと別豊富なコンテンツ
  • 事例が多くよりリアルな共感を得られる
  • 集客はリスティング広告やりターゲッティング、オーガニック検索や営業紹介など
  • 素早くオーディエンスから法人紐づけを行い、営業への連携を可能にしている(営業施策連携型)

ユーザーが共感できるコンテンツを揃え、そこからの気付で直ぐに相談できる流れを作っている。
「どこよりも早くお客様のお役立ちができる」を目指している。
営業全体の仕組みとして運営されており、経済産業省が毎年行っているIT導入補助金での申請・採択件数は支援業者として業界TOPクラスを誇っています。

働き方改革ラボ
中小企業応援サイト

まとめ

このようにメーカー色を払拭したものからより即応力で個社課題を支援するものまでその目的は様々です。
ですが、共通するのはどのオウンドメディアもユーザー目線で豊富なコンテンツを発信しており、その中で自社の企業の理念や社会貢献の考え方、お客様への思いなどを表現しています。
オウンドメディアは共感していただけるユーザーを発見し、ユーザーの成長と学びを支援し、長いお付き合いを目指すことを可能にする重要メディアなのです。

次回コラムではこのようなオウンドメディアを実現する際の重要事項やつまずきポイントなどを見ていきましょう。

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羽賀芳昭氏

フリーランス(マーケティングコンサルタント)

1982年大学卒業後三菱系ソフトウエア開発に従事、その後IBMオフコンのフィールドSEを経験、東京本社大手を中心としてさまざまな業種へ個別システムを開発・納入。リコーに移籍しテクニカルSEとして重大障害対応、問題判別など企業レベルのインシデントに対応。そこで得た利害関係者間の調整手法や企業経営レベルでの法務ノウハウ、テクノロジーによる課題解決手法などを生かし、事業戦略や計画、商品企画などを行いリコーのソリューション事業の基礎固めを行った。近年ではIT小会社の黒字化や訪問営業販売からの脱却を目指した全社デジタルマーケティング立上やインサイドSA体制構築など企画・推進。更なる改革を目指してSFA/CRM導入など社内テーマを担当。現在はフリーランスとして企業のデジタル戦略やそれを推進する組織づくりやIT基盤などのコンサルティングを行っている。

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