節水の必要性を訴えるべく、花王が公開した14の「せつない水の物語」

「もったいな~インタビュー!」というシソンヌ 長谷川さんの掛け声でおなじみのCMは、2022年にスタートした花王の企業広告キャンペーン「もったいないを、ほっとけない。」シリーズだ。Tシャツ、ごみ箱、電球など日常のさまざまなものに「もったいないことがありますか?」とインタビューするストーリーで、現在までに9本のCMが制作されている。今年7月からは「もったいなインタビュー 排水口さん篇」がオンエア中だ。

花王「もったいなインタビュー 排水口さん篇」

「花王はサステナブルという言葉が世の中で使われるずっと前から、環境に配慮した技術や製品を研究、開発しています。その根底にあるのは『もったいない』と思ったことを改善する思想。そんな数々の取り組みを紹介するのが『もったいないを、ほっとけない。』のシリーズです」と、電通 クリエイティブディレクター・CMプランナー 鈴木晋太郎氏。

これまでは主にムービーを中心に、日常のさまざまなものにインタビューするというフレームで、暮らしの中の「もったいない」を「ほっとけない」花王の様々な取り組みを伝えてきたが、今年は「排水口さん」を主人公に水やお湯を節水することがCO2の削減につながることを訴求している。

そんな「もったいないを、ほっとけない。」シリーズが8月末からWebサイトとインスタグラムで公開したのが、全14話からなる「せつない水の物語 -その水は、何もできずに流れていった。-」だ。

実データ グラフィック せつない水の物語

「その水は、シャワーの先からポタポタ垂れるお湯として流れていった。」「その水は一人暮らしなのに、広すぎる湯舟のお湯として役目を終えた。」「その水は、食べこぼしたTシャツ一枚だけを洗う洗濯機の水として役目を終えた。」……というように、そこに書かれているのはいずれも水に関するせつないストーリーだ。

今年、こうした施策を行った背景を、電通 プランナー 新城早紀氏は次のように話す。
「従来の施策に加え、今年は節水を促すアクティベーション施策にチャレンジしたいというオリエンをいただきました。ただ、節水の必要性を単に呼びかけるのではなかなか生活者は動きづらいと考え、日常に潜むお水の『もったいない』をコミュニケーションの起点に、生活者自身が節水の必要性に『気づいてもらう』ことを目指しました」

今回の施策では、これらを見て自身が共感した「せつない水の物語」をインスタグラムのストーリーズでシェア&メンションすると、世界に清潔な水を届ける活動に花王が1投稿(1アカウント)あたり100円の寄付を行う。「生活者の中で節水への『気づき』が広まり、水を大切にするアクションにもつながる仕組みになっています」(新城氏)。

写真 グラフィック 掲出風景 せつない水の物語

写真 グラフィック 掲出風景 せつない水の物語

それにしても、このあまりにも短くてせつないストーリーは、どのように生まれたのだろうか。
「節水への呼びかけは日常に当たり前にあるものなので、どうやったら生活者に『新鮮な気づき』として提示できるかを考えました」と、コピーライター 岩田純平氏。

生活者視点のあるあるではどうしても既視感がある。だったら水視点にしてみたらどうだろう?とつくったのが「せつない水の物語」だ。
「雨として降った水が水道水になって、世の中の役に立とうと志高く、一生懸命に暗い水道管をくぐり抜けてようやく辿り着いた蛇口の先で、思ってたのと違う一生を終える切なさを描きました。物語があっという間に終わるせつなさを印象付けるために、番組の最後に入る『終』のクレジットを入れました。暮らしの中でついついやってしまいがちな水の『もったいない』を、全14話のさまざまな水の一生を通して気づいてもらえたらと思います」(電通 コピーライター 岩田純平氏)

実データ グラフィック せつない水の物語

日常のさまざまなものが登場するCM同様、ユニークなのはこの物語の主人公。すべての物語のキャラクターが、「水」であるということだ。
「水を使う際にふと思い出してもらえるキャッチーさと、クスッと笑えるポジティブな節水の普及ができないかと思い、水をキャラクターにしたシンプルなビジュアルを制作することにしました。せつなさをチャーミングに表現してもらうために、イラストレーターのfancomiさんにお願いしました。虚無感のある水の表情とシンプルな構成で日常の1シーンを見事にかわいらしく印象的なイラストに仕上げてもらえました」と、電通 アートディレクター 江波戸李生氏。プラグ デザイナー 鑓田佳広氏と小島幸菊氏と共に、14のビジュアルをつくりあげていった。

9月末に丸の内駅付近とJR東日本全線のドア横などで展開されたOOHでは、花王のキーカーラーである緑1色で、掲出された時に目立つように強く濃く印刷している。

写真 グラフィック 掲出風景 せつない水の物語

写真 グラフィック 掲出風景 せつない水の物語

写真 グラフィック 掲出風景 せつない水の物語

写真 グラフィック 掲出風景 せつない水の物語

写真 グラフィック 掲出風景 せつない水の物語

電車内でこれらのビジュアルを見た人からは、「せつない」「水を大切にしようと思った」「流れていってしまった水くんのこと考えたら悲しくなっちゃった」という声がSNSにはあがっている。また、9月24日からは、花王社屋一階でも「せつない水の物語」を掲出。社員や関係者からも節水への気づきと共感の声が多数寄せられている。

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