大型LEDで絶景の夕陽を再現 ロケや合成撮影に代わる新撮影手法/メタバース プロダクション

映像制作ワークフローにおけるプロセス効率化を目指す、映像制作会社5社の共同プロジェクト「メタバース プロダクション」。バーチャルプロダクションプロデューサーとして新たな立ち位置で活動する徳重岳浩さんと共に、なかじましんやさんが撮影技法の可能性を語った。

写真 人物 夕陽を背に対談する、バーチャルプロダクションプロデューサーの徳重岳浩さん(左)となかじましんやさん。

夕陽を背に対談する、バーチャルプロダクションプロデューサーの徳重岳浩さん(左)となかじましんやさん。

大型LEDに映像を出力、情景と光を再現

なかじま:先日初めてバーチャルプロダクションで撮影したんやけど、光の考え方に驚いたわ。グリーンバックで育ってきたから、情景そのものがライトになっていることとか、人物に直で光が当たるんが衝撃やった。今日は、バーチャルプロダクションプロデューサーの徳重さんにいろいろと話を聞きたいと思います。

徳重:近年のバーチャルプロダクションは大型LEDディスプレイに映像を流して背景とキャストなどの被写体を一発で撮影できる手法です。活用事例も増えていますね。

なかじま:合成もんを一発で撮影できるっちゅうことは、スクリーンプロセスの高品質バージョンやね。オダギリジョーさん出演の「Vocument」では、机もCGやったよね。

写真 CM カット 『今、映画監督オダギリジョーが立つ場所。』


「Vocument #1 『今、映画監督オダギリジョーが立つ場所。』」。

徳重:はい。手前には美術の机を3脚設置していて、背景にある机はCGでつくられています。
 
なかじま:LEDのドット感も全然感じへんし、撮っていて違和感なかったなぁ。映像の描写力がアップしたのもバーチャルプロダクションが発展した要因のひとつやんね。

時間・場所・天候にとらわれない撮影

なかじま:バーチャルプロダクションってどんな使い方がおすすめやの?

徳重:ひとつは、撮影時間が限られている場合。たとえば近年タレントのスケジュールもどんどん制限されている中で、天候予備が取れない、昼設定なのに夜しか撮影ができないなどの多くの問題があります。その解決方法として、バーチャルプロダクションなら昼夜問わずに時間帯や場所を再現でき、さらに瞬時に切り替えることが可能なので撮影効率を一気に上げられます。

なかじま:時間と場所が自由になるんやな!

徳重:2つ目は、秘匿案件の撮影に向いています。たとえば未発表の新車でも公道で走っているように撮影できます。

なかじま:ロケだと一般の方に交通規制をお願いしたり、何往復も車を走らせたりしなあかんけど、スタジオやったら全然違うわな!

徳重:特に車案件は相性がよく、世界的にも多くの作品がバーチャルプロダクションで撮影されています。海外だと車専用のバーチャルプロダクションスタジオがあったりします。そして3つ目は、映画やドラマ。キーシチュエーションとなる場所も、一度CGでつくってしまえば、いつでも何度でも簡単に再現できます。バーチャルプロダクションの魅力はLEDスタジオで好きな時間、好きな場所を再現できるところです。

なかじま:同じセットで時代や時間の変化も再現できるから、長期にスタジオをキープせなあかん朝ドラとかにもいいかもやな。グリーンバックとは違って背景がある分、お芝居するときは、演者さんもイメージしやすいやろね。

徳重:さらに、従来は撮影後に廃棄となる美術や小道具の準備が最低限で済むので、環境に優しい撮影が可能です。

なかじま:あと皆さんが気になるのは、お値段やと思うんやけど……。

徳重:正直ケースバイケースですが、編集の工数や照明機材、美術費などを抑えることができます。トータルでは制作費が削減できる案件も。制作費全体で試算してもらうよう丁寧に説明して理解してもらうようにしています。

なかじま:キーになるのは徳重さんっちゅうことやね。けど徳重さんってそもそも何者なん?

徳重:東北新社、電通クリエーティブX、ヒビノ、電通クリエーティブキューブ、オムニバス・ジャパンによる共同プロジェクト「メタバース プロダクション」で、バーチャルプロダクションプロデューサーとして、企画を見て最適な撮影方法を導くプロデュースをしています(時にはVFX撮影の提案も)。バーチャルプロダクション制作で必要なスケジュールや予算、撮影スタッフなど、撮影の技術的な説明をするアドバイザーですね。撮影終了まで一緒に伴走します。いわば徳重は「バーチャルプロダクションの何でも屋」だと思っていただければ!

なかじま:だからバーチャルプロダクションについてなんでも知っているんやね。

マジックアワーもLEDで再現

なかじま:バーチャルプロダクション撮影をしようかな、って思う時の心構え、なんかある?

徳重:ワークフローが従来と異なるので、事前準備が重要になってきます。

なかじま:バナナマンが出ていた住友生命のCMもびっくりしたなあ。あれ!?あの銀杏並木、こんなとこでよく撮影したなぁ、って。完全にロケ撮影やと思ってた。

写真 CM カット 住友生命保険/企業テレビCM「それはおなじ。」篇

住友生命保険/企業テレビCM「それはおなじ。」篇。

写真 CM カット 住友生命保険/住友生命「Vitality」のテレビCM「それだけ、じゃ」篇

住友生命保険/住友生命「Vitality」のテレビCM「それだけ、じゃ」篇。

徳重:銀杏並木のカットはバーチャルプロダクションで撮影したものです。ほかに最新の住友生命のCMでは、車窓からの窓抜けも撮影しました。

なかじま:実は今私たちがいるのも、夕陽がきれいな海辺!ではなくて、LEDで夕陽を再現した東宝スタジオ。一日に数十分しか見られない「マジックアワー」も、バーチャルプロダクションやったらなんべんも再現できるわな。現地で何日も待たんでええし、当日も夕方まで何時間も待たんでええっちゅうことやね。

写真 CM カット 湖池屋/湖池屋ストロングのテレビCM「五感快感」篇

湖池屋/湖池屋ストロングのテレビCM「五感快感」篇。

写真 まるで屋外にいるように撮影できるバーチャルプロダクション

まるで屋外にいるように撮影できるバーチャルプロダクション。

リアルとバーチャルの懸け橋に

なかじま:徳重さんって、バーチャルプロダクションをやってみたいけど仕組みがわからんっちゅう人の相談に乗ってくれる理解で間違いない?

徳重:はい!企画の段階から相談してもらうのがいいですね。早めに相談していただけることで成功に導きやすくなります。

なかじま:心強いなあ!バーチャルプロダクションに詳しい人がおるのはええよね。リアルとバーチャルの懸け橋の人、みたいな(笑)。

徳重:相談無料です。世界標準なバーチャルプロダクション撮影を日本で普及させるために、どのプロダクションの方々ともお仕事できます!

なかじま:困った時はとにかくまず徳重さんに相談すればええんやね。話を聞いて、今度はあれやね、インカメラVFXを使ったバーチャルプロダクションでの撮影にトライしてみたくなったなぁ。その時はいろいろと相談させてもらいますわ!

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なかじましんや

CMディレクター

1959年福岡県生まれ。武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科卒。1983年演出デビュー。日清食品「hungry?」(カンヌライオンズグランプリ)、サントリー「伊右衛門」、Airペイのオダギリジョー出演シリーズなどを演出。映画『ウルトラマンゼアス』(1996)、『矢島美容室』(2010)監督。

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徳重 岳浩

VP(バーチャルプロダクション)プロデューサー

2014年オムニバス・ジャパンに入社しCGプロデューサー、ポスプロを担当。その後、ドームコンテンツ・VR・AR・3D映画・プロジェクションマッピング・大型映像をプロデュース。
現在、TFCにてVPプロデューサーを務める。

お問い合わせ

メタバース プロダクション

URL:https://metaverse-px.com/
EMAIL:mvp@tfc.co.jp

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