やす子の起用について、同社担当者は「子どもから高齢者まで幅広い年齢層が利用している当社の顧客層と合致している」と話す。前回の起用から2年間で、やす子の知名度と好感度も上がっていることから、アンバサダーに起用することで新たな客層にQB HOUSEをアプローチできると期待を寄せている。
「QB HOUSE」は、1996年11月に日本初のヘアカット専門店チェーン「QB HOUSE 神田美土代店」からスタート。2024年6月期末で国内563店、海外128店の計691店舗を展開しており、2024年春には創業以来の累計来店客数が3億人を突破した。ほか、ヘアカット未経験者でも6カ月間でプロに育てあげる社内のヘアカットスクール「ロジスカット」は業界唯一の存在として多くの賞を受賞している。
一方、理美容業界では後継者や人材の不足、顧客確保の課題によって閉店や倒産が急増している。理容師や美容師は国家資格が必要で、「理容師法」「美容師法」の制約上、外国人の登用や機械化も難しい状況にある。同社担当者は「以前のキムタク人気を発端とするカリスマ美容師ブームも終焉を迎えている」と話す。
日本全体における賃金低迷などで美容室の利用回数も減少しており、バブル時代のソバージュのようにパーマをかける女性も少なくなったという。クーポンを使って美容室を渡り歩く一見客も多く、単価アップが図れない課題もある。
こうした状況の中、同社も理容師・美容師の待遇向上や「ロジスカット」の運営などのため、ヘアカット料金の値上げを3回実施。昨年春の値上げでは2023年8月に7.4%のベアを実施、10月の定期昇給を含めると前年比9.8%となる。値上げ後の2カ月間は影響を受けたものの、その後の回復で全体では失客につながっていないとしている。
同社の客層は30~50代が中心。今回の施策を通じて10~20代に周知することで、将来の理美容師や顧客確保へとつなげる狙いもある。若年層に訴求する上ではテレビよりもSNSの効果が大きいと見ており、日々SNSに投稿しているやす子が適任だとしている。店舗モニターでやす子を起用した映像を流すことで、社員の雇用定着や顧客の安定確保に寄与する効果もあると見ている。