EPA=時事
大手より成長途上の企業が上位に食い込む
メジャーリーグでの活躍だけにとどまらず、世界中の人々を魅了し続ける大谷選手。ドジャースに移籍した2023年から2024年にかけては特に、多くのブランドが大谷選手をアンバサダーとして迎え、その影響力を存分に活用している。
企業が大谷選手を起用する理由として、「強さ」と「優しさ」を兼ね備えたイメージが挙げられるだろう。世界を舞台に挑戦し、活躍を続ける大谷選手を自社のイメージに重ね合わせたいと考える広告主はこれからも増えると思われる。
では、大谷選手を起用している中でどの企業がよりその恩恵を受けたのか。ここでは広告効果を測る指標のひとつとして「検索ボリュームの上昇」に着目。Yahoo! JAPANが保有する検索データや行動ビッグデータを用いて消費者分析ができる「DS.INSIGHT」を用いて、直近1年間の企業名・商品名の検索ボリュームの変化に注目した。
大手企業が名を連ねるなか、トップに立ったのは意外にもあの企業だった。
大谷選手起用CMの放映後の反響ランキング
注:各キーワードの期間平均ボリュームを「0」、標準偏差が「1」となるように検索ボリュームを変換。
まず、CM放送前後の検索ボリュームの変化を比較してみると、トップに立ったのはディップで2位以下と大きく差をつけた。2位はECC、3位はコスメデコルテ(コーセー)、4位はバンテリン(興和)と続く。大手よりも新興企業や非上場企業が上位に食い込んでいる点が興味深い。ナショナルクライアントよりも成長余地が大きく、大谷の知名度を起爆剤として活用するメリットが大きいといえる。
また、CMの「放送前のスコア」と「放送後のスコア」に注目してみるとCM放送前からある程度検索ボリュームが伸びていた三菱UFJカード(三菱UFJ銀行)などの大手企業に比べて、ディップの場合はもともとの検索の盛り上がりもそこまでなかったことから、大谷選手起用による世間的な話題性が大きくなり、一気に注目を集めたと考えられる。
大谷選手と相性が良いCMの特徴とは?
注目すべきは、ディップとECCがともにヒットしたCMである。両CMには「夢」「挑戦」「未来」というテーマが共通しており、これは大谷選手の姿と一致している。
ディップ 「Let’s get started!」篇(30秒)
ディップのCM「Let’s get started!」では、「夢を叶える仕事に出会おう」というメッセージが伝えられており、大谷選手がいくつになっても夢を追いかけ、挑戦し続けることの大切さを視聴者に訴えかけている。ディップの社名は、「dream(夢)」「idea(アイデア)」「passion(情熱)」の頭文字に由来しており、大谷選手の生き方そのものを体現しているかのようである。
ECC「未来へ、翔(はばた)け。」篇(30秒)
ECCのCM「未来へ、翔け。」は、大谷選手が「未来は自分でつくるもの」「年齢や言葉の壁は挑戦を妨げない」と語り、英語学習の重要性を説得力あるメッセージで伝えている。これも、大谷選手ならではの挑戦の象徴として多くの視聴者に響いているといえる。
大谷選手を起用したCMの放送後の反響ランキング
大谷選手を広告起用した企業の株価推移
3月19日の株価を100として各社の推移を指数化
上場企業の業績や期待値は株価に反映される。CM効果が企業の業績、特に株価にどのように反映されたかを気にしている投資家もいるだろう。株価の変動要因は様々な要素が絡むが、ひとつの要因となりうるか見てみたい。
大リーグのシーズンが開幕した3月20日から10月7日の株価上昇率を見てみると、最も伸びたのは2024年1月から大谷選手をアンバサダーとして起用しているコナミグループで43.9%の上昇となっている。
次に、雪肌精とコスメデコルテなどの複数ブランドで大谷選手を起用するコーセーが17.6%、ディップは7.9%の上昇を見せており、いずれもCM効果が反映されたと考えられる。
ディップの冨田英揮社長は決算説明会で「(大谷翔平選手との契約は)いままでよりも非常に高額な契約だったが、非常に話題になり投資効果は十分にあったと今の段階では感じている。これからもどんどん露出していく」(BUSINESS INSIDER、2024年4月17日)と話している。
ほかにも、住友ゴム工業は今年の7月から、以前からスポンサーを務める三菱UFJフィナンシャル・グループは8月からCM放送開始とまだ間もないが、それぞれCM放送前後で株価がプラスに転じている。
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