組織は自分を必要としているか、自分もその組織を求めているか

──会社のオリジナル番組もつくっていますよね。

はい。学生やビジネス層がどんなチャネルを見ているかを検証し、「NewsPicks」を活用しようと考えました。私たちはBtoB企業ですから、どういうモノをつくって、それが社会でどんなふうに役立っているのかを知ってもらうのはなかなか難しい。その打ち手として、デジタルチャネルとしても人気が高い「NewsPicks」でオリジナル番組をつくり、シリーズで放送することにしたんです。社長や事業の最前線にいるエンジニアに出てもらい、有識者の意見も入れながら、わかりやすくイメージもしやすい番組になるよう工夫をしました。

すると「会社や事業のことがわかりやすい」と評判になりました。社外の方からだけでなく、社員からもそういう声が聞けて嬉しかったです。インターナルコミュニケーションにも役立つというのは思わぬ収穫でした。

「価値を提供する」存在であり続けたい

──長くやってきた人事の経験は活かせていますか。

広報に異動した当初は「人事経験のみで広報の経験もなく、本当に大丈夫かな」と心配でした。人事と広報はまったく別物だと思っていたんです。

でも、実際に携わってみて、両者は非常に近い部分があることに気付きました。ステークホルダーの目線に立って考えることが大事であることは、人事も広報も同じ。そして企業に対する「共感」をつくっていくことも同じです。ステークホルダーが全方位に広がっている分、広報には難しさがありますが、人事時代に培ってきた経験をしっかり活かせているなと思いますね。

──人事としての経験がちゃんと大きな武器になっているわけですね。

そうですね。でも、広報の勉強も必死にやってきました。数え切れないほどの本を読みましたし。セミナーにも参加しました。

でも時間が経つと、知識はすぐに陳腐化していくんですよね。世の中も企業もどんどん変わっていきます。だから、インプットに終わりはありません。常に学び続けて自分の中の引き出しを増やし、その時その時に適切な思考や手法を引っ張り出す。この姿勢が広報には大切なのかなと思います。

──インプットはやはり本から? 若い世代では本離れが進んでいますが……。

本は読んだ方がいいです。でも、リアルな情報はもっと大事。私は他社の広報の方と積極的に交流しています。刺激になるし、励みにもなる。何より切磋琢磨できますから。広報は「片足は社内、片足は社会」に置いて、ステークホルダーとの関係を築いていくものだと言われています。そういう意味でも、広報担当者にとって、社内外のネットワークづくりはとても大切なことだと思います。

写真 人物 荒川直哉氏、深尾奈美氏

──人事と広報は共通点があるというお話でしたが、どちらも専門職ですから、職種を変えることはやはり大きな決断だったと思います。結局のところ、何が後押しになったのでしょうか?

私は社会、会社、組織、自身の価値を向上し続けたいと考えています。ですから、その会社やポジションがどんなに居心地が良くても、「自分の役割は終わったな」と感じたらアンカーが揺らぐ。会社や組織のさらなる成長のために後進に道を譲った方がいいと思ったときは、そこを離れる決断をします。

──組織に自分が求められているかどうか、でキャリアを選択するということでしょうか。

両方ですね。そもそも自分がその組織を求めているかどうか、も同じくらい大事にしています。その場所で自分自身が成長し輝き続けられか、その場所にいることで自身の価値も高められるかという点です。

現職に転職した理由のひとつが、まさにそれでした。前職では、トップの右腕のようなポジションで人事の仕事をしていたのですが、国内市場中心にビジネスをしている会社でもあり、「国内だけでなく、グローバルに活躍していきたい」と思うようになり、日本特殊陶業を選びました。

「組織と自分が互いに必要としていること」。このキャリア選択の指針は、この先もぶれることはないと思います。

──ありがとうございました。

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荒川 直哉(マスメディアン 取締役 国家資格キャリアコンサルタント)
荒川 直哉(マスメディアン 取締役 国家資格キャリアコンサルタント)

マーケティング・クリエイティブ職専門のキャリアコンサルタント。累計4000名を超える方の転職を支援する一方で、大手事業会社や広告会社、広告制作会社、IT企業、コンサル企業への採用コンサルティングを行う。転職希望者と採用企業の両方の動向を把握しているエキスパートとして、キャリアコンサルティング部門の責任者を務める。「転職者の親身になる」がモットー。

荒川 直哉(マスメディアン 取締役 国家資格キャリアコンサルタント)

マーケティング・クリエイティブ職専門のキャリアコンサルタント。累計4000名を超える方の転職を支援する一方で、大手事業会社や広告会社、広告制作会社、IT企業、コンサル企業への採用コンサルティングを行う。転職希望者と採用企業の両方の動向を把握しているエキスパートとして、キャリアコンサルティング部門の責任者を務める。「転職者の親身になる」がモットー。

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