なぜ日本のジェンダーギャップは解消されないのか―しまむら炎上問題とともに考える

男性差別という声が大きかったが……

最後に、しまむらの一件が、差別であったのか、ということについて。この話題が起こった時、私のポートランドの友人がある記事で紹介していた「Color Blind」の話を思い出しました。冒頭がその部分にあたります(後半は別の話です)。

ぜひ読んでもらうのがいいと思いますが、簡単に言うと、マジョリティである、差別を受けたことのない白人男性が、アフリカ出自の人に向かって「僕は、あなたの肌の色は気にしないよ!」「僕は同じように接しているよ」ということは、間違っている。なぜなら、たとえ同じように接していたとしても、マジョリティ側に立つ行動主体者本人と相手(マイノリティ)とは置かれている環境や境遇が同じではないため、その不平等な状況を差し置いて、マジョリティ側が「私は見ないよ、気にしていないよ」ということは、その問題、つまり差別があるという前提と根幹の課題を無視している、そしてマイノリティ側の存在を無視しているのに等しい、という話です。

「現在、社会は不平等にできていて、平坦でない。自分はアイデンティティによりその勾配のある社会のある一点に属している。そして、そこより下層に属する人々と比べて、より多くの様々な利益を自分は享受している、と言う事実を自認する事が差別構造に取り組むアプローチの第一歩ではないのか、と言う話である。」(noteから引用)

この日本社会をいちばん大きな括りで分けると、男性がマジョリティで、女性がマイノリティです。細かく分けて目を向けるべきマイノリティはもっと多く存在していますが、アメリカのような多民族国家に比べると、とても大雑把にふたつに分かれます。

これは数の話ではなく、冒頭に書いたジェンダーギャップ指数のランキングが示す通り、日本においては、圧倒的なマジョリティである男性は、社会、文化、すべてにおいて、いまだ優位。報酬の差もあれば、社会で得られるロールやポジションにもいまだ差があります。物事を決め、未来へと進める現場にも男性が多く、それは社会全体の構図で簡単には変わりません。

このような前提に立った時、優位な立場にいる男性自身が「差別だ」「僕は女性に押し付けず、同じようにやっているのに言われる筋合いがない」と咎めるこは、前述のnoteで、彼女が人種差別に対して提言したことと同じことが言えるのではないかと、ふと思ったのでした。日本社会において、置かれている立場や状況が全く異なる男性と女性なので。

もちろん、不快な思いをした個人の感情はあると思いますが、その感情に目を向け議論の中心においてしまうと、今回のデザインが社会の不平等の構図と役割の固定化に対して行なった提言に目を向ける機会が失われてしまいます。

男性も社会が決めつける、家庭内と社会の役割にも縛られてしまって、身動きがとれなくなっているのですけどね。だからこそ、固定観念から脱却していくこと。それがとても大切ではないかと考える今日この頃です。

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松原佳代(広報コンサルタント/みずたまラボラトリー 代表)
松原佳代(広報コンサルタント/みずたまラボラトリー 代表)

スタートアップの広報育成・支援を手がける「みずたまラボラトリー」代表。お茶の水女子大学卒業後、コンサルティング会社、出版社を経て、2005年に面白法人カヤックに入社。広報部長、事業部長を兼任したのち子会社カヤックLivingの代表取締役に就任。移住事業の立ち上げに参画。2019年、家族で米国ポートランドに移住。一方、2015年に自身の会社「みずたまラボラトリー」を設立し、広報戦略、事業開発、経営全般にわたる経験と実績を活かしスタートアップの広報育成と支援を展開。富山県出身。富山県の経営戦略会議ウェルビーイング戦略プロジェクトチーム委員も務める。

松原佳代(広報コンサルタント/みずたまラボラトリー 代表)

スタートアップの広報育成・支援を手がける「みずたまラボラトリー」代表。お茶の水女子大学卒業後、コンサルティング会社、出版社を経て、2005年に面白法人カヤックに入社。広報部長、事業部長を兼任したのち子会社カヤックLivingの代表取締役に就任。移住事業の立ち上げに参画。2019年、家族で米国ポートランドに移住。一方、2015年に自身の会社「みずたまラボラトリー」を設立し、広報戦略、事業開発、経営全般にわたる経験と実績を活かしスタートアップの広報育成と支援を展開。富山県出身。富山県の経営戦略会議ウェルビーイング戦略プロジェクトチーム委員も務める。

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