当初は会員制クラブの名称だった「くうねるあそぶ。」他、糸井重里さんに聞く名作コピーが生まれた現場(後編)

「馬鹿」と言っているけれど、実はとても「ほめている」表現

本読む馬鹿が、私は好きよ。

(パルコ/企業/1988年)

谷山:次に取り上げるのは、パルコの「本読む馬鹿が、私は好きよ。」です。このコピーは、もともと新潮文庫のために書かれたものだとお聞きしました。

糸井:本を読む人を「馬鹿」と呼ぶのは、やはり新潮文庫では通りませんでした。でも、これはすごくほめている表現なんですけどね。この言葉を聞いて、そうだよなと思う人に向けた広告で、このフレーズを全部思いついた瞬間に「できた!」と確信しました。

谷山:パルコの広告として見ていたのでそれはそれで当然好きなのですが、もしこのコピーが新潮文庫の広告だったらと想像するとすごいことだったと思います。

糸井:パルコの広告で使われたときは、グラマラスな女の子が登場するビジュアルに合わせたんですが、それはそれで面白かった。誰が言ってもいい言葉なんですよ。たとえば、もし僕が鉄道オタクだったとして「鉄道オタクの馬鹿が私は好きよ」と言われたら、「好き」という結論があるから悪い気はしないですよね。ただ、これは「空手をやる馬鹿」ではちょっと違うかもしれません。文化系のものとの相性がいいんです。

谷山:テレビCMではナレーションが少し違っていたように記憶しています。確か「なおかつ、読書好き」という言葉が使われていたような…。CMで「馬鹿」という言葉を使えなかったのでしょうか?

糸井:そうではなかったと思います。単にナレーションとして言いづらいという理由だったはずです。このコピーが素晴らしいかはわからないけれど、このくらいちゃんと考えてつくった広告が、いまの世の中にもっと増えるといいなと思っています。

写真 人物 個人 谷山雅計さん

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