一流企業のトップが登場するビズリーチのCMに「人材争奪」時代の予感

ビズリーチ「社長の本気」篇 第一生命ホールディングス(15秒)

何人もの大企業トップが登場するキャスティングに驚き

今回のビズリーチのCMで最も注目されるのは、登場する社長たちの存在です。日本の名だたる企業のトップが、自らの言葉で「即戦力となる人材」を求めているというメッセージを伝えることで、視聴者に強い印象を与えています。これにより、ビズリーチが単なる転職サービスではなく、ハイクラスな人材を企業と結びつけるための重要なプラットフォームであることが強く印象づけることができたと思います。

例えば、第一生命ホールディングスの菊田徹也社長は「挑戦心を持つ方と一緒に未来を切りひらきたい」とし、企業がイノベーションを起こすために求める人材の資質を明確にしています。また、NRI(野村総合研究所)の柳澤花芽社長は「AIも、DXも、その先も欲張りな貴方をお待ちしています」と語りながら、これからも時代に応じて変化を続けるためには貪欲な人材が必要であることを訴えています。

これらのメッセージは、視聴者に企業の採用方針と真剣な姿勢をリアルに伝え、結果として、ビズリーチが信頼できるパートナーであるという印象を強く残すことに成功しています。

また、CMのラストカットに、社長たちが人差し指を立てて「ビズリーチ!」とビズリーチCMお決まりの決めカットが設けられています。元々このシーンはとても印象的で、大量出稿することで連呼型の様なCMになっています。そんな連呼型CMの要素を取り入れながらも、テスティモニアルの手法をうまく融合させた構成になっています。

このCMはなぜ優れているのか?

ビズリーチのこのCMが「優れている」と言える理由は、その設計とメッセージ性にあります。

1.出演者のインパクト

繰り返しになってしまいますが、企業のトップが他社の広告に出演することはとても稀なことであります。キャスティングを専門にやっている私たちはどんな有名な方でもキャスティングをする自信はあるものの、今回のキャスティングには、驚きました。大企業になればなるほど、取引先も多く、それに伴って制約も多くなると思います。そんな日本を代表する大企業の社長を何人も起用できたことは、それ自体が凄いことだと思います。

2.ターゲット層を意識したメッセージ設計

ビズリーチのサービスは、ハイクラス層に向けた転職サービスです。

大企業のトップ自ら中途採用の重要性を語ることで、「自分もこうした企業で働くチャンスがある」という期待感を抱かせる一方で、他企業の社長や人事部長さんも心中穏やかではないと思います。なにせ、超有名企業と言われる企業の社長が本気で中途採用をすると言っている訳ですから。

大企業も中途採用を行っていかないと、欲しい人材に巡り合えない時代になってきたようです。当然ですが、中途入社組はもともとは他社で働いています。他社で働いている人材を有利な条件で自社に迎え入れる。その逆もしかり。自社でも優秀な人材であれば、他社からの魅力的なキャリアオファーが次から次と現れてくるわけです。日本は、「人材争奪」時代に突入した感があります。

3.テスティモニアルと連呼型のハイブリッド設計

連呼型CMとテスティモニアル広告のハイブリッドという点も、このCMの優れた点です。ビズリーチのこれまでのCMは、ブランド名を繰り返すシンプルな手法で認知度を高めてきましたが、今回のCMはさらに信頼性を強化するためにテスティモニアルを導入しました。これにより、2つメリットが生まれました。

シンプルな連呼型はインパクトが強い半面、出稿量が多いと耳障りになりネガティブ反応が出てくることがあります。ただし、今回テスティモニアル形式になったため、視聴者としては、ビズリーチのCMタイプが一気に増え「シリーズもののエンタメ性」というポジティブ要素が増えたことが一つです。もう一つは、視聴者に対して「ビズリーチは信頼できる」という印象を与えたことです。

今回のビズリーチの「社長の本気篇」 CMは、最近まれに見る、刺激的な広告であり、優れたCMになったと思います。

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足立茂樹

あだち・しげき/イー・スピリット代表。博報堂出身。キャスティングを事業の柱として2000年起業したが、現在では、「スポーツ選手」、「インフルエンサー」、「タレント」のキャスティングに強い広告代理店になっている。

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