地域外企業とも連携、スポーツビジネスに新風を-「収益」の壁をどう乗り越えるか

企業とのPoC(実証実験)パートナー締結がなぜ有効か

この意識変容から企業面談に変化が表れました。分かったことは大手の企業やベンチャー企業は、自社の製品やサービスを本格的に販売する前の実証実験の場や機会を求めているということです。

しかし自治体などの協力や理解を受けるためには、事前の説明や承認に至るまでに時間と手間がかかり前に進まないことが多いのです。そこで私たち自身がその実証実験を伴走するポジションを取って主体的に関与することにより、数カ月~1年かかる自治体との信頼構築を一瞬にして解決するという方法を編みだしました。

従来、企業面談をする際、企業にオフィシャルパートナーとなっていただくことを念頭に置いていたのですが、その一歩手前でPoC(実証実験)パートナー締結を挟むことにしていきました。すると数カ月の間に、契約合意が立て続けに成立し、対価をいただく型が見え始めました。

図 価値を明確にし、お客様の抱える課題を共に解決していく

地域での社会課題解決事業の実証実験を軸としたパートナー制度の新設。

取り組む実証実験は地域や社会課題解決から外れないように気をつけて進め、医療や福祉や人材教育、ITやDX系の分野など、相性の良い分野も掴めるようになってきました。

数カ月の間に加速度的に共創が生まれ、AUBAプラットフォーム内でのPoC実績も平均の3倍という数字を叩きだしました。スポーツクラブの持つ知的財産を活かしたPoCが形になりやすいということを示せたのではないかと思います。

写真 2023年の数カ月間で加速度的に成立した共創締結の実績

2023年の数カ月間で加速度的に成立した共創締結の実績。

さらにPoCの実証実験を経て、私たちとの取引に手応えを感じていただきオフィシャルパートナーにランクアップしたり、共同事業化に進んだりするケースも現れはじめました。

PoCパートナーからオフィシャルパートナーへランクアップし、Fリーグ公式戦での冠試合を開催(2024年7月)。

人材育成研修事業は継続事業化。得られた収益をシェアする形で収益化にも成功。

地域外企業との連携がなぜ必要なのか

自治体や地域経済界からすると、地域の財源は地域企業への活用が優先されるのが当然だと思うのですが、地域自治体や私たちのパートナー企業は地域企業だけでは解決できない課題があり、地域外企業の知見や経験が必要になると理解されています。

なぜ地域外企業を採用したのかみんなが納得できる理由が大切になり、湘南ベルマーレフットサルクラブのパートナー企業とクラブが共同で主体的に進められるということが、理由に当てはまるのだと分かってきました。

さらに言えば、地域の商売を荒らすことなく、足りないところに外部の新しい風を吹かせるのも私たちの示せる役目であるということも分かってきたのです。

動き出し、悩み、停滞することもありますが、経済成長と社会貢献の両輪を走らせるというビジネスモデルが地域と共存するスポーツビジネスの未来形として前進した瞬間だったのかもしれません。

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佐藤伸也(湘南ベルマーレフットサルクラブ 代表取締役社長)
佐藤伸也(湘南ベルマーレフットサルクラブ 代表取締役社長)

1977年神奈川県藤沢市生まれ。2007年フットサル施設の運営会社起業と同時に、湘南ベルマーレフットサルクラブのGMに就任し、Fリーグ開幕初年度を迎える。2022年4月より同社代表取締役社長。スポーツ庁主催イノベーションリーグ大賞受賞。小田原市など8自治体との包括連携協定を締結しゼブラ事業を推進する。

佐藤伸也(湘南ベルマーレフットサルクラブ 代表取締役社長)

1977年神奈川県藤沢市生まれ。2007年フットサル施設の運営会社起業と同時に、湘南ベルマーレフットサルクラブのGMに就任し、Fリーグ開幕初年度を迎える。2022年4月より同社代表取締役社長。スポーツ庁主催イノベーションリーグ大賞受賞。小田原市など8自治体との包括連携協定を締結しゼブラ事業を推進する。

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