新入社員の知識向上に貢献
JR東日本グループは、生成AIでサービス向上を図っている。鉄道固有の知識を学習した「鉄道版生成AI」の開発に本格着手。鉄道に関する法令や規則、各分野の業務知識を学習させることで、社員の日常業務をサポートできるAIを目指す。顧客案内、車両のメンテナンス、企画業務などAIが各分野を横断した専門的なアドバイスを行うことで、専門領域ではない社員でも各分野の社員に問い合わせることなく、迅速な業務遂行が可能になる。
同社担当者は「今後、鉄道事業では人手が不足して事業を維持することが難しくなる可能性がある」と指摘。「鉄道版生成AI」によって、人手をかけずに業務できる環境を目指す考えを示した。AIによって業務負担が減少することで、社員が人間ならではの創造的な役割に注力できるメリットも期待できる。2027年度末を完成目標とし、段階的に開発して性能を高めていく。
複数の分野をまたいだ業務の遂行にも役立つ「鉄道版生成AI」
JR東日本では、グループ経営ビジョン「変革2027」実現のため、各種デジタルツールの導入など業務のDXを進めており、生成AIチャットツールを全社員が利用できるように展開している。一方、既存の生成AIツールでは、鉄道固有の質問に対する回答がうまく得られないことや、回答の精度が高くならない場合があるなどの課題があったという。
生成AIの活用を進めていく中で、高精度な情報を生成するには、鉄道固有の表現や図表類を生成AIが理解する必要があることが判明。鉄道固有の知識を学習した「鉄道版生成AI」の開発に至った。
ベテラン社員は過去の事象に関して記憶しており、ごくまれな事象でも注意点などに気づくことができるが、複数の分野をまたぐ工事の際には知識が不足するケースもある。また、若手社員や経験年数の浅い社員はこれらの注意点に気づくことが難しい課題があった。今回の鉄道版生成AIによって知識やノウハウを集約することを目指す。
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生成AIからベテラン社員と同等のアドバイスを受けられるようになることで、新入社員や経験年数の浅い社員の知識レベルの底上げに貢献し、顧客からの問い合わせに迅速に回答できるようになるなど、サービスの向上に期待できる。
「鉄道版生成AI」は3つのステップに分けて開発を進める。ステップ1では、鉄道関連の法令や社内教育資料などを学ぶ「鉄道事業基礎AI」を開発。ステップ2では各分野のマニュアルや図面を学ぶ「鉄道事業専門AI」、ステップ3では各分野の情報を網羅的に学ぶ「鉄道事業汎用AI」を目指す。
社内の各業務で必要とされる知識レベルなど、各ステップの正答率を評価し、性能を段階的に高めていく。ベースとなる大規模言語モデルは日本語で学習をしたモデルを採用。同社担当者は「日本語で学習した大規模言語モデルにどのように鉄道の知識を学習させるかを検討していく」と話す。すでに日本語の大規模言語モデルをもつパートナーとも連携している。
今後、鉄道事業における生成AI利活用の基盤として「鉄道版生成AI」を位置づけていくほか、将来的には生成AIが社内システムと連携することも検討。鉄道事業者で共通的に利用できる生成AIモデルの開発を目指し、ほかの事業者も利用可能な仕組みを検討する。
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