50歳を前にしてアメックスの副社長に
MarketShare社では、最終的にアジア代表まで務めました。いずれIPOか事業売却をすることは入社時から想定していたのですが、売却先はグローバルに展開する企業ではなく、アメリカの国内でのみ事業を展開する企業でした。よって、親会社とアジア太平洋地域とのシナジー構築もないことがわかり、いったん同社における自分の役割が終わったと考えるに至りました。
そこで、私のマーケティングキャリアをどのように発展させるべきか考えたところ、これまでの経験を最大限活用するためには詳細な顧客データを持ち合わせた会社がベストだと考え、50歳を前に2016年、アメリカン・エキスプレス（以下、アメックス）でデジタル領域を担当する副社長のポジションを紹介されました。
顧客のトランザクション（購買）データが解析できれば、その顧客の特性が理解でき、パーソナライズしたオファー提供ができます。クレジットカードは、メインカード（複数保有するクレジットカードの中で最も頻繁に利用するカード）として利用されていないと、その顧客の特性を正しく把握することはできません。
例えば、スーパーマーケットが発行するカードを解析しても、その顧客の可処分所得は理解できませんし、旅行好き等の特性もわかりません。アメックスは年会費が比較的高い傾向にあるため、利用者のメインカードである確率が高いことがわかっていました。
コロナ禍において、購買データを分析するデジタル領域に加え、コンシューマーカード（一般消費者向けクレジットカード）の販促も同時に担当することになりました。年会費を上げることもありましたが、値上げを目的とするより、商品性の向上を目的としたものでした。商品性が良くなれば、カード保有者にとっての「お得感」が増し、エンゲージメントが高まります。このように、カードのサービスを、継続利用してくれるような「売れるサービス」に改良することで結果的に利用額が増え、解約率を減らすことができました。
25年前に描いたキャリアプランは進化している
アメックスでは毎年1月に、マネージャー以上の社員が自分の注目するトレンドなどを発表する、キックオフミーティングが行われていました。2023年のキックオフにおいて、私は生成AIについて発表しました。そのときすでにアメックスに7年以上在籍し、生成AIに関しては2022年後半頃から研究を始めていたため、この話題はいわば「コンフォートゾーン」に入っていました。
このころから、生成AIのマーケティングでの活用をキャリアにおける次のテーマにしようと考えていたところ、アクセンチュアに電通Y&R時代の先輩がいることがわかりました。そういった経緯もあり2023年1月下旬から、アクセンチュア ソングの数多くのMD（マネジング・ディレクター）の方々とつながりを持つことができました。
アクセンチュア ソングの皆さんと会話をする中で、データ解析やクリエイティブイメージ作成などにおいて、生成AIの活用方法、一方で人間のクリエイターがやるべき仕事のあり方について、自ずと議論が盛り上がり、まさに生成AIのマーケティング領域での実用化はアクセンチュア ソングが断トツに進んでいることを実感しました。こうした生成AIをはじめとする先端テクノロジーのマーケティングでの活用が今後さらに加速し、その最前線に携われると確信し、入社を決断しました。
