Q1:現在の仕事の内容とは?
「異彩を、放て。」をミッションに掲げる、ヘラルボニーの広報責任者を務めています。
ヘラルボニーはまだ60名程度のスタートアップ企業ですが、事業内容は多岐にわたり、広報室ではコーポレート広報とBtoB、リテール、アート、岩手、海外といった5つの事業部広報に加えてSNS運用を担当しています。事業の拡大と共に広報室の体制も急拡大していて、業務委託の方も含め7名という大所帯になってきました。そのなかで私は主に、ヘラルボニー全体を俯瞰したPR戦略の立案・コーポレート広報とメンバーの育成・マネジメントを担当しています。立ち上げ期の事業部においては広報体制の土台作りも行っています。
「広報は会社の”木の幹”である」と、弊社代表の松田が言っているのですが、まさに社内外のさまざまなステークホルダーとの関係を良好にすることが経営や事業にシナジーを生み出していることを実感しており、とても重要な役割だと日々感じています。
Q2:これまでの職歴は?
2012年に新卒でサイバーエージェントに入社しました。当時、急成長していたソーシャルゲームの分野でプランナー、プロデューサーを経験した後に、もともとメディアが好きだったことから、女性向けライフスタイルWEBメディアの編集、コンテンツマーケティングの仕事に2年ほど携わりました。ネタ探し、編集、タイトリングやOGPの選定、SEOなど、基本的なメディアの仕事を学びました。広報さんやPR会社の方から毎日200通以上のプレスリリースが届くなど、メディア側の立場も多少ですが経験してきました。
その後、より経営に近い仕事をしたいという気持ちから、2017年にグループ子会社での広報部門の立ち上げに参画。これが広報としてのキャリアの始まりです。
はじめは、動画広告事業のスタートアップでひとり広報として奮闘する日々でした。BtoB広報の難しさと面白さを実感しました。サイバーエージェントグループも非常に広報に力を入れている会社で、他にも、BtoC事業、化粧品など幅広いジャンルの広報を経験させていただきました。
2020年に第一子を出産した際に娘に先天性疾患があることがわかり、障害や福祉に対する当事者意識が生まれました。そんななかで、障害に対して支援やチャリティーではなくフラットに向き合い、クールなプロダクトや社会アクションに取り組む「ヘラルボニー」の存在を知りました。ずっとファンとして応援していたのですが、いつの間にか自分もこの船に乗ってみたい!と思うようになり、2022年11月からヘラルボニーにジョインし働いています。
娘が大人になるまでの時間、どれだけ社会を前進させていけるか。広報として障害のイメージをポジティブに変えていくことに全力で向き合っています。
Q3:転職や社内異動などに際して、強く意識したこととは?
大きく2つあるのですが、1番は「自分自身が心からトップの描く未来とシンクロできるか」どうかです。
前職の上司から教わった言葉ですが、「広報は経営をバリューアップする存在」だと考えています。代表や経営陣との距離も近い広報は、時に社内外に対して代弁者となることもありますよね。自ら、中長期の経営戦略を捉えて、広報の立場から経営や事業をより加速させるための提案をすることも必要です。その際に、自分自身が心から会社のビジョンに共感できているか?は非常に重要だと感じています。
また、日頃、日程調整や交渉ごとなど、泥臭く汗をかく場面が多いのが広報のリアルな姿かと思います。だからこそ、粘り強く挑むためのエネルギーの源となるような想いや気持ちというのは大切にして良い感情だと思います。何より仕事を楽しむ原動力にもなります!
もうひとつは、打席に立てる機会がどれだけあるか、もしくはつくれるか。
知名度のある会社であっても自分が裁量を持てる範囲が小さいと成長実感も薄まってしまいます。あまり知られていない会社だとしても、どんどん自分がバットを振って打席に立つ機会が多ければ、PRとして失敗も成功も含めて充実した経験が積めるに違いありません。
私にとって、新卒から10年勤めたサイバーエージェントを飛び出して、ヘラルボニーへ転職したことは相当な覚悟でした。当時、友人に気になっている会社があると相談をしてみてもほとんどが「ヘラルボニーってどんな会社?」と聞いたことがないという反応だったのです。
それでも、自分の直感と何がなんでもやってみたいという気持ち、PRに強みを持つアイディアマンの代表と共に熱狂できる環境に飛び込んだこと、あの時の決断は正解だったと思いますし、これからも正解と言い続けられるよう努力を続けていきたいです。
Q4:国内において広報としてのキャリア形成で悩みとなることは何?
キャリアアップの選択肢の少なさ、でしょうか。
規模の大きな会社であれば、マネージャーや部長職などのネクストステップを目指すこともできるかと思いますが、特にスタートアップのような中小規模の会社だと上場後にも広報が1名というケースも珍しくありません。プロフェッショナルを極める道ももちろんですが、そもそも他職種と比べると広報職はマネジメントに移行する機会自体が圧倒的に少ないように感じます。
広報担当者の育成、チーム全体のマネジメントは自分自身を大きく成長させるチャンスです。PR戦略の上流にさらに時間を充てることもできるようになります。
こうした要因の一つには、「広報=メディア対応をする窓口」という狭いイメージが定着していることが挙げられるのではないかと思っています。
広報は、すべてのステークホルダーとの関係を良好に保つ役割。メディアを通じて存在を知ってもらうだけではなく、社員やその家族、パートナー企業、採用候補者、地域の住民の方々、株主、時には自治体や国など、多くの人と人との橋渡しをする仕事です。こうして生まれたご縁や関係性が経営・事業に生み出すシナジーは計り知れません。
定性的でなかなか目に見えない成果かもしれませんが、広報の仕事や成果がもっと多くの経営者や事業責任者に伝われば、広報をコストセンターではなく、利益をもたらす部門として、人員を増やしたり任せられる範囲もさらに広がったりしていくのではないでしょうか。
逆に、広報担当者も自分自身の意識を「組織のサポーター」ではなく、積極的に事業を作っていく役割として視点を広げること、ブランディングやマーケティングといった分野の知見を深めることもキャリアアップのために大切だと思っています(自戒を込めて)。
昨今のスタートアップ企業では、広報PRが重要という認識が高まりつつありとても喜ばしいことだなあと感じます。さらに、広報PRの仕事の面白さや重要性が広まっていくことを期待していますし、私自身も広報PRの価値を広めていく一助ができたらと思っています。
Q5:広報職の経験を活かして、今後チャレンジしたいことは?
まだまだ、今の会社でやりたいことがたくさんあります。広報室の組織も7名と拡大してきましたし、マネジメントもよりスキルアップしなくてはと感じているところです。さらに、経営により近いポジションで経営・組織・事業をよりパワーアップするための挑戦もしていきたいです。
また、個人的には、ブランディング・コミュニケーションの領域をもっともっと、学んでいきたいと思っています。
広報PRの経験があると、どんなプロジェクトも情報の伝わり方から逆算した企画を考えることができます。「コト」のはじまりからデザインしていくことで、これまでにないインパクトを社会に与えることだってできるのだと、これまでの経験から学びました。
印象に残っている仕事のひとつが、2023年に発信した「鳥肌が立つ、確定申告がある。」というソーシャルアクションでした。ACCのPR部門にてグランプリをいただくという光栄な機会に恵まれたのですが、これはヘラルボニーの契約アーティストの家族から届いたメッセージを元にしたOOH広告を掲載するというPRプロジェクトでした。限られた予算・時間のなかでもインパクトのあるファクトとストーリー、そして素晴らしいクリエイティブの力があれば社会に対して大きな反響を生み出せることを実感する貴重な経験となりました。
このように多才なクリエイターの方と共に、クリエイティブとアイディアの力で、世の中を動かそうとする試み自体もとても面白く、もっともっと挑戦していきたいと思っています。
こうして自ら書いていても、やりたいことで溢れていて1日が24時間では足りない!と思わされます(笑)。
今後も、周りの環境に感謝の気持ちを忘れずに、広報・PRの仕事を軸に楽しんでいけたらと思っています。
【次回のコラムの担当は?】
次回は、広報としても働く母親としても尊敬するnote広報の森本愛さんをご紹介します。森本さんは豊富な広報経験をもとに、note株式会社にてPR部門の立ち上げをご担当。さらにIPO前後のコミュニケーション戦略まで責任者として推進してこられたスペシャリストです。お話、とても楽しみにしています!
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