『スラムダンク』『進撃の巨人』人気の裏で実感する、世界の中の日本のリアル

秋も深まってきて、2024年も終わりが近づいていますね。歴史的な円安に、世界の中での日本の立ち位置というものを考えざるを得ない2024年。私がポートランドで見ている、世界の中の日本を紹介しながら、2024年の日本は今どういう立ち位置なのかを考えたいと思います。

日本が圧倒的な存在感を発揮しているジャンル

写真 表紙 スラムダンク

我が家も日本から『スラムダンク』の単行本は持ってきています。

私がポートランドで通っているコミュニティカレッジは四半期に一度クラスが変わります。変わるたびに、日本から来たということがわかると、ちょっといい?と漫画の話をされたことが何度あったか。

「漫画」と「アニメ」においては、日本が圧倒的な存在感を発揮していると実感しています。エピソードをいくつから羅列します。

・エヴァンゲリオンのTシャツを着ているクラスメイトがいた。翌日は、ONE PIECEだった。

・「中学の時に『コナン』が大好きだったの!」と後ろの席の、ベトナムから渡米してきたクラスメイトが話していた。

・別のクラスメイト(ベトナム出身)から「このアニメのセリフは日本語だと思うんだけど、聞き取れないから、何と言ってるか教えてほしい」と相談された(作品は『BORUTO』でした)。

・丸刈りの赤い髪の高校生ぐらいの子が、近くの公園でバスケットボールをしていた(スラムダンクの桜木花道風ですね!)。

Netflixで『ワンピース』が実写化されたので、『ワンピース』を知る人も増えましたし、今、NYでは『進撃の巨人』の舞台が人気だとか。

アニメといえば、今年の夏、コロンビアから来たサッカーコーチが、我が家に1週間ホームステイをしていました。我が家にある漫画を見て「これ知ってるよ!コロンビアでは『Super Champion』と言って人気だよ」と教えてくれました(キャプテン翼のことです)。さらには、「妹が日本のアニメが好きなんだ」と言って、ビデオコールで繋いでくれて、お話しをしました。

「何が好きなの?」と聞いたら少女漫画の『君に届け』。まさかコロンビアの女子高校生と『君に届け』談義ができるとは思ってはいませんでした。

漫画の世界から、まちに出て感じる、日本のリアル

写真

一方で先日、ベトナム人のクラスメイトと雑談していると、「アメリカに住むベトナム系アメリカ人が200万人を超えた」という話が出てきました。

それは、とても多いのではないか?と思った私は「米国にいる日本人って何人だっけ?」と思い調べたところ、日系アメリカ人は120万人、現在日本国籍を持ちながら滞在している人は41万人でした(外務省領事局政策課 2023年10月発表資料より)。

そもそも、海外に在住する日本人は今何人ぐらいいると思いますか?

答えは、2024年時点で約129万(同外務省資料より)。

アメリカにいるベトナム系アメリカ人より少ない!そもそもベトナムの人口は1億人とのことなので、まあ母数はそんなに変わりません。世界に出ている人が、もしかして、世界的には少ない?日本国内に留まっている割合が他国より多いのでしょう。

40年間、日本で生きてきた私個人の世界の中心は日本で、「言っても日本は先進国であり、G7の加盟国なので、ある程度、欧米においても世界の中心に近いところに日本はいて、認知されているに違いない」と思って暮らしていたわけです。ところが、世界はもっと繋がり、国境を飛び越えているようです。

韓国語はあっても、日本語訳はないという現実。

アメリカに来て、私がいちばん最初によくアクセスしたサイトは、ポートランド市と、ポートランドの教育委員会のサイトです。

当時は、スペイン語、中国語、そしてベトナム語、韓国語の翻訳は用意されていても日本語はないという状況でした。

昨今では、Google Translateなど便利な神のようなツールが溢れていますし、サイト自体にGoogle Translate翻訳を実装していたりもするので支障はまったくありませんが、予算をかけて実装するものを順に選んでいく過程で日本語は外れたのだなと考えられるこの事実から、マイノリティであることを実感します。

韓国といえば、アメリカに来て、韓国のメーカーであるKia(起亜)やHyundai(ヒョンデ)の多いこと!いまだに日本車は4割を占めるそうですが、韓国車も1割を超えているとのこと。

洗濯機や乾燥機だってSamsungが溢れています。我が家も3回引っ越しましたが、すべてSamsungです(アメリカは家電を持って引っ越しません、借りるとたいてい、家についています)。

二重国籍が認められない国は多くはない

写真

先日、アメリカに来て何年?と、クラスメイトに尋ねられました。「もうすぐ5年」というと、周りの人がこぞって「やったね!市民権取れるね!」と言うのです。「私は取らない予定なんだけど」というと「なぜ?なぜ?」と訝しがられました。

日本は二重国籍が基本的には認められていないことを伝えたところ、一様に「それは残念だね」という反応が返ってきました。

聞けば、ベトナムも、チュニジアも、多くの国が二重国籍を認められているから、迷わず取得するよ!というのが彼らの見解でした。住んでる国の選挙にも参加したいし、当然よ!と。

逆の受け入れ側の視点にも触れておきたいと思いますが、アメリカ大統領選でも「移民施策」は論点のひとつです。日本においても、移民、難民は昨今論点になっていますが、他の先進国に比べて、圧倒的に受け入れが少ないという事実があります。出る人も少なければ、(インバウンド観光を除き)入ってくる人も少ない、これが今の日本の現状なんですね。

カルチャーは強し、経済は……?

冒頭で紹介した通り、漫画やアニメ、ゲームは間違いなく、世界で愛される日本の魅力のひとつになっています。

ポートランドの友人(現地在住の日本人の女性起業家)がポートランドに日本の雑貨を扱うショップをオープンしましたが、「お茶」がとても人気だとのこと。

写真 店舗・商業施設

店舗には小山園のお茶が入荷している。お客さまは日本人ではなく、現地のアメリカ人と観光に来た人たち。

写真 店舗・商業施設

茶器も売れているとか。茶葉だけではなく、お茶を点てていただくという文化ごと輸出されているのがわかる。

ちなみに、ポートランドがあるオレゴン州を含む、パシフィック・ノースウェストと呼ばれる、バンクーバーやシアトルを含むエリアではSUBARU車がとても人気です。日本にいた時、これほどの確率でSUBARUに出会っただろうか?と思うぐらいの頻度で、アウトバックとフォレスターに出会います。

雪が降り、冬の雪山にアウトドアに出かける人からSUBARUはとても愛されています。カルチャーフィットを目指したPRとブランドづくりが、その土地にはまった好事例と言えるでしょう。

お茶にしても、SUBARU車にしても、戦略的にその地域の慣習や趣向と合致させたことで、「売れる」という経済性が生み出されています。

昨年からインバウンド需要も回復し、日本にはたくさんの海外観光客がやってきています。きっと、日本のいいところ、素敵なところを見つけて帰ってくれているはずです。日本のリアルを受け止めつつ、伝えたい先の国のカルチャーや趣向、社会情勢に目を向けながら日本の魅力、素敵なところを伝えていきたいものです。

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松原佳代(広報コンサルタント/みずたまラボラトリー 代表)
松原佳代(広報コンサルタント/みずたまラボラトリー 代表)

スタートアップの広報育成・支援を手がける「みずたまラボラトリー」代表。お茶の水女子大学卒業後、コンサルティング会社、出版社を経て、2005年に面白法人カヤックに入社。広報部長、事業部長を兼任したのち子会社カヤックLivingの代表取締役に就任。移住事業の立ち上げに参画。2019年、家族で米国ポートランドに移住。一方、2015年に自身の会社「みずたまラボラトリー」を設立し、広報戦略、事業開発、経営全般にわたる経験と実績を活かしスタートアップの広報育成と支援を展開。富山県出身。富山県の経営戦略会議ウェルビーイング戦略プロジェクトチーム委員も務める。

松原佳代(広報コンサルタント/みずたまラボラトリー 代表)

スタートアップの広報育成・支援を手がける「みずたまラボラトリー」代表。お茶の水女子大学卒業後、コンサルティング会社、出版社を経て、2005年に面白法人カヤックに入社。広報部長、事業部長を兼任したのち子会社カヤックLivingの代表取締役に就任。移住事業の立ち上げに参画。2019年、家族で米国ポートランドに移住。一方、2015年に自身の会社「みずたまラボラトリー」を設立し、広報戦略、事業開発、経営全般にわたる経験と実績を活かしスタートアップの広報育成と支援を展開。富山県出身。富山県の経営戦略会議ウェルビーイング戦略プロジェクトチーム委員も務める。

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