循環デザインを楽しもう、『富山ADC年鑑』が“ヤレ紙”を表紙や見返しに再利用

2024年10月5日、富山市市民プラザで『富山アートディレクターズクラブ2024』の授賞式が開催された。本授賞式は10月5日・6日に開催された「富山ADCエキシビジョン2024」に合わせて行われたもので、当日は4月の審査会で選ばれた計17個の賞の表彰が行われた。

その日、お披露目されたのが『富山ADC年鑑2024』と受賞者に贈られるトロフィー。ところが、それを手にしてよく見てみると、それぞれの年鑑の表紙のデザインや紙が違うことに気づく。さらに、トロフィーもさまざまな形で、しかもなぜか音符やバットやゴルフのパターを持った人が上に載っている。

写真 表紙 『富山ADC年鑑2024』

写真 表紙 『富山ADC年鑑2024』

写真 表紙 『富山ADC年鑑2024』

写真 表紙 『富山ADC年鑑2024』

写真 表紙 『富山ADC年鑑2024』

写真 表紙 『富山ADC年鑑2024』

写真 表紙 『富山ADC年鑑2024』

写真 表紙 『富山ADC年鑑2024』

写真 商品・製品 『富山アートディレクターズクラブ2024』トロフィー

実は本年度のアートディレクションのテーマは、「循環デザインの楽しみ方」。年鑑には、印刷用・テスト用の損紙通称“ヤレ紙”を表紙や見返しに再利用し、不要になった様々なトロフィーを特殊な砂でコーティングし、リデザインしている。

制作を手がけたのは、高岡市のデザイン・クリエイティブスタジオROLE。「この企画はROLEが2023年に高岡市と共同で行ったヤレ紙のリサイクルプロジェクト『あたらしい古紙再生』を発展させたもので、富山ADCというクリエイター組織だからこそできた社会活動です」と、アートディレクター 羽田純氏。

オフセット印刷時の印刷品質を安定させる際に必ず発生する“ヤレ紙”は、通常リサイクルやそのまま廃棄されるが、今回は印刷工業組合の協力のもと、18名の県内デザイナーと県内印刷所から”ヤレ紙”を集めて再利用している。集まった18種類のポスターヤレ紙に表紙用の加工を加え、約80種類の表紙がランダムにできあがった。

また、表紙印刷でも余った紙を少し残しておき、会場でキャプションとして活用した。

写真 商品・製品 会場で使用したキャプション

そして今回新たに挑んだのが、不要になったトロフィーの活用だ。様々な家庭に眠っている、何十年もあるけれど捨てるに捨てられないトロフィー。それらを集め、普段は鋳造製品の型を作るための技術を転用し、トロフィーの上から特殊な砂でコーティングした。制作に協力したのは、富山県高岡市の伝統産業工房である高和製作所。

「メタリックにギラギラと主張する昔ながらのトロフィーを、絶妙な色の砂でコーティングされることで、フォルムが少し曖昧になって新しい表情を見せてくれました。押し付けがましくなく、手や目に触れた時に楽しく新しい発見ができればという思いを込めながら制作しました」

目指したのは、「わかりやすい・つたわりやすい」アップサイクルをデザインし、環境行動と生活の距離感がより身近になること。

「このプロジェクトはリサイクルそのものを否定するものではなく、環境行動に対してこれまでとは違ったアプローチから関心を高めることに繋がればと考えています。再生紙による印刷物の隅に『この紙は〇〇%の再生紙を使用しています~』というメッセージよりも、もともと印刷されていたものの気配をあえて残すことで、資源の循環をより意識できるように工夫した実験的な試みです」

写真 表紙 『富山ADC年鑑2024』
写真 商品・製品 トロフィー

年鑑とトロフィーを受け取った、」本年度グランプリ受賞者・高森崇史氏は「かつて誰かの何かの功績を讃えるために作られたトロフィーに、全く別の価値をつけるという行為にこれからの未来を感じました」と話している。

また、今回の取り組みについて、次のようなコメントが寄せられている。

「IPT応援ポスター(「世界ポスタートリエンナーレトヤマ2024」、略称:IPT2024の事業一環として、TOYAMA ADCが「富山県美術館までの地図」というテーマで応援ポスターを制作)として制作させていただいたデザインがADC年鑑表紙の一部として彩り、またこの企画に携われたことを嬉しく思います」(観堂絵美氏)

「IPT応援ポスターを制作するときに、このポスターのヤレ紙が表紙に再利用することが決まっていたのでどこを切り取っても面白いものになったらいいなと密かに考えていました。年鑑が上がってくると自分のはもちろん、どのデザインも面白くなっていて新鮮でした」(山口久美子氏)

「ヤレ紙が図録表紙の紙としてアップサイクルされ、デザインしたポスターが全く新しいテキスタイルに生まれ変わり感動しました」(岡田真寿美氏)

「下地となるポスターが本来とは違う役割を果たしており、偶然性も相まって新しい見え方や価値を感じました」(金森健司氏)

完成した年鑑は、TOYAMA ADCオンラインショップ他、富山県内の取り扱い書店にて発売中だ。

スタッフリスト

AD 羽田純
撮影 田中祐樹
編集 山口久美子
印刷・製本 山田写真製版所
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