良いシリーズCMには、明確なブランドミッションと優れたスタッフがいる/ユニクロ

商品の良さ、どこまで描くべきか?

最後に、少し残念なのは、2本目の「ヒートテック LifeとWear/愛は熱」ですが、90秒だからか最後の方で、ヒートテックを着る・着ているカットがありました。しかし、短い秒数でもそのカットが挿入されたテレビCMを自宅で見てしまい、あっ全秒数タイプに挿入されていると認識しました。

商品を企画・開発した人は、ユニクロブランドの現在の認知度とお客様の商品の機能性・優位性の理解度・納得度の高さを十分に認識していると思います。でも、担当する本人としては商品の良さを“さらに”伝えたくなる。

私もメーカー卒だから分るがゆえに、辛いところです。

もしヒートテックの機能認知が下がっているのであれば、機能優先のCMをつくるだろうと思います。商品が社会・生活・人々の中で、どの様な意味合いで存在し、認識されているのか、広告主が理解しきれていない、しきれない典型的な事例かもしれません。すべての人と絡むヒートテックマークは、ちゃんと良い仕事をしていると思います。

とにかく、今回の3本は、CMの持つ基本的な印象がすべて「心地良い」のです。ユニクロの商品の持つ価値・機能を映像がそのまま描きだし感じさせてくれているからだと思いました。まさに制作者とのいい関係を感じる映像でもありました。

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名久井貴詞

なくい・たかのぶ/1958年青森県八戸市生まれ。武蔵野美術大学卒業後、1983年味の素入社。企業内クリエイターとして、パッケージデザインの開発やテレビCM・新聞・Webなどの広告全般の企画・制作に携わる。2017 年、クリエイティブ統括部⾧として味の素のグローバルコーポレートロゴデザインを制作し、世界一斉に改定を実施した。2021年に退社。現在はクリエイティブディレクターとして、また大学での講師活動も行っているほか、2023年から日本広告制作協会(OAC)理事長を務める。

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