“知の巨人“との対談でイメージ刷新 ヤマップのオウンドメディア

自前の情報発信拠点として多くの企業・団体が注目するオウンドメディア。戦略の立て方や効果測定の方法、制作のコツを探ります。
今回はYAMAP(ヤマップ)のオウンドメディア「YAMAP MAGAZINE」制作の裏側に迫りました。
※本記事は、広報会議2024年11月号(10月1日発売予定)の転載記事です。

オウンドメディア「YAMAP MAGAZINE」(YAMAP)のDATA

URL https://yamap.com/magazine/
開設 2019年11月
制作体制 編集補助2人に加え、ライター、カメラマンなど業務委託約10人~15人がレギュラー
コンセプト 「山と風土を愉しむ 地球とつながる」を媒体コンセプトとして、より文化的な側面から「人と地球とのより良い関係」と「次世代のアウトドア」を模索する
更新頻度 週2~3本
総記事数 約1000本
CMS WordPress
効果測定 月間ユーザー数(MAU)(YAMAPユーザー/ユーザー外)

登山アプリで知られるヤマップが運営するオウンドメディア「YAMAP MAGAZINE」。安全登山の推進と山の楽しみ方を伝える登山コミュニティメディアとして、2019年11月にスタートした。

写真 誌面 『広報会議』2024年11月号

「登山文化をつくる新メディア」を掲げ、登山を楽しみ、役立ち、学べる多くのコンテンツによって登山人口を増やすことを目指した。

「より多くの人に登山を楽しんでもらいたいというサービスの先には、日本の自然の豊かさや、農業や林業などの一次産業への関心や理解を深める、ひいては人が山に行く=山が豊かになる、景色や環境が良くなる循環をつくるといった目的があります」と語るのは同メディア編集長の石田礼氏。

さらに2022年8月、同社のパーパスを「地球とつながるよろこび。」に変更したことを契機に、メディアの方向性も進化。それまでは登山を中心に展開してきたが、視野をより拡大し、人と地球とのより良い関係を文化的な側面からも捉え、次世代のアウトドアを模索・発信している。

養老氏との対談記事で存在感

ヤマップの価値観を伝える象徴的な記事のひとつにもなったのが、2022年のリニューアル後の企画第一弾の、養老孟司氏と同社代表取締役CEO・春山慶彦氏の対談記事だ。公開以降、アプリユーザーから大学教授などの研究者まで、大きな反響があった。「記事により、当社のイメージが単なる『登山アプリの会社』から一歩出て、信頼感や存在価値の底上げにつながりました」と石田氏。

続けて、2023年には生命誌研究者の中村桂子氏、小説家の池澤夏樹氏との対談記事を発表。2024年2月には対談記事をまとめた書籍『こどもを野に放て!AI時代に活きる知性の育て方』が集英社から刊行され、重版を重ね発行部数1万部のヒットとなった(2024年8月末時点)。

共通認識が継続のカギ

同メディアを核に、各SNSの発信も積極的に行っている。書籍化のきっかけとなった知識人との対談はYouTubeでも配信し、30万回再生を超えるものも。しかし、同メディアが本当に目指しているのはそうした定量的な結果ではなく、社会へのインパクトをいかに出すかだ。

「数字だけを追うのではなく、2年後、3年後に何かが変わっているという、感覚的なものを信じて取り組んでいます」と石田氏。経営陣も共通の認識を持っているため、メディアの社内評価としてPV数などの数字は重要視されていないという。「この共通認識があるからこそ、メディアが続いていますし、代表の春山の対談シリーズも継続できているのだと思います」(石田氏)。

社員の企画からツアー完売も

メディアの軸として「信頼できる人に信頼できるコンテンツをつくってもらう」ことを掲げる同メディア。いわゆるコタツ記事はつくらず、実際に体験したことや監修のついた記事にこだわるが、同社の価値観に合致する取材対象者や監修者を探すのには苦労していないという。

「社員の多くが利他の精神が強い読書家なんです」と石田氏。現在、編集は2人体制だが、チーム内だけでなく広く意見を聞く。「ヤマップには『共有する』という文化が根付いていて、部門に関係なく企画を考えてくれたり、自分で書ける人は記名記事を書いてくれたりと、社員みんなでメディアをつくっています」(石田氏)。広報部の社員からの企画で、記事と登山ツアー商品を連携して制作し、商品が完売したこともあるそうだ。

SEO対策で潜在顧客に間口を

SEOもおろそかにせず、潜在顧客の多いオーガニック検索からの流入も確保。「同メディアは集客の基軸となる存在です。世界観を大切にしつつも、間口を狭めないことを意識しています」(石田氏)。

遭難情報など読者の安全にかかわる記事の中には、読了率が100%となるものも出てきた。「たくさんのメディアと、読者の可処分時間を奪い合う中で、今後は文章量にも気を付けていきたいです。充実した内容でありつつも、簡潔で読みやすい記事を目指していきます」(石田氏)。

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