昨今、縦型動画の中でもひときわ存在感を放つ「ショートドラマ」というジャンル。数多ある縦型動画プラットフォームの中で、見られる・シェアされるための秘訣とは?コミュニケーション設計に強みを持つFORYOUの筧将英さんと、縦型動画の演出に強みを持つこねこフィルムの三野龍一さん(演出家)、三野和比古さん(プロデューサー/脚本家)に話を聞いた。
※本記事は月刊『ブレーン』2024年11月号特集「映像とクリエイティブ 視聴デバイスの多様化で変わる表現」への掲載内容から抜粋してお届けします。
ポイントは「共感」と「意外性」
筧:こねこフィルムさんの縦型ショートドラマですごいのは、会話劇の面白さや映像のクオリティを突き詰めつつも、多くのシェアやコメントなど数字的な成果も出ているところ。開始数秒のインパクトで引きをつくるような短尺動画の常套手段とはまた別の路線を確立されていますよね。たとえば「年齢確認シリーズ」は累計2億回以上再生されていますが、両立のポイントは何でしょうか?
こねこフィルムが制作し、TikTokなどで公開した縦型ショートドラマ「年齢確認シリーズ」は、累計2億回以上再生。コンビニのレジのシーンを舞台に、年齢確認をしたい店員と、年齢確認をされることに嫌悪感を抱く女性客との会話劇などを描いた。店員の機転を利かせた一言に、女性客の態度が徐々に変化していく。
三野和:このシリーズでいうと、最初は日本人に好まれがちな恋愛を題材にすることで、とにかく数字を取ろうと思ったんです。でも若い俳優が普通に演じても埋もれてしまうので、企画や演出に何か意外性が必要だろう、と。どこにそのポイントをつくれるだろうと考えた時に、日本の偏りのある“多様性”に目を付けました。日本では「おばさんなのに」などと、年齢に応じた偏見がありますよね。それを逆手に取って、多くの人が想像しやすい「年齢確認」というシーンに当てはめて、そこから始まる恋愛ストーリーをつくろうと思いつきました。
筧:ポイントは「共感」と「意外性」ということですね。自分も含め広告業界出身のプランナーの発想だと15秒、30秒、6秒といった尺から企画を逆算していくことが多いのですが、尺によって企画の考え方は変わりますか?
三野龍:いえ、僕たちは映画にルーツを持つこともあり、縦型動画をつくる際も綿密につくりこんだ脚本は用意せずに、簡単なものを現場で役者に覚えてもらって、実際の会話やテンポ、温度感なども、全て現場でつくっていくスタイルなんです。その場で自分の目で見て感じる空気を大切にしていますね。
三野和:企画の段階では、シーンを先に決めておいて、自分たちが普段思っていることや、これが本能的に気になるという「企画の種」みたいなものを挙げて、大まかな会話をつくっています。かなり体育会系のつくり方かもしれません(笑)。
筧:起点となるシーンが、先ほどのコンビニの年齢確認や、満員電車など、誰にとっても身近なところも特徴ですよね。
三野龍:そうですね。縦型動画は特に、視聴者に共感されることが重要なので、シーン設定はとても大切です。コンビニや電車というのは誰しもが使うので、共感してもらいやすくて。
三野和:それをより抽象化すると、「人と人が接する公的な場」という感じでしょうか。すると、自然と緊張感が生まれて、人の関心を引くんですよ。“エレベーターに偶然居合わせたふたり”とかすごく引きがあると思います。
筧:「何か言われたらドキッとするな」というシーンが見ている人に緊張感を生み、動画の長時間の視聴に繋がっていくということですね。
広告的な訴求もエンタメに
筧:私が縦型ショートドラマに関わる上で意識していることは、見た後の感情である「読後感」とそれを表現する「言葉」です。特に広告動画の場合は、どのような読後感を与えればよいのか、どんな言葉で人にシェアしたくなるのか、どんなコメントを付けたくなるのかを決めましょう、とクライアントに話します。たとえば、感動なのか、恐怖なのかといったことですが、それをクライアントと定めておくと、商品とマッチしつつエンタメ性も高くなる企画を自由に模索しやすい。
三野さんたちもショートドラマでタイアップをされていますが、どういう接点だとブランドや商品に落とし込みやすい、といった傾向などはありますか?
・・・以降は月刊ブレーン24年11月号本誌、もしくはデジタル版記事(ご購読が必要です)でご覧ください。
〈以降の主なトピックス〉
- クライアントからの希望は「あえてわざとらしく」
- “世界観づくり”ファースト
- 将来的にはショートドラマを主軸にした大規模な広告キャンペーンも
映像とクリエイティブ
視聴デバイスの多様化で変わる表現
- 拡大する市場と多様化するプラットフォーム 動画広告の打ち手と表現
髙橋律仁(TBWA HAKUHODO) - 増えるアニメーション広告 テレビCMとSNSに適した表現は?
花田礼(電通) - 横型・縦型共に面白路線で人気 「銀のさら」CM 企画の裏側
ライドオンエクスプレス「銀のさら」 - リアリティと落差で引き付ける 6秒バンパー広告
P&Gジャパン/ファブリーズ「君に、鼻ツン。」 - 共感と意外性を生み出す 縦型ショートドラマのつくり方
筧将英(FOR YOU)、三野龍一・三野和比古(こねこフィルム) - 気鋭のCMプランナーに聞く
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