「社外向け広報誌の創刊やリニューアルのご相談を受ける際は、中心となる対象読者は誰か、広報目的は営業支援にあるのか、採用対策か、企業イメージ向上かなどをうかがいながら力点の置き方を決めていきます。目的に合ったコンテンツやバランス配分をご提案しています」。こう話すのは、企業広報を専業とするオン・ザ・デスク・インターナショナル代表の堀之内博昭氏だ。
広報をクリエイティブに
1999年に創業した当初は、ウェブ媒体の企業広報物の制作が中心だったが、クライアントからの要望にこたえる形で紙媒体の制作を増やし、現在は迫力あるビジュアルや、ストーリー性のある特集構成で魅せる広報誌の企画・制作が同社の強みとなっている。大阪本社と東京オフィスの2拠点を構え、スタッフは少数精鋭の8名。クリエイティブディレクターや編集・ライター、グラフィックデザイナー、カメラマン、ウェブディレクター、ウェブデザイナーらが集い、英語原稿のチェックも社内で行っている。
コピーライター出身の堀之内代表が大切にする考え方が「広報クリエイティブ」だ。広報は誇張してはならないが、生のまま情報を流しても心に響かない。いかに魅力的に広報コンテンツを受け入れてもらうか、本当に伝えたい企業のマインドが自然と見えてくるものになっているかが鍵となる。
目を奪う表紙
では、企業広報誌づくりにおいて「広報クリエイティブ」の力を高めるにはどんな要素が必要なのか。
まずは媒体の顔となる表紙だ。目を奪うメインビジュアルとコピーのコンビネーションで「秒で読者の関心を引けるか。ここで勝負は決まる」と堀之内氏。特にBtoB企業の場合「ビジュアル映えするものがない」と担当者が思い込んでいることもあるが、製品や施設などを撮影し、迫力ある表紙に仕立てるのはオン・ザ・デスク・インターナショナルの得意分野だ。
三菱重工マリンマシナリのグローバル広報誌「PROJECT MEET NEWS」。日本語、英語、中国語で発行。広報誌の顔となる表紙ビジュアルは、同社主力製品「MET過給機」の光り輝く主軸フィンをアップで。写真のメタリックシルバーを黒地に白抜きのデザインで引き締めスタイリッシュに。
テーマ構築力
広報誌の成否を左右する要素となるのが「テーマとして掲げる言葉の適切さ、強さ」。事の本質を突き、想像力を喚起しつつ、広報として伝えたい内容に導いていく。そんな推進力のあるテーマ設定が、広報誌の屋台骨となる。
オン・ザ・デスク・インターナショナルでは、広報誌の編集コンセプトとして提案した言葉が、企業のタグラインとして統合報告書等で継続して使用されているケースや、社員インタビューを重ねて開発したフレーズを軸に、新聞広告、ウェブサイト、映像など多面的な広報キャンペーンを展開したケースもある。
インタビューで深掘り
企業CEOや著名人、一般顧客など、広報分野におけるインタビューには、明確な狙いがある。「それを予定調和で終わらせるか、それとも発見と刺激、教訓と笑い、共感と希望に富んだ、生きた言葉を紡ぎ出せるかは、インタビュアーの論点提示力にかかっている」と堀之内氏は指摘する。
特にBtoB広報では、専門的な分野を扱うことが少なくない。オン・ザ・デスク・インターナショナルで取材、ライティングを担う井本旬子氏は「専門的なテーマでも具体的にどのような取り組みをしたかに迫ることで、かみ砕いて伝えることができます。インタビュー慣れしていない方に対しては、漠然とした質問はせずに答えが返ってきやすい問いから始めていきます」と明かす。同社が広報誌で取材する領域は、精密機械、建材、ICTなどかなり広範囲に及ぶが、対象を「面白がり、愛でる」ことが、深い取材につながっている。
共英製鋼の企業記念誌「VENTURE UPON THE MEKONG~メコンを興せ!~」。合弁子会社の工場竣工を記念し制作。ベトナムへ取材隊が飛び、社員インタビューを実施。巻頭言をメコン川の写真と共に折り込みページに記載しインパクト抜群。
スタイリッシュなデザイン
広報誌の完成度を高めるのに欠かせないのがデザイン。一貫性があり、そぎ落とされたデザインが、スタイリッシュさを生み出し、企業の好イメージを醸成するものとなる。「広報誌は、単なる読み物ではなく読者を説得していくもの。通しで読み進めた時に、広報したい内容について納得感を得られるようにする必要があります」と堀之内氏。
現在オン・ザ・デスク・インターナショナルでは、紙媒体同様に高いデザイン性を保ったウェブコンテンツづくりにも挑んでいる。ウェブデザイナーの森岡大二氏は「ウェブならではの読みやすさ、アクセシビリティを意識したオウンドメディアの企画に可能性を感じています」と意気込む。
同社では、広報クリエイティブの知見を活かし、統合報告書の制作や海外企業の日本での広報展開の支援にも注力していきたい考えだ。
代表取締役 堀之内 博昭氏(写真中央)、ライター 井本旬子氏(同左)、ウェブデザイナー森岡大二氏(同右)。
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