いろんな想いをとらえて一つの言葉に凝縮していく
小藥氏は「BLUE VOICE」を含めて、3案のチーム名を提案。グラフィックデザイナー 佐々木俊氏がそれをロゴへとデザインした。
「いろいろな案があった上で、選ばれたネーミングとロゴは、一過性のインパクトというより、むしろずっと前からこのロゴを使っていたと錯覚をしちゃうくらい馴染みのよいロゴなのかなと思います。そこがいいところだと思います。どこをとっても角のないような柔らかく優しいロゴになるよう心がけました」と、佐々木氏。
通常であれば横浜市教育委員会が内部で決めるところだが、今回は子どもたちに3案を見せて投票をしてもらい、決定するというプロセスを選んだ。そして、今年7月に開催された「よこはま子ども国際平和スピーチコンテスト」本選の場で、そのチーム名とロゴはお披露目されたのである。
「私としては別案のほうが、チーム名としてど真ん中かなと思っていたのですが、今振り返ってみると、その言葉は子どもたちにとっては大きすぎる言葉であまり伝わらなかった。それよりもBLUE VOICEが、彼らにとって等身大の言葉でフィットしたようです」(小藥氏)
実は横浜市でも小藥氏が「ど真ん中」と思っていた案になることを想定していたが、ふたを開けてみたら「BLUE VOICE」に票が一番集まり驚いたという。
「自分の声が世界に届く気がする」「青は空の感じがして、見上げれば一緒という感じがする」「私たちの声を届けるだけでなく、“地球からのSOS をきく”という意味もあると感じたから」「ブルーが横浜の雰囲気似合っている」など、子どもたちが「BLUE VOICE」を選んだ理由はさまざまだ。
「子どもたちにとってみれば、自分たちで選んだチーム名。それだけでも愛着がわきますし、大人が選ぶより結果としてよかったのではないかと思います」と、横浜市教育委員会小中学校企画課 国際担当係長 名矢明日香氏。
また、各学校で子どもたちに投票をしてもらうというアクションを通じて、これまで温度感の低かった学校にもあらためて活動を伝えることができたり、コンテストだけではないさまざまな活動があることへの気づきにもつながったという。
兵頭氏はコンテスト終了後のできごとを、次のように振り返る。
「子どもたちに今後の活動などを説明した際に、これまでは一人一人ががんばってきたけれど、これからはチームBLUE VOICEとしての第一歩が始まるよ、新しいステージだよと少し大げさに話したのですが、みんなその気になってくれて。その後のメッセージづくりでも、『BLUE VOICEとして』という意見が出てくるようになったり、仲間意識が芽生えているのを感じました」
小藥氏は今回チーム名だけではなく、「どうしても今、セカイへ伝えたい」というコピーも書いた。このコピーは、ロゴの上に載っている。
「授業で『これについて考えなさい』というベクトルではなく、自分たちの中から湧き上がってくるものを、自分たちで発信するという逆のベクトルにすることを大事にしました。与えられたテーマにとどまらず、自らポジティブに見つけて発信していく。若いエネルギーがあふれ出ていくようなコピーになったのではないかと思います」
「どうしても今、セカイへ伝えたい」というショルダーコピー、実は別の案についていたものだが、横浜市教育委員会の皆さんが「BLUE VOICE」の上に持ってきたことで、小藥氏の想像を超えた言葉の掛け算が生まれたという。
名矢氏は今回の取り組みを振り返り、あらためて言葉の力を感じたという。
「行政というところは本当にたくさんの言葉を扱うのですが、今回小藥さんと一緒にチーム名を考え、いろんな想いをとらえて言葉に凝縮していく過程を見て、私たちと言葉の使い方が全く違うことを実感しました」
また、兵頭氏は「横浜市としては、このプログラムを粛々と進めてきたのですが、チーム名とロゴの効果で多くの人に知ってもらうようになればなるほど、こんなにすごいプログラムだったのかとあらためて価値づけていただいたと思います。参加した子どもたちにはさらにがんばっていこうという気持ちが生まれていますし、学校も次回は力を入れてみようと考えてくれていると思うので、来年への期待が大きくなりました」と話す。
現在、横浜市教育委員会では、夏に開催された「よこはま子ども国際平和スピーチコンテスト」の動画などを公開する一方、「BLUE VOICE」のロゴを活用したグッズの制作を進めている。完成後、今年のコンテスト参加者への配布を予定している。
佐々木俊氏デザインによるBLUE VOICEのTシャツ