文化的な違いを誤解すると小さな危機が生じ、信頼や評判を損なう可能性があります。例えば、ある地域では受け入れられるジェスチャーやフレーズでも、別の地域では不適切であったり、攻撃的であったりすることがあります。そのため、文化的知性は有益であるだけでなく、必須なのです。
裏を返せば、この複雑な状況は計り知れないチャンスをもたらしています。これを読み解き、使いこなすことができるブランドは、オーディエンスとの有意義で長続きするエンゲージメントを築くことができるのです。莫大な投資をすることなく、文化に適応し、対応するだけで、強固な評判を育むことができる。このような状況をうまく乗り切ることで、ブランドは混雑した市場で際立った存在となることができます。
ジャイプールの街並み(筆者撮影)
インドのPR市場の将来像とは?
理想的な未来では、インドはそのスマートで徹底したPRキャンペーンを通じて、有意義で長期的な評判を築き、世界で台頭する可能性がある。そのようなシナリオでは、ブランドやPRのプロフェッショナルが、この国のユニークな特性を活かして、オーディエンスとの信頼できるつながりを生み出すことになるはずです。多様性を受け入れ、テクノロジーを活用し、文化的な関連性にコミットすることで、インドの卓越したPR業界は、自らを世界基準として設定することができるでしょう。
逆に好ましくない未来では、インドのPR市場は欧米市場の単なる模倣となり、そのユニークな本質をないがしろにされることになるでしょう。この場合、地域のニュアンスを考慮しない戦略を採用することになり、それはオーディエンスとの不協和音を招くことになる。そのようなアプローチは、機会を逃し、文化的アイデンティティを希薄化させ、結果的に業界の成長と効果を妨げることになりかねません。
インド最大の階段井戸、チャンド・バオリ(筆者撮影)
日本のPR市場に何を期待しますか?
日本のPR市場は、その世界最高水準の効率性と卓越した倫理性から、しばしば称賛の念をもって評価されている。日本社会は、歴史的・文化的ルーツを認識することに高い価値を置いており、それはコミュニケーション戦略にも反映されています。細部にまで細心の注意を払い、誠実に広報活動に取り組む姿勢が浸透しています。
インドは長期的なレピュテーション構築を目指す中で、日本の手法から貴重な洞察を得ることができると思います。倫理的な行動の重視、伝統の尊重、メッセージの正確さなどは、インドの広報担当者が学び、自国の実務を強化するために戦略を適応させることができる分野です。日本がPR活動においてどのように現代性と伝統のバランスをとっているかを観察することで、インドは独自の道を切り開くためのインスピレーションを得ることができると考えています。
IPRN前夜祭で民族音楽を奏でるバンドを撮影する筆者、それを撮影するインド人カメラマン(IPRN提供)
インドの多様性と画一性、そして二面性
いかがでしたでしょうか?インドでは、言語や文化、人間の多様性を、英語やデジタル技術でひとつに束ねているような印象があります。この構図は、多かれ少なかれ、世界の多くの地域で見られ、また、進行している気もします。多様性と画一性。インドはその顕著かつ、最先端のケースなのかもしれません。学ぶところは多いです。
また二面性を例外ではなく、むしろ通常のものとして捉えるというのは、ガンジス川に貫かれて生と死が矛盾なく共存するあの景色を思い浮かべます――。
さて第3回目からは、PRAXIS 2024とIPRN AGM 2024で発表されたものを中心に、世界から選りすぐりの広報・PRの好事例(グッドプラクティス)を紹介していきます。ぜひ引き続き、ご期待ください。
ガンジス河のほとりにある火葬場(筆者撮影)
(了)