2024年度グッドデザイン賞(主催:日本デザイン振興会)は11月5日、最高賞となるグッドデザイン大賞にはジャクエツ(福井・敦賀市)による、障害の有無を問わず子どもたちが楽しめる遊具を開発する「RESILIENCE PLAYGROUND プロジェクト」を選出したと発表した。
大賞を受賞した「RESILIENCE PLAYGROUND プロジェクト」。左から「YURAGI」、「KOMORI」、「UKABI」が並ぶ。
プロジェクトは幼児教育用品の製造・販売を手掛けるジャクエツが約4年前から始めた。「障害の有無にかかわらず誰もが遊ぶことができる遊具」の開発を目指し、医療と遊具の分野を越えて実現させたものだ。たんの吸引や人工呼吸器などが日常的に必要な「医療的ケア児」と呼ばれる子どもたちの「遊びたくても遊べない」という課題に注目した。
医療的ケア児は全国に約2万人いるとされ、その中でも外出や旅行ができている家族は極めて少数とされている。実際に「3歳の子どもなのに友だちと一度も遊んだことがない」「遊ぶ機会が無く笑顔が少ない、ケアする人につくり笑顔をする」など、遊びから遠いことをきっかけに子どものつながりや感情の豊かさが乏しくなってしまうといった声もあった。
遊具を手がけたのは、ジャクエツで遊具デザイナーを務めている田嶋宏行氏。田嶋氏を中心に子どもたちや医師、ケアスタッフ、遊具デザイナー、地域住民などが携わり遊具開発に取り組んだ。
制作された遊具は、身体の安定が難しい子どもも揺れる体験を楽しめる“こもり形”のブランコ「KOMORI」、またがらなくても乗れる浮き輪型のスプリング遊具「UKABI」、さまざまな子どもが一緒に遊べるトランポリン遊具「YURAGI」の3つだ。
(左から)倉本仁審査副委員長、永山祐子審査副委員長、大賞を受賞したジャクエツの田嶋宏行氏、齋藤精一審査委員長。
11月5日の受賞祝賀会で登壇した田嶋氏は「コロナ禍という難しい時代に始まったプロジェクトでしたが、毎日実際に遊びながら突き詰めていきました。小さなプロジェクトがこんなに大きな賞となり、うれしく感じています。ありがとうございます」と述べた。
齋藤精一審査委員長は、「大賞の作品は、私たちが繰り返し伝えてきた『モノのデザインとコトのデザインの境界線をなくす』という考えと、本年度のテーマである『勇気と有機のあるデザイン』を体現しています。ケアが必要な子もそうでない子も分け隔てなく遊べる取り組みは、まさにいまの時代に必要な発想。取り組みとモノのデザインが融合したから実現できたものです。今後も、皆さんにはデザインの力を信じて大きなものにしていただきたい」などと評価した。
また、今回新設された「みんなの選んだグッドデザイン」には、多世代共生の複合型福祉施設 「深川えんみち」(東京・江東)が選ばれた。受賞者は社会福祉法人聖救主福祉会、NPO法人地域で育つ元気な子、JAMZA。
「みんなの選んだグッドデザイン」は金賞20件の中から11月1日から5日にかけて開催されたグッドデザイン賞受賞展、11月5日の受賞祝賀会に参加した来場者による投票で、最多得票の作品を発表したもの。
多世代共生の複合型福祉施設 「深川えんみち」。旧斎場を改修した複合型福祉施設で、高齢者と小学生、未就園児と親、地域の人々が集い交流する仕掛けが施されている。